イギリスで港口の浅瀬にタンカー座礁
2024年2月10日、イングランド北西部のカンブリアにあるシロス(Silloth)の港入り口手前でタンカー「ZAPADNYY」が座礁する事故が発生。座礁原因には最大10mにも達する大きな干満差が影響していたようです。
座礁したタンカー「ZAPADNYY」は、2月1日にドイツのブレーメンを出港し、モラセス(molasses)と呼ばれる砂糖精製時に発生する廃糖蜜を積んでシロスへ運んでいたという。そして、2月10日のお昼12時頃にシロス港へ到着し、入港するため港の入り口に差し掛かったところで座礁。
座礁事故による負傷者は報告されておらず、座礁したタンカーもその日の夜の満潮時刻に合わせて離礁し、シロス港内へ移動したそうです。今後、潜水士による船体損傷の確認がおこなわれる予定。
座礁した原因は荒天による走錨や操船ミスなどではなく、港へ入るための入り口で座礁しているという少し不思議な座礁事故。気になったのでタンカーが座礁したシロス港の潮汐を調べてみると、とんでもなく干満差が大きいようです。
座礁当日、シロス港の干満差は約10m
タンカー「ZAPADNYY」が座礁したシロス港の潮汐を調べてみると、驚きの干満差でした。事故が起きた2月10日は新月だったようで、大潮と呼ばれる普段より干満差が大きくなる日だったこともあり、朝の干潮時は-0.7mに対して昼の満潮時は9.4m。実に干満差は9.6m。
しかし、タンカー「ZAPADNYY」のAIS情報では、ほぼ12時くらいに座礁していました。潮汐表では11:55の満潮時刻を少し過ぎていますが、潮位は9m以上あるという状態。なので、調べた潮汐データと現場の潮位はズレている可能性が高そう。
AISで離礁が確認できたのは23時頃。潮汐表の数値と比べて、実際は1~2時間くらい満潮時刻が早かったのかもしれません。👆上に掲載している潮汐データはネットで誰もが閲覧できるものなので、航海用ではありません。タンカーの船長は正式な航海用の潮汐表を見ていたと思いますが、実際に座礁しているのでそちらも実際の潮位と比べてズレている可能性はあるのかも。
それと、港の南側にある砂浜から港の入口へ向かって砂が流入しているようなので、徐々に水深が減少してきていることも関係しているように思える。それにしても、入港できる潮位の時間がかなり短く、シビアな入出港時間の調整が必要。船乗り泣かせの港ですね。
あともう1つ、タンカー「ZAPADNYY」のAIS情報ではシロス港の手前で少し速力を落とし、港の沖で1度ターンしてから入港するという航跡が確認できました。もしかすると出港船を待っていた、又は奥の港に設置してあるゲートの開門を待っていたのかもしれません。ダイレクトで入港していれば、30分は早く入れていた感じなので座礁することも無かったかも・・たらればですが。
2016年にも同じタンカーが同じ場所で座礁
操船していた船長が同じ人なのかは分かりませんが、タンカー「ZAPADNYY」は2016年にもシロス港の同じ場所で座礁しています。それだけ入港に必要な潮位が高く、入出港できる時間帯が短いんでしょうね。
しかし、同じ失敗を繰り返してしまっているだけに、今後なにも対策しないという訳にはいかないような気がします。したがって貨物量を減らしたり、喫水の小さな船を配船するといった対策を取る必要があるのかも。
タンカー「ZAPADNYY」
船名 | ZAPADNYY |
総トン数 | 1,896トン |
載貨重量トン | 3,297トン |
長さ | 77m |
幅 | 14m |
船籍 | ベリーズ |
建造年 | 1988年 |
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