電源開発と東京大学が洋上風力基礎「フレキシブル・トリパイル」考案
2024年10月15日、電源開発株式会社(J-POWER)は東京大学と共同で、日本の地形に適した新たな着床式洋上風力基礎「フレキシブル・トリパイル」(FTP,Flexible Tripile)を考案し、特許を取得したことを発表しました。
大規模導入が進められている着床式洋上風力には、欧州で実績のあるモノパイル基礎が多く用いられており、日本海域で多く見られる地盤のように比較的硬質な岩盤が浅く分布する場合には、効率良く岩盤を削孔することが困難なことからモノパイル基礎が適用できず、建設コストに課題があったという。
確かに、日本初となる商用規模の洋上風力発電所として建設された秋田・能代洋上風力と入善沖洋上風力はモノパイル基礎を採用しています。しかし、サイズアップした8MWの風力タービンを設置している石狩湾新港洋上風力発電所や9.5MWの風力タービン25基を設置予定で建設中の北九州響灘洋上ウインドファームではジャケット式基礎を採用。
設置区域 | 名称 | 合計出力 | タービンメーカー | 単機出力 | 基数 | 風車基礎 | 運転開始 |
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千葉県 銚子沖 | 銚子沖洋上風力発電所 | 2.4MW | 三菱重工業 | 2.4MW | 1基 | 重力式 | 2019年1月 |
秋田県 能代港 | 能代港洋上風力発電所 | 84MW | MHI Vestas | 4.2MW | 20基 | モノパイル | 2022年12月 |
秋田県 秋田港 | 秋田港洋上風力発電所 | 54.6MW | MHI Vestas | 4.2MW | 13基 | モノパイル | 2023年1月 |
富山県 入善町沖 | 入善洋上風力発電所 | 7.5MW | 明陽智能 | 3MW | 3基 | モノパイル | 2023年9月 |
北海道 石狩湾新港 | 石狩湾新港洋上風力発電所 | 112MW | Siemens Gamesa | 8MW | 14基 | ジャケット | 2024年1月 |
福岡県 北九州沖 | 北九州響灘洋上ウインドファーム | 237.5MW | Vestas | 9.5MW | 25基 | ジャケット | 2025年度(予定) |
日本の設置海域に適した施工性、地震に強い「フレキシブル・トリパイル」
考案した着床式洋上風力基礎「フレキシブル・トリパイル」は、基礎の底版部に角鋼管や鋼板を用いて比較的変形しやすく柔らかい構造とすることで地盤からの免震効果を得られるため、岩盤が浅く分布する地点における施工性が良く、なおかつ地震による振動を低減。また、従来技術に比べ、基礎に使用する部材を簡素化出来るため、建設コストを低く抑えることが可能だという。
モノパイルとジャケットを合わせたような「フレキシブル・トリパイル」は、3本の杭と鋼管主管の接続に考案した角鋼管と鋼板構造及びワイヤロープを用いている。基礎中心の鋼管主管は風力タービンのタワーと接続する構造になっており、一体化した鋼管部が長いことで風車全体がゆっくりと揺れるため(長周期化)、地震動の影響を受けタワーの揺れが増幅する現象(共振)の発生を軽減することが出来るそうです。加えて、考案した免震効果により地震による振動を低減。
試算では従来技術に比べて基礎に使用する部材の簡素化が可能なことから、大幅なコストダウンが見込まれ、今後の大型化した風力タービンに対しても適用しやすいと想定している。
電源開発は、カーボンニュートラルの実現に向け、洋上風力に関わる更なる技術開発が必要と考えており、今後も実海域での「フレキシブル・トリパイル」実用化に向けて、鋭意研究を進めていくと述べています。
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