松山市中島で起きた貨物船乗揚げ事故、船橋を無人にした船長が原因

松山市中島で起きた貨物船乗揚げ事故、船橋を無人にした船長が原因 国内ニュース
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松山市中島で起きた貨物船乗揚げ事故、船橋を無人にした船長が原因

2024年12月19日、運輸安全委員会は愛媛県松山市沖の中島で起きた貨物船「盛明丸乗揚げ事故に関する船舶事故調査報告書を発表しました。

リンク先 船舶事故調査報告書 | 貨物船盛明丸乗揚(PDFファイル)

座礁事故が起きる原因はさまざま。荒天やエンジントラブルの他に、居眠りや勘違いといったことが原因であることも多くありますが、貨物船「盛明丸」が座礁した原因は操船していた船長がトイレに行くため、船橋を無人にして離れたことが原因だったという。

船長は普通に用を足しに行くためトイレに行った訳では無く、夕飯の食事後から吐き気と下痢の症状があったということですが、貨物船「盛明丸」には船長のほか3人が乗っており、乗組員に交代を求めていれば事故を未然に防ぐことが出来ていたと考えると残念でならない。

事故発生までの経緯

貨物船「盛明丸」の航行経路
出典:「船舶事故調査報告書」(運輸安全委員会)(2024年12月19日公表)

貨物船「盛明丸」の乗揚げ事故が発生したのは、2024年5月26日22時57分ごろ。貨物船「盛明丸」は事故発生から約7時間前の同日16時に山口県の宇部港を出港し、兵庫県の加古川港へ向けて石灰石1,530トンを運んでいた。

出港時から船長が単独の船橋当直に当たり、約12~13ノット(時速22.2~24.1km)の速力で航行。

事故発生の約20分前にあたる22時40分ごろ、船長は松山市二神ふたがみ島北西沖で自動操舵のダイヤルを回し、針路を中島北西部の部屋ノ鼻北沖に定めて北東進していましたが、針路が徐々に右偏して中島南西岸に向いていることに気付いていなかった。

22時50分ごろ、船長は19時ごろから催していた吐き気と下痢の症状を我慢できなくなり、レーダーと目視で周囲に危険な関係になる船舶がいないことを確認し、船橋下のトイレに入った。トイレは、船橋左舷後方の出入り口から出て、階段を降りた場所にあったという。

貨物船「盛明丸」には、設定された時間内に船橋内の乗組員の動きが感知されないと警報音が鳴る船橋航海当直警報装置が船橋内に設置されており、設定時間6分間に設定されていた。トイレに入った船長はその中で、警報装置の警報音を聞き、船橋に上がったところ、22時57分ごろ、大きな振動を感じて機関を中立にしたが、中島南西岸に乗り揚げた。

事故発生後に貨物船「盛明丸」のAISを確認した時、事故直前の5月26日22時55分、座礁位置から約600m手前の時点で速力12.3ノットという数値を確認していたので、座礁原因が気になっていました。まさか、このような原因だったとは・・。

事故発生から丸1日が経過した5月27日23時頃、座礁して身動きが取れなくなった貨物船「盛明丸」離礁作業に向けて「たんば丸」「なさみ丸」のタグボート2隻が現場に到着。日付が変わった28日00時20分頃。2隻のタグボートにより貨物船「盛明丸」の曳き出し作業がおこなわれ、離礁に成功。船舶事故調査報告書によると、船底外板に破口が確認されたという。

なぜ船長は乗組員に交代を求めなかったのか?

船長は、18時ごろに食事をとった後、19時ごろ突然、吐き気と下痢の症状が生じて、その後20時ごろにも同様の症状があったそうですが、症状はいずれ治まると思い、他の乗組員に当直の交替を依頼しなかったという。

単独で船橋当直にあたっていた船長は船橋を無人にしたことについて、周囲に危険な関係になる船舶もおらず、短時間であれば大丈夫と思っていたと書かれている。貨物船「盛明丸」では、船橋当直時間を4時間交替の輪番制で定めていたが、他の乗組員には日頃から船倉清掃等の重労働をさせていたので負担を軽減しようと思い、船長は長時間の船橋当直についていた。事故が起きた時も出港時から船長が連続で船橋当直についていたそうです。

一見すると乗組員のために頑張る船長の姿が想像できる。一方で航行中の船橋を無人にするという考えられない無責任な行動によって事故が起きています。船内での人間関係が関係しているのかは分かりませんが、船の乗組員だけではなく、運航会社が一体となって安全運航に対する意識を高める必要がありそう。

貨物船「盛明丸」

船名盛明丸
総トン数499トン
長さ74.6m
12m
建造年2014年9月
貨物船「盛明丸」
出典:MarineTraffic | kenro oshita

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