浮体式洋上風力の低コスト化に向けてNEDOが研究開発テーマ5件を採択
2026年8月17日、NEDOは「風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発」において、「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(浮体式洋上風力発電の導入促進に資する次世代技術の開発)」の研究開発テーマ5件を採択したと発表。
「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究」では、2030年以降のさらなる低コスト化を見据え、日本の周辺海域における気象・海象条件や水深条件などに適した浮体式洋上風力発電技術について、安全性、信頼性、経済性の観点から技術的成立性を検証。
今回採択した5件の研究開発を通じて、実証研究や将来の商用化に向けた技術課題を整理し、浮体式洋上風力発電の導入拡大に貢献するという。
| 採択テーマ | 幹事企業 | 参画企業 |
|---|---|---|
| TLP型ハイブリッド浮体式洋上風車支持構造物の実用化検証 | 株式会社大林組 | 株式会社ユーラスエナジーホールディングス |
| 光ファイバセンシングを活用した高耐食型鋼製ケーブルによる係留システムの長期モニタリング技術・健全性評価技術の研究開発 | 神鋼鋼線工業株式会社 | 国立大学法人大阪大学 ニューブレクス株式会社 |
| コンクリート製浮体の設計・製造・維持管理を通じた低コスト化に資する技術開発 | 大成建設株式会社 | 東京電力ホールディングス株式会社 北海道電力株式会社 |
| 浮体式洋上風力発電の洋上での風車施工技術および大規模修理技術の開発 | 東京電力リニューアブルパワー株式会社 | 一般財団法人日本海事協会 国立大学法人東京大学 |
| モジュール型浮体に導入するピン結合技術およびグラウト接合技術の開発 | JFEエンジニアリング株式会社 | 清水建設株式会社 東京電力リニューアブルパワー株式会社 株式会社ユーラスエナジーホールディングス 一般財団法人日本海事協会 |
洋上風力発電は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて導入拡大が期待されており、特に水深の深い海域が多い日本では、浮体式洋上風力発電の早期の技術確立が重要。
NEDOはこれまで、比較的浅水域となる水深50m~100mを対象に、浮体式洋上風力発電システムの低コスト化を図る実証研究および要素技術開発を進めてきた。「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究」では、まだ検証されていない新しいテーマや追加的に検証が必要なテーマについて、浮体式洋上風力発電の商用化と国際競争力の向上を見据え、日本特有の自然条件や社会的条件を踏まえた技術課題を体系的に整理するとともに、今後の導入拡大に資する次世代技術の実現可能性を検証する。
TLP型ハイブリッド浮体式洋上風車支持構造物の実用化検証

出典:OBAYASHI CORPORATION
- 期間:2026年9月~2028年3月(予定)
- 参画企業:株式会社大林組、株式会社ユーラスエナジーホールディングス(共同実施)
大林組は浮体式洋上風力発電の係留方式の一つであるTLP(Tension Leg Platform)型で、鉄筋コンクリートと鋼製部材によるハイブリッド構造の浮体の開発に取り組み、以下の成果を得ている。
- セミサブ型の鋼製浮体と比較して浮体建造費の25%削減が可能
- 鋼製浮体の製作に必要となるドライドックを使用せず、陸上岸壁で製作可能
- 浮体動揺の低減により、セミサブ型の浮体と比較して発電効率が約8%向上
- カテナリー係留方式と比較して海域占用面積を大幅に縮小可能
一方、実用化に向けては、商用規模での浮体製作や実海域の運用を見据えた技術課題への対応が必要となり、まさに今回採択された開発テーマは実用化に向けた重要なステップに位置付けられている。
実用化に向けた技術課題への対応として、風、波および潮流の影響を踏まえ係留設計手法を高度化して商用規模で求められる安全性と経済性の両立、大水深海域でのサクションアンカー設置や係留索接続作業を対象にした無人化施工技術の実証試験(2027年夏に実海域で実施予定)を実施、施工時の安全性および生産性の向上、浮体と係留索を接続するテンドンコネクターの疲労耐久性を検証して長期運用に必要な構造信頼性を確認、といった内容に取り組む。
大林組はユーラスエナジーホールディングスと連携し、次のステップとなる1MW級風車搭載浮体の実海域実証に向けて、設計、施工および電気設備の検討を深化させるとともに、TLP型浮体構造の合理化によるコスト低減を図り、実海域実証に必要となる技術的成立性の検証を進め、商用化を見据えた技術基盤の構築につなげる。
大林組
- 係留設計手法の高度化
- 大水深無人化施工の実証
- コネクターの疲労耐久性検証
- 浮体構造の合理化
ユーラスエナジーホールディングス
- 実証に向けた立地計画・調整
- 風車調達に関わる検討
- 風車-浮体間の電気設備検討
今後の展望として、今回採択された開発テーマで得られる成果を基に、2028年度以降に1MW級風車を搭載した浮体の実海域実証への展開を目指すという。さらに、実証で得られた技術的知見を将来的な商用規模プロジェクトに展開し、浮体式洋上風力発電の普及拡大を通じて、脱炭素社会の実現と再生可能エネルギー基盤の強化に貢献していく。
コンクリート製浮体の設計・製造・維持管理を通じた低コスト化に資する技術開発

出典:TAISEI CORPORATION
- 期間:2026 年7月~2028年3月(予定)
- 参画企業:大成建設株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、北海道電力株式会社
コンクリート製浮体は、主要材料の大半が国内調達であることから、材料供給及び価格の安定性に優れており、コンクリート製造に係る既存サプライチェーン・港湾インフラの活用が可能であることから、国内サプライチェーンの強靭化や地域経済への貢献が期待されている。一方、コンクリート製浮体の普及・商用化に向けては、浮体の設計・量産技術や係留技術の確立、地域受容性の向上に加え、品質確保、長期耐久性の確保、点検・維持管理の合理化など、様々な技術課題があるという。大成建設、東京電力、北海道電力の3社は、2024年度・2025年度のNEDO委託事業「フルコンクリート製コンパクトセミサブ型浮体および大水深係留の技術開発」において、これらの課題解決に向けた開発・評価等をおこない、浮体式洋上風力発電の導入に必要な基盤技術の検討を進めてきた。
今回採択された開発テーマでは前事業での成果を発展させ、コンクリート製セミサブ型浮体の製造実証試験、波浪による繰返し荷重に起因する疲労と海水由来の塩化物イオンの浸透が複合的に作用してコンクリートの劣化が進行する複合劣化の影響評価、光ファイバーセンシングによるひび割れモニタリング手法の適用性評価を一体的に推進。
これにより、風車の長寿命化を見据えたコンクリート製浮体の長期耐久性を確保し、発電コストの更なる低減を開発の目標としている。さらに、これらの成果を実海域実証につなげ、国内初となるコンクリート製セミサブ型浮体の商用化を目指す。
浮体式洋上風力発電の洋上での風車施工技術および大規模修理技術の開発

出典:TEPCO Renewable Power
- 期間:
- 参画企業:東京電力リニューアブルパワー株式会社、一般財団法人日本海事協会、国立大学法人東京大学
東京電力リニューアブルパワーは日本海事協会と東京大学と共同で、小規模なクレーン設備(タワークライミングクレーン)と施工台船を組み合せた洋上での風車施工技術および大規模修理技術の開発に取り組む。
従来の大規模修理技術では、係留索・ケーブルの切離しをおこない、風車を搭載した浮体を港湾まで曳航するため、再接続を含めて費用と復旧時間を要し、経済性の観点から負担が大きいという短所が挙げられる。
風車の搭載や交換作業を現地海域で実施できるようになることで、サイト近傍の多様な港湾を活用した施工・維持管理が可能となり、発電コストの大幅な低減を実現。
今回採択された開発テーマの洋上での風車施工技術について、安全性・信頼性・経済性の観点から実現可能性を評価し、2030年以降の商用案件を見据えて技術課題を整理するとともに実海域実証等の計画を検討。
モジュール型浮体に導入するピン結合技術およびグラウト接合技術の開発

出典:New Energy and Industrial Technology Development Organization | 浮体式洋上風力発電の低コスト化に向け、5件の新たなテーマを採択しました(別紙1)事業概要資料
- 期間:2026年7月~2028年3月(予定)
- 参画企業:JFEエンジニアリング株式会社、清水建設株式会社、東京電力リニューアブルパワー株式会社、株式会社ユーラスエナジーホールディングス、一般財団法人日本海事協会
「モジュール型浮体に導入するピン結合技術およびグラウト接合技術の開発」では、風や波による揺れに強く、国内の既存の造船所や鋼橋・海洋鋼構造物の製造工場、港湾ヤードを活用して建造できる「セミサブ型」と呼ばれる浮体構造を採用するとともに、部材をつなぐ方法としてピン結合技術およびグラウト接合技術を導入し、効率的な組立によるコスト低減を目指す。
ピン結合やグラウト接合という提案技術自体は、土木や建築等の分野で広く一般的に用いられている技術で、この技術を導入した浮体構造について国際的な認証機関であるDNVによる先行評価がおおなわれており、今後、国内環境やサプライチェーンに適合することで量産化が可能となる。
ピン結合技術およびグラウト接合技術を導入した浮体構造の特長は、各部材が多くの鋼管製造会社や鋼構造物製造会社で製造できる形や大きさで構成されている点であり、既存の工場設備や技術を活用した生産が可能。また、多くの会社が部材製造を担うことができるため、国内サプライチェーン強化につながる。さらに、組立に関しても現地の作業環境条件の影響を受けにくいため、港湾ヤードでの組立作業の効率化が可能となり、部材の小規模化により仮保管スペースを抑えられるため、比較的コンパクトな港湾でも組立が可能。
JFEエンジニアリング、清水建設、東京電力リニューアブルパワー、ユーラスエナジーホールディングス、日本海事協会の5者は、今回採択された開発テーマを通じて安全性・信頼性・経済性の観点から提案技術の検討を進めるとともに、設計手法ならびに製造・施工における品質管理手法の確立を目指す。
JFEエンジニアリング
- 提案技術を導入した浮体による生産基盤の構築
清水建設
- グラウト接合部の施工品質管理の方法および提案技術を導入した浮体の港湾組立レイアウトの検討
東京電力リニューアブルパワー
- 提案技術を導入した浮体の国内気象・海象条件への適合性および事業性評価
ユーラスエナジーホールディングス
- 提案技術を導入した浮体の設計におけるクリティカルとなる解析条件・荷重ケースの検討
日本海事協会
- 提案技術における材料要件の整理および国内導入に関する設計・施工技術の評価