日本の深海資源開発がベルギーGSRとマンガン団塊共同開発に向けた合意
2026年3月30日、深海資源開発(DEEP OCEAN RESOURCES DEVELOPMENT)はベルギーのGlobal Sea Mineral Resources(GSR)とハワイ沖の水深約5,500mの海底に賦存するマンガン団塊(多金属団塊)の共同開発を見据え、商業規模でのシステム統合試験(System Integration Test:SIT)を中心とする実証試験実施を目指して協力することを目的とした覚書(Memorandum of Understanding:MOU)を締結したと発表。
覚書締結は深海資源開発とGSRが2030年代初頭の実施を目標に掲げる商業規模でのシステム統合試験(SIT)について、その企画、技術検討、準備を共同で推進するための協力枠組みを定めるものであり、将来の商業生
産に向けた重要な一歩になるものだという。
覚書締結の背景として、2020年10月に日本政府が宣言した2050年までに脱炭素化社会を実現するとの方針や近年の電気自動車、風力発電等の再生可能エネルギーの普及、AIの普及拡大に伴うデータセンターの建設が拡大する中でレアアースを含むレアメタル等の重要鉱物の安定的な確保が日本の経済安全保障上の優先課題となっている状況下でマンガン団塊は将来的な重要鉱物の供給源として注目されており、日本においても商業レベルでの開発が急務とされていることを挙げている。
深海資源開発は、日本政府の支援を受けてハワイ沖におけるマンガン団塊の資源開発に取り組んでおり、一方でGSRは世界的な海洋エンジニアリング企業であるDEMEグループの一員として、深海鉱物の探査及び採鉱技術に関する豊富な経験と実績を有している。両者はこれまでに技術交流や情報交換を進めてきており、今回の覚書締結を通じて、2030年代初頭に計画しているシステム統合試験(SIT)の実施に向けた協力関係をさらに強化していくと述べています。
システム統合試験の実施を計画しているハワイ沖の鉱区は深海資源開発が保有しており、クラリオン・クリッパートン断裂帯(Clarion Clipperton Zone)と呼ばれる海域に位置している。システム統合試験とは、採鉱船・集鉱機・揚鉱システム(パイプ・ポンプ)・制御通信システムなど複数の大規模な技術要素から構成されるマンガン団塊の採鉱システムを実際の深海環境において統合的に運用し、安全かつ確実に運用できるか検証する試験。
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2021年にGSRはハワイ沖の鉱区内で集鉱実験に成功

出典:GSR
DEMEの深海探査をおこなう子会社であるGlobal Sea Mineral Resources(GSR)は、2021年にハワイ沖の鉱区内において集鉱実験に成功している。
水深4,500mの海底から採鉱するのに使用されたのは、GSR所有の集鉱機「Patania II」。海面上の支援船からアンビリカルケーブルを介して制御され、水深4,500mで運用可能。4つの掃除機型コレクターが装備されており、採鉱時はウォータージェットポンプシステムでコレクタータンクに吸い込み、ライザーパイプを通じて海面上の船舶に運ばれる。重量は25トン。

出典:GSR
多金属団塊とは?

出典:User Koelle on de.wikipedia – Koelle, selbst fotografiert, own photo, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
マンガン団塊(manganese nodule)、多金属団塊(polymetallic nodule)とは、深海の海底に存在する球状の凝結塊。コアの周りに同心円状に水酸化鉄と水酸化マンガンが層状に凝結したもの。コアは、微化石(放散虫や有孔虫)の殻や、燐灰石などのリン酸塩鉱物に置換されたサメの歯や、玄武岩のデブリ、さらには既に形成されていた別の団塊(ノジュール)の破片であることもある。
マンガン団塊の化学組成は、マンガン鉱物の種類や大きさ、コアの種類によって変化し、マンガン(27%-30%)、ニッケル(1.25-1.5%)、銅(1-1.4%)、コバルト(0.2-0.25%)を含んでいる。
マンガン団塊の主成分は鉄やマンガンですが、ニッケルや銅、コバルトなどの有用金属元素を含んでいる。その成長速度は百万年に数mm程度というレベル。

出典:Wikipedia | By USGS – Public Domain, Link
マンガン団塊は世界中の大洋のほとんどに分布しているようですが、資源量と金属含有量の観点からクラリオン・クリッパートン断裂帯(Clarion Clipperton Zone)が最も有望とされているそうです。
マンガン団塊の成長には数十年から数百万年かかる。資源回復には時間がかかり、深海の生物とその生態は未知の領域が多く、影響を予測するのは大変困難。環境変化や底生生物の直接的な死、堆積物を浮遊させることによる濾過摂食者の窒息死などが懸念されているようです。