太陽光パネル付き格納式帆搭載のゼロエミッションクルーズ船
ノルウェーのクルーズ会社Hurtigrutenと船舶設計およびイタリアの造船会社フィンカンティエリ傘下のVARDは、Sea Zero projectで開発を進めているゼロエミッション(zero-emission:排出ゼロ)クルーズ船の最新計画を発表しました。
大型バッテリーや格納式帆、その他にも革新的な技術によりエネルギー消費を従来に比べて40~50%削減し、通常運行中に完全排出ゼロの状態で航行することを目指しているという。
現在はまだ開発段階ですが、2030年に竣工予定。
出典:Hurtigruten
「Wingsail」は1基当たり最大で2,400kWのエンジン出力に相当
出典:VARD
特徴的な船体上部に搭載されている帆は、OceanWingsのWingsailと呼ばれる推進補助システム。
OceanWingsのウェブサイトに掲載されている製品情報を見ると、固定式、傾斜格納式、伸縮式、昇降式の4種類があり、搭載予定のものはRigid Tiltable Wingsail(OW RT)と呼ばれる傾斜格納式のタイプ。しかし、今回発表された帆の部分に太陽光パネルを設置している製品については書かれていなかったので、特別仕様なのかもしれません。
計画されているゼロエミッションクルーズ船に搭載するWingsailのサイズや詳細仕様は不明ですが、OceanWingsが公表している標準仕様のもので帆の部分は幅11m、高さ33m、表面積363m3。設置に必要な面積は外径2.5m、帆の傾斜動作をおこなう基礎を含めた高さは38m、ユニット重量は45トン、動作電力は1.5kW未満。そして、標準仕様のWingsail 1基当たりで最大2,500kWのエンジン出力に相当するという。速力や風況などの条件は書かれていませんでしたが、”最大” とはいえ驚きの推進力・・。
持続可能性、排出ゼロを目指す「Sea Zero project」
出典:Hurtigruten
Hurtigrutenが持続可能性、排出ゼロに焦点を当てた「Sea Zero project」を発表したのは2022年10月。2023年夏に最初の計画進捗を公表、その後も研究開発は継続している。
搭載する太陽光パネル付きの格納式帆によって、約10%のエネルギー消費削減が見込まれ、帆に取り付けた太陽光パネルは2~3%貢献するという。
その他のエネルギー削減対策として、航行時の摩擦抵抗を低減させるため船体下部に気泡を送り込む技術が採用される予定。これにより5~10%のエネルギー削減が見込まれ、最新の船体設計や高度な防汚コーティング、定期的な船体洗浄と組み合わせることでさらなる摩擦抵抗低減に取り組む。
推進装置には、2重反転プロペラ(contra-rotating propellers)の搭載を計画。大型バッテリーの容量は約60MWh。
乗船者が船室内のアプリとスクリーンを通じて暖房と換気を制御し、エネルギー使用量を確認することができる「スマートキャビン」と呼ばれるシステムを導入。乗船者の持続可能性に対する意識を高める効果が期待されているそうです。確かに可視化することで意識は高まりそうな気がするので、面白い取り組み。
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