重量23,000トン、「West White Rose」トップサイド設置
2025年7月18日、Allseasはカナダのニューファンドランド・ラブラドール州沖で建設が進められているWest White Rose developmentにおいて、重量23,000トンの「West White Rose」トップサイド設置が完了したことを発表しました。
Allseasの「Pioneering Spirit」によりトップサイド設置がおこなわれたのは、7月16日。「Pioneering Spirit」にとって、コンクリート重力式構造物(concrete gravity structure)への初のトップサイド設置であるとともに、北欧以外では初めての大型重量物揚重作業だったという。
「Pioneering Spirit」には容量20,000トンのジャケットリフトシステム(JLS)、容量48,000トンのトップサイドリフトシステム(TLS)、5,000トン吊りの旋回クレーンが搭載されており、「West White Rose」トップサイド設置では、容量48,000トンのTLSを使用。
23,000トンという想像を絶する巨大なトップサイド設置作業をおこなった「Pioneering Spirit」の高い施工能力についてはこれまでにも紹介していますが、いつもスケールの大きさに驚かされます。そして、今回の発表情報を見た時に気になった点がもう1つ、トップサイドを支える基礎のコンクリート重力式構造物について。どのように建造され、沖合の設置海域に据え付けられたのか、気になったので記事後半で紹介しています。
- 旋回クレーン 5,000トン
- ジャケットリフトシステム(JLS) 20,000トン
- トップサイドリフトシステム(TLS) 48,000トン → 60,000トンへアップグレード予定
半潜水式運搬船「新耀華」によるトップサイド運搬
出典:COSCO SHIPPING Heavy Transport
トップサイドはメキシコ湾に面したアメリカのテキサス州イングルサイド(Ingleside)で建造後、半潜水式運搬船「新耀華」(Xin Yao Hua)に搭載してカナダのブル・アーム(Bull Arm)へ運搬。
そして、ブル・アームで半潜水式運搬船「新耀華」から「Pioneering Spirit」へトップサイドの受け渡しがおこなわれました。
半潜水式重量物運搬船「新耀華」(XIN YAO HUA)の概要
| 船名 | 新耀華 |
| 総トン数 | 72,275トン |
| 載貨重量トン | 81,798トン |
| 長さ | 255m |
| 幅 | 57m |
| 深さ | 14.5m |
| 最大甲板深度 | 16.0m |
| 甲板スペース | 211.2m×57m |
| DPS | DP-2 |
| 建造年 | 2022年1月 |
出典:COSCO SHIPPING Heavy Transport
【動画】「Pioneering Spirit」によるトップサイド設置
「Pioneering Spirit」の概要
| 船名 | Pioneering Spirit |
| 総トン数 | 403,342トン |
| 長さ | 382m |
| 幅 | 124m |
| スロット | 長さ:122m 幅:59m |
| 速力 | 14ノット |
| 宿泊設備 | 571人 |
| トップサイドリフト容量 | 48,000トン |
| ジャケットリフト容量 | 20,000トン |
| 搭載クレーン | 5,000トン |
| 船籍 | マルタ |
| 建造年 | 2014年 |
気になる重量21万トンのコンクリート製重力式基礎
重量23,000トンのトップサイドを支えるコンクリート製重力式基礎は、一体どのようにして沖合に設置されたのか?気になったので調べてみました。
AllseasがYouTubeで公開している「Pioneering Spirit」によるトップサイド設置の動画で、海面上に姿を見せている円筒形の部分は僅かですが、設置海域の水深は約120mあるため、海面より下の部分は想像以上に大きいことが分かります。
コンクリート製重力式基礎の大きさは高さ145m、ベース部分は直径122m。コンクリート76,000m3が使用されており、重量は210,000トン。建造がおこなわれたのは、カナダのニューファンドランド・ラブラドール州にあるアルジェンシャ(Argentia)。Argentia Graving Dockと呼ばれる海岸近くに位置する場所で、建造後に進水・曳航するため建造場所は海抜以下に掘り下げられています。建造時にはMammoetのリングクレーン「SK 350」を使用。
The concrete gravity structure reached its final height of 145.2 m after the final concrete pour in Argentia, NL. In Ingleside, Texas, the final heavy lift was executed, installing the last crane and completing the topsides structurally. (2/3) pic.twitter.com/dTieBqb9bD
— Cenovus Energy (@cenovus) June 25, 2024
【Googleマップ航空写真】コンクリート製重力式基礎の建造場所
建造後に進水し、浮かべた状態で設置場所へ曳航
高さ145m、重量210,000トンの巨大なコンクリート製重力式基礎は、進水して浮かべた状態で設置場所まで曳航がおこなわれました。
設置場所への曳航では複数のボートが配置され、主曳船として曳航作業に従事している「Skandi Mariner」は全長95mという大きさ。
Bon Voyage!
— Port of Argentia (@PortofArgentia) May 9, 2025
The Cenovus Concrete Gravity Structure has begun the long process of towing out of Port of Argentia.
This monumental moment is a decade in the making. pic.twitter.com/msSbOZHaPF
Cenovus West White Rose CGS now departed the Argentia Graving Dock and entering the deep water (18m cd) tow channel out to Placentia Bay. The Port thanks Cenovus for helping place Argentia on the world stage as a host to such world class projects. Thank you! pic.twitter.com/QkFEyfBIeo
— Port of Argentia (@PortofArgentia) May 9, 2025

