長崎県五島市にある崎山漁港の沖合に建設中で、大規模な商用の浮体式洋上風力としては国内初となる五島市沖洋上風力。採用されている浮体の形状はハイブリッドスパー型と呼ばれるビール瓶のような形状をしており、その浮体を建て起こす瞬間の様子を含む建設状況が取材したANNによってYoutubeで公開されていました。
長崎 五島沖で建設が進むスパー型の浮体を採用した洋上風力発電所
2022年10月初旬に開始した五島市沖洋上風力の海上作業。日立製作所製の単機出力2.1MWという風力タービンを8基設置する予定で総発電容量は16.8MW。風車基礎は浮体式で上部は鋼製、下部はコンクリート製というハイブリッドスパー型が採用されているのが特徴。国内初の商業ベースとなる大型洋上風力発電所「秋田港・能代港洋上風力発電所」の着床式とは異なり、海に浮いた状態の風車をアンカーで係留する浮体式という設置方法は国内初となる。
設置工事の中でも興味深いスパー型の浮体を海上で横倒しの状態から建て起こす瞬間の映像がYoutubeに掲載されていました。掲載及び密着取材を行ったのはANN(All Nippon News Network)、テレビ朝日をキー局とした民放ニュースネットワーク。
動画では、1基目の浮体部分のスパーを半潜水型スパッド台船「フロートレイザー」を使用して運搬・建て起こしする様子と3,700トン吊り起重機船「第50吉田号」によるブレード設置の様子が紹介されています。
重量2,600トン スパー型の浮体を「フロートレイザー」で曳航
半潜水型スパッド台船「フロートレイザー」に横倒しの状態で積み込みされた1基目の浮体が福江港を出港して進水・建て起こしを行う椛島沖へ曳航。スパー型浮体の形状は直径7.8m、全長130m、重量2,600トン。
曳航中の「フロートレイザー」に積まれた浮体が映る場面では、浮体中央付近に設置後の係留時に使用する10m程度のチェーンが事前に取り付けられているのが見えます。最終的な設置海域へ移動した時に本設のチェーンと連結する作業を容易にするためだと思われる。
長崎で建設中の浮体式洋上風力 スパー型の浮体が起き上がる瞬間
スパー型の浮体を進水させる方法は、半潜水式台船「フロートレイザー」の船体に注水して沈めていき浮体を浮かび上がらせるという方法。動画内の説明では「フロートレイザー」の甲板が水深14m程度になるくらいまで沈めるという。全長130mという長さの浮体が浮き上がった後に周囲の設備に接触しないよう何本もロープが取り付けられています。
曳き出しを行う浮体の下部側を先行させて傾けた状態になるように船体を沈めていき、無事に進水。進水・曳き出しの作業では水中カメラの映像でも確認を行い、浮体が接触しないように慎重な作業が行われた。
進水し、曳き出された浮体の底にポンプで海水を注入し、いよいよ建て起こしの段階へ。おきあがりこぼしの要領で注水によって重心位置が下へ移動し、平衡を保つために浮体が起き上がってくるという仕組み。30度を超えるとあっという間に起き上がるという動画の中での説明通り、結構な勢いで浮体が立ち上がり、勢い余って垂直の状態を通り越していく様子は、まさに巨大”おきあがりこぼし”といった感じ。
この瞬間を見ることが出来ただけで満足。
「第50吉田号」によるブレード取付
無事に建て起こしが完了した浮体部分に風力タービンを設置していく作業では、タワー、ナセル、ハブとブレード2枚の取付が終わった後の最終となる3枚目のブレードを3,700トン吊り起重機船「第50吉田号」によって取り付ける様子を紹介。
クローズアップされたブレードとハブの取り合いを行う場面では結構な揺れがある中での取付作業。使用機械によるところもありますが、洋上風車設置で最もリスクの高い作業の1つとされるブレード設置作業はやっぱり難易度が高いんだなと分かる映像でした。
Youtubeの動画
洋上風車の設置だけではなく、建設現場で行われている作業の様子を間近で見る機会は無いので今回のような作業を行う現場に密着して紹介してくれる動画はとても興味深い、そして貴重。現場の方にとってはメリットが無いかもしれませんが、広報素材としては効果が大きい。動画でインタビューを受ける椛島の漁師さんも洋上風力プロジェクトに好意的でかなり期待を寄せてくれている。このような地元の方からも期待され、日本の将来を担うビッグプロジェクトに携われるなら施工を行っている会社で働きたいという若者が興味を持ってくれそうな気がします。
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