4,000トン吊り起重機船「GULLIVER」が2018年の建造以来、初のドック入りで10日間の定期修繕を実施。メンテナンス後は外板の塗装も塗り直されてピカピカの状態に。
4,000トン吊り起重機船「GULLIVER」 初ドックで定期修繕を実施
フランスのブレスト(Brest)にあるDamen Shiprepair Brestで定期修繕のためドック入りしていた4,000トン吊り起重機船「GULLIVER」のメンテナンス作業が完了したようです。
起重機船「GULLIVER」は、ベルギーのScaldis Salvage & Marine Contractors NVが所有しており、中国の造船所で建造され、2018年に完成。ドック入りしてのメンテナンスは建造後、5年間で初めて。
船底には5年分の付着物がびっしり
どの船でも同じなんでしょうけど、5年間ドックしてないだけあって船底には付着物がびっしり。画像では高圧のハイウォッシャーのような機材を使用して除去している様子が映っており、足元には除去した付着物がたくさん落ちているのが分かります。これだけ綺麗に取れてくれると掃除しがいがありそう。付着物除去の様子を定点タイムラプス動画であげて欲しい。
付着物を除去した外板は塗装を塗り直されて見た目は新造船のような状態に。見た目の印象って大切ですね。
10日間に及ぶドックインしてのメンテナンス作業は完了し、起重機船「GULLIVER」はフランスからオランダへ向けて出航したそうです。
出典:Scaldis Salvage & Marine Contractors NV
4,000トン吊り起重機船「GULLIVER」の概要
出典:Youtube | Herbosch-Kiere nv
2018年に中国で建造された4,000トン吊り起重機船「GULLIVER」。わりと新しい起重機船。
Youtube動画のリンク先:LAUNCH GULLIVER
起重機船「GULLIVER」は日本の大型起重機船と同じジブ固定式ですが、日本のものには無い2つの大きな特徴があります。
自航式の起重機船
まず1つ目の大きな特徴として自航式起重機船という点。船首と船尾に各2基、計4基のアジマススラスターを搭載しており、7ノットの速力で航行可能。DP性能は、カタログを確認するとDP(AA)という記載。イギリスのロイド船級協会による承認でIMO(国際海事機関)でいうClass2相当。
船名 | GULLIVER |
クレーン能力 | 4,000トン |
長さ | 108m |
幅 | 49m |
深さ | 8m |
プロペラ | (船首)1,505kw×2 (船尾)1,720kw×2 |
速力 | 7ノット |
DPS | DP(AA) (Class2相当) |
宿泊設備 | 78人 |
建造年 | 2018年 |
出典:Scaldis Salvage & Marine Contractors NV
スライド式のジブ
もう一つの大きな特徴としてジブがスライド式になっているという点。バックステイの高さに比べてジブの長さはそこまで長く無いので、その機能はジブを格納するためではない。
そのメリットは、自船に設置する製品を搭載することが出来ること。2020年に行われた洋上風力発電用の変電所設置では、静穏な港内で設置するトップサイドを自船に積み込み、自航して設置場所へ移動、DP制御によりアンカー係留無しで設置作業を完了させています。
これは、かなり画期的。
洋上で輸送台船からの荷受け作業が無くなり、自航船なのでボートなどの使用機械が大幅に減って施工はスピーディーに進み、何より安全面のリスクが最小化されている。
出典:Scaldis Salvage & Marine Contractors NV
起重機船「GULLIVER」は、直近にも同じような洋上変電所トップサイドの設置を行っていますが、その時はジブをスライドさせず輸送台船から吊り取って設置を行っています。この時のトップサイド重量は2,380トン。恐らくジブをスライドして後ろにずらした状態だと設置時のアウトリーチでクレーン能力が負けてしまうんだと思われる。
Scaldisのホームページに掲載されている「GULLIVER」の能力表を見ると、ジブを25mバックさせた状態でフックが船首の位置でクレーン能力は約2,700トン。そこからアウトリーチ10m分ジブを倒しただけでクレーン能力は2,000トンまで落ちるので、重量2,380トンのトップサイドは設置不可。
非常に良いアイディアで効果は大きいですが、ジブを後退させるためクレーン能力が大幅にダウンしてしまい設置できる重量が制限されるのが難点ですね。
出典:Parkwind
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