世界の起重機船ランキング
世界の起重機船ランキングTOP5について、それぞれの最大吊上げ記録をしらべてみました。
吊上げ記録には関係ないですが、クレーンなのでそれぞれクレーン検査を当然やっています。個人的にクレーン検査時のワイヤリングが好きなので、探せたものは載せました。クレーン能力が凄いので吊りワイヤーが幾何学的でとてもいい感じです。
とりあえず、クレーン能力のランキングから。
| Ranking | 船名 | 吊り上げ能力 | |
|---|---|---|---|
| #1 | Sleipnir | 20,000トン | |
| #2 | Thialf | 14,200トン | |
| #3 | Saipem 7000 | 14,000トン | |
| #4 | Zhen Hua 30 | 12,000トン | |
| #5 | Hyundai-10000 | 10,000トン |
No.5 10,000トン吊 Hyundai-10000
第5位でも吊り能力10,000トンを超えてます。
「Hyundai-10000」の概要
| 船名 | Hyundai-10000 |
|---|---|
| 吊上げ能力 | 10,000トン吊 |
| 長さ | 182.0m |
| 幅 | 70.0m |
| 深さ | 11.0m |
| 建造年 | 2015年 |
| 所有会社 | Hyundai Heavy Industries |
日本の大型起重機船と同じタイプのジブ固定式。
長さ182m、幅70m。甲板面積は12,740㎡。東京ドームのグラウンドが13,000㎡なのでほぼ同じ面積。
the King’s Quay FPS トップサイド設置
吊上げ記録は、2021年1月21日。メキシコ湾の「the King’s Quay project」で使用されるFPS(floating production system)のトップサイド設置。場所は韓国のHyundai Heavy Industries、shipyard in Ulsan。
重量は9,100トン。
「セウォル号」の建て起こし作業も重量的に重そうですが、吊上げて無いですし、どの程度荷重をかけたのかが不明でしたので外しました。
建造時のクレーン検査
No.4 12,000トン吊 Zhen Hua 30
「Zhen Hua 30」の概要
| 船名 | Zhen Hua 30(振华30) |
|---|---|
| 吊上げ能力 | (固定)12,000トン吊、(旋回)7,000トン吊 |
| 長さ | 297.55m |
| 幅 | 58.0m |
| 深さ | 28.8m |
| 建造年 | 2016年 |
| 所有会社 | ZPMC-OTL Marine Contractor Ltd. |
吊上げ能力第4位の「Zhen Hua 30」。12,000トン吊。
これより大きい起重機船ベスト3は半潜水式でクレーンが2基搭載されていますが、「Zhen Hua 30」はクレーン1基だけで12,000トン吊。クレーン1基だけの能力を見ると世界最大。
ネットに上がってないだけかもしれませんが、あまり活躍しているニュースは見かけませんね。使い勝手が悪そうな気がします。どういった経緯でこの船を建造したんでしょうか。採算取れてない感が強いです。
港珠澳大橋 沈埋函設置
吊上げ記録は2017年5月2日、中国 香港沖で建設していた香港・珠海・マカオを結ぶ「港珠澳大橋」の沈埋函設置作業。
重量は6,000トン。
橋の建設は2009年12月に着工、9年後の2018年10月24日に開通。全長55km。世界最長の海上橋。
建造費は約1,100億人民元。日本円に換算すると1兆8,700億円(1元=17円として)
余談ですが、実際の橋としての利用状況はいまいちだそうです。というのもこの橋を利用できるのは中国本土と香港の両方の運行ライセンスを保有する車両しか認めらていないから。両方のナンバーを所有する車両は数万台程度。なので物流目的の利用が全く広がっていないようです。
成長が鈍化した香港をしり目に躍進し続ける深センはGDPが香港、広州を上回っただけでなく、都市部の人口も香港、広州を上回り大都市となっている。深センは香港の北側に位置し、「港珠澳大橋」の恩恵は受けていない。
2021年10月、広東省発展・改革委員会は「広東省総合交通運輸体系『第14次5カ年計画』発展計画」を発表。「港珠澳大橋」を「単Y型」から「双Y型」へ改造する計画を明らかにした。深セン、珠海、マカオを結ぶ以外にも香港から深センへのルートを新たに1本増やすことができる。
まだ計画段階なので改造するかどうかも分かりませんが、工事になれば「Zhen Hua 30」が再び登場するかも。
2021年2月のクレーン検査
2021年1月22日から2月6日に中国の上海振華重工(ZPMC)でクレーン検査を含む船舶検査が行われたようです。
最大吊荷重は12,000トン(固定)なので試験時の最大負荷は13,200トン。
No.3 14,000トン吊 Saipem 7000
「Saipem 7000」の概要
| 船名 | Saipem 7000 |
|---|---|
| 吊上げ能力 | 7,000トン吊×2基、タンデム 14,000トン吊 |
| 長さ | 197.95m |
| 幅 | 87.0m |
| 深さ | 43.5m |
| 建造年 | 1987年 |
| 所有会社 | Saipem |
地中海 リビア沖 Sabratha deck 設置
吊上げ記録は2004年10月、地中海 リビア沖110kmに位置する「Bahar Essalam field」の中央プラットフォーム「Sabratha」のdeck 設置。
重量は12,100トン。
この時はアンカーリングによる係留を行った状態での吊上げでしたが、DPS(Dynamic Positioning System)、自動船位保持装置での制御下で吊上げを行った記録も参考までに。
Valhall トップサイド設置
2010年、ノルウェー 北海にある「Valhall」油田のトップサイド設置。
重量は11,600トン。
No.2 14,200トン吊 Thialf
「Thialf」の概要
| 船名 | Thialf |
|---|---|
| 吊上げ能力 | 7,100トン吊×2基、タンデム 14,200トン吊 |
| 長さ | 201.6m |
| 幅 | 88.4m |
| 深さ | 49.5m |
| 建造年 | 1985年 |
| 所有会社 | Heerema Marine Contractors |
20,000トン吊の「Sleipnir」が登場するまで世界最大のクレーン船。
建造時は「DB-102」という船名で1985年に日本の岡山県玉野にある三井造船で建造。建造当初のクレーン能力は6,000トン吊が2基だったようです。
クレーンバージは正式名を「McDERMOTT DERRICK BARGE NO.102」だった。(我々はクレーンバージ又は、SSDBと呼んだ)全長=198.9m、全幅=88.4m、メインデッキ迄の深さ=49.5m、積載可能デッキ荷重=12000MT、主クレーン=6600ST×2基、補助クレーン=1000ST×2基、雑用クレーン=220ST×2基、スラスター=3000PS×6基、スピード=8.11ノット(自航である)。
Shearwaterガス田 トップサイド設置
吊上げ記録は2000年、Shearwaterガス田 トップサイド設置。
吊上げ重量は11,833トン。
QUAD lifting
少し古いですが、半潜水式起重機船(SSCV:Semi Submersible Crane Vessel)2隻による、吊上げテスト。クレーンが各2基あるのでクレーン4基による吊上げ、その名の通り「QUAD lifting」。
動画では「Thialf」(14,200t吊)と「Balder」(6,300t吊)による試験吊りを行ってます。
No.1 20,000トン吊 Sleipnir
「Sleipnir」の概要
| 船名 | Sleipnir |
|---|---|
| 吊上げ能力 | 10,000トン吊×2基、タンデム 20,000トン吊 |
| 長さ | 220m |
| 幅 | 102m |
| 喫水 | 12m~32m |
| 建造年 | 2019年 |
| 所有会社 | Heerema Marine Contractors |
2019年にシンガポールのSembcorp Marineで建造。10,000トン吊のクレーンを2基搭載し、タンデムで吊上げ能力20,000トンを誇る世界最大の起重機船。
建造費用は10億米ドル。日本円で1,200億円。(1ドル=120円換算、2015年3月時点)
エンジンにはDF(dual fuel)エンジンを搭載しており、MGO(Marine Gas Oil)とLNG(Liquefied Natural Gas)双方を切り替えて運転可能。基本的にはLNG燃料を使用する予定という地球環境にも優しい最先端の起重機船。
船名「Sleipnir」の由来
「Sleipnir」(スレイプニル)とは北欧神話に登場する神獣の一つで主神オーディンが騎乗する8本脚の軍馬だそうです。半潜水時に8本の足で立っているように見えるからでしょう。「Thialf」も同じようなものですが。。。
Leviathanガス田 トップサイド設置
吊上げ記録は2019年9月、イスラエル沖の地中海にあるリヴァイアサンガス田のトップサイド設置。
吊上げ重量は15,300トン。
関連動画
Leviathanガス田
建造時のクレーン検査
クレーン能力は各10,000トン吊なので11,000トンの過負荷試験。クレーンブームはHuisman製でブーム長さは144m。
【追記】吊り上げ世界記録更新
出典:Heerema
2022年10月4日、デンマーク沖合の北海にあるタイラ油田のトップサイド設置作業で吊り上げ世界記録を更新。吊り上げ重量17,000トン。

