清水建設が端島に研究拠点として活用する「72号棟」建設、運用開始

2026年4月16日、清水建設は長崎県長崎市にある端島、通称 軍艦島に研究拠点として活用する「72号棟」を建設し、運用開始したことを発表しました。
清水建設の発表情報によると、端島に新たな建築物が建設されたのは56年ぶりだという。「72号棟」の建設は、清水建設と長崎市が締結した端島炭鉱の保存・整備及び公開活用に関する連携協定にもとづく取り組みの第一弾としておこなわれ、研究拠点として活用するほかに端島を訪れる多くの観光客のため、災害時や体調不良者の一時避難所として使用する。


「72号棟」は木造平屋で建築面積52.44m2、高さ3.11m。
清水建設は以前から自然災害により孤立した地域を想定した「アクセス困難で不十分なインフラ環境下での施設整備・運用技術の開発」に取り組んでおり、「72号棟」はまさにこの取り組みに資する建築。計画上の大きな特徴は、全国どこでも入手可能な一般流通木材を採用し、柱・梁の組み立てから地震時の水平力を負担する外壁(構造用合板パネル)の設置にいたるまで、簡単な工程で組み立て可能なこと。
また、史跡内では地盤の改変ができないため、建物外周に配置したウエイトにより強風時などに建物の転倒を防ぐ機構を採用。ウェイトには、現地にある史跡構成要素以外のガレキを詰めたジャカゴを用い、揚陸資材の削減にも努めている。
使用する電力は舗装型太陽光発電システムで発電
施設の運用に不可欠な電力については、新たな電源システムとして舗装型太陽光発電システムを採用し端島特有の環境に対する適用性を検証する。
舗装型太陽光発電システムは、地面に敷設した35cm角の発電ユニット(パネル)と可搬型蓄電池を接続したもので、ユニット上は歩行も可能。初期段階として、「72号棟」の照明・空調・通信用に最大発電能力約21Wのユニット20枚を設置し、必要に応じて増設。
また、衛星通信サービス「スターリンク」の導入により、課題視されていた通信環境を改善しており、現地での調査研究活動の高度化、効率化が期待されるという。
衛生環境を改善する新たなトイレシステムの設置
上陸する研究者や作業員の衛生環境を改善するため、長崎市の管理による新たなトイレシステムを設置し有効性を検証。
設置したトイレは、化学溶液を添加した洗浄水400Lを初期投入すれば、2,500回程度の利用が可能。汚物を処理槽に沈殿させて上澄み水を循環利用する過程で、化学溶液が洗浄水の滅菌、脱臭、汚物の減容化・汚泥化などの効果を発揮し、快適性を維持。また、汚泥化させた汚物の効果的な利用方法なども併せて検証予定。
2015年 世界文化遺産に登録
2015年、国連教育科学文化機関(UNESCO)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)により、端島炭坑を構成遺産に含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」がUNESCOの世界文化遺産に登録。
端島には建築史的に価値ある建物群が残っており、特に「三菱端島砿業所30号アパート」、いわゆる30号棟は大正年間に建設された日本最古の鉄筋コンクリート造集合住宅とされ、清水建設がその新築及び改修工事を担ったという歴史があるという。
清水建設は端島に所在する殆どの建造物の建設、保全に当たってきたことから、端島の世界遺産登録に際して保管する図面類を歴史資料として長崎市に提供。今回の「72号棟」建設・運用開始に引き続いて長崎市と連携し、世界遺産の構成資産である端島炭坑の保存・整備及び公開活用に寄与していくと述べている。