口之島沖の座礁船から流出した油回収の目処立たず
2024年4月16日に鹿児島県口之島沖で韓国船籍のケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」が座礁した事故で現場海域では燃料の重油流出が確認されているという。
報道されている情報では、第十管区海上保安本部による油流出範囲の調査がおこなわれるとともに、ケミカルタンカーを所有する韓国の船会社に回収を依頼していますが、作業の着手目処は立っていないという。
韓国の船級協会Korean Registerに登録されている情報を照会すると、ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」の船主・運航会社ともにKEOYOUNG SHIPPING CO., LTD. 。ウェブサイト上にホームページを開設していますが、今のところ事故に関する声明などは発表していない。
2024年3月に六連島沖で転覆したケミカルタンカーも同じ船主
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」の船会社KEOYOUNG SHIPPINGは、所有する別のケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」で1ヶ月前に重大な事故が起きている。
2024年3月20日、山口県下関市の六連島から北北西約8kmの海上で起きた転覆事故ではケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」の乗組員11人のうち1人は救助され無事でしたが、9人は死亡が確認され1人が行方不明となっている。
そして、現在も船体は現地海域で転覆したままとなっており、第七管区海上保安本部から緊急情報により付近を航行する船舶への注意喚起がおこなわれています。
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」
船名 | KEOYOUNG PIONEER |
総トン数 | 2,577トン |
載貨重量トン | 3,970トン |
長さ | 88.6m |
幅 | 14.6m |
深さ | 7.2m |
船籍 | 韓国 |
建造年 | 2006年1月 |
出典:Marine Traffic | KATSUMI YAMAMOTO
韓国海洋警察庁から救助活動に対する感謝状
韓国海洋警察庁「日本海域で発生した韓国船籍の貨物船事故の乗組員救助活動に対して感謝状を贈呈」
https://www.kcg.go.kr/kcg/na/ntt/selectNttInfo.do?mi=2799&nttSn=52297
2024年3月21日、韓国海洋警察庁は六連島沖で起きたケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」転覆事故に対する日本の海上保安庁がおこなった救助活動に対して感謝状を贈ったことを明らかにしています。
そして、4月16日に鹿児島県口之島沖でケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」が座礁した事故については、韓国海洋警察庁のプレスリリースでは発表されていませんが、4月17日に日本の海上保安庁へ救助活動に対する感謝状を贈ったことが韓国のニュースで報道されています。
韓国では4月22日から2ヶ月間の集中安全点検を実施予定
海を守るために海洋汚染事故の危険性高い海洋施設の集中点検を始める!
https://www.kcg.go.kr/kcg/na/ntt/selectNttInfo.do?nttSn=53023
2024年4月18日に発表された韓国海洋警察庁のプレスリリースでは、4月22日から6月21日の61日間、およそ2ヵ月間に渡って大規模な海洋汚染事故予防を目的に事故リスクが高い海洋施設を対象とした集中安全点検を実施すると明らかにしました。
このプレスリリースを見た時、てっきり2件の事故を受けて船舶に対する集中安全点検をするのかと思ってしまいましたが、点検対象になっているのは300㎘以上の油・有害物質貯蔵施設242箇所と石炭・セメントなどの荷役施設44箇所の合わせて286箇所だという。船舶ではなく貯蔵施設や荷役施設が点検対象のようです。それも大事なことですけど。
立て続けに起きた事故2件のゆくえ
3月、4月と立て続けに起きた韓国船籍のケミカルタンカーによる2つの事故は現段階で事態が収束しておらず、六連沖では船体が転覆したままになっており、口之島沖では船体が座礁したままになっています。いろいろ思う事はありますが、被害が拡大しないように1日も早く事態が解決することを願うばかり。
2件の事故は日本国内で起きていますが、日本は事故を起こした当事者ではない。しかし、日本の海上保安庁をはじめとした関係者は命を懸けて救助・捜索活動をおこなっています。船乗りの方は、大自然である海と日々対峙していることもあり助け合いの精神が強く、そこに誇りを持っているように感じる。人は注意を払っていてもミスをしてしまうことがあり、そこに人種や国籍は関係していないということを今一度覚えておきたい。
明日は我が身という言葉のように他人事を自分のことのように考え、起きてしまった事故の要因や対策を考えていく事が未来に起こる事故の芽を摘むためには重要になる。
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