2021年5月20日にスリランカのコロンボ港沖合で火災が発生し、その後沈没したコンテナ船「X-Press Pearl」。撤去するため前後に分割した船尾部分が引き揚げられ、半潜水式運搬船「FAN ZHOU 10」に搭載されました。今後は、残る船首部分の船体についても半潜水式運搬船2隻を使用して近日中に引き揚げる予定。
スリランカで座礁した「X-Press Pearl」一部を引き揚げ
2021年5月20日、スリランカ西部のコロンボ沖で火災が発生し、同年6月2日に沈没したコンテナ船「X-Press Pearl」。沈没した船体の引き揚げ作業は2021年11月に開始され、2022年4月から11月の間は休止されていましたが、前後に分割した船体の船尾部分の引き揚げに成功し、半潜水式運搬船「FAN ZHOU 10」に搭載されました。
残る船首部分の引き揚げについては「ZHONG REN 121」「ZHONG REN 122」という12,000トン積の半潜水式重量物運搬船2隻を使用して近日中に引き揚げられる予定だそうです。
火災の原因は漏れ出た硝酸
全長186mのコンテナ船「X-Press Pearl」が建造されたのは2021年2月。火災・沈没したのは、2021年5月なので完成してすぐに事故が起きているようです。その火災の原因はコンテナから漏れ出た硝酸とされている。コンテナ船には硝酸25トンの他にプラスチックペレットと呼ばれる小さなプラスチックの粒が入ったコンテナが3つ積まれており、それぞれの重量は26トンで計78トン積まれていた。そのまま流出したものや火災により溶けながら流出したものなどによる影響で、スリランカの海岸には海洋生物の死骸が多く打ち上げられ、スリランカ史上最悪の環境災害の1つと呼ばれているそうです。
船名 | X-Press Pearl |
船種 | コンテナ船 |
総トン数 | 31,629トン |
コンテナ積載 | 2,756TEU |
長さ | 186m |
幅 | 34.8m |
建造年 | 2021年 |
引き揚げ方法
沈没した「X-Press Pearl」の引き揚げ方法。どこにも記載されていないので、画像から推測される方法を考察。
船尾部分の引き揚げ作業を行う画像を調べてみると、半潜水式運搬船「ZHONG REN 121」「ZHONG REN 122」という2隻を使用して沈没した船体を挟み込んだ状態で引き揚げていました。そして、ある程度の高さまで引き揚げたところで、さらに大きな半潜水式運搬船「FAN ZHOU 10」を差し込んで搭載したものと思われる。揚重にはチェーンプラ―のような設備を甲板に設置しているように見えますが詳細は不明。
「ZHONG REN 121、122」は姉妹船で船体寸法は同一になっており、長さは169m。それに対して引き揚げた船体の搭載を行った半潜水式運搬船「FAN ZHOU 10」の長さは274mなので100m以上巨大な船体。台船2隻により挟み込んだ状態で引き揚げを行うと、どうしても最終的に半潜水式運搬船などへの搭載が不可欠になり、その寸法は引き揚げで使用する台船寸法よりはるかに巨大な船体が必要になる。
同様の方法による引き揚げ方法
過去の同じような事例で、セウォル号の引き揚げがあります。この時は、146mのセウォル号と同じくらいの長さの台船2隻で引き揚げを行い、搭載を行った半潜水式運搬船「WHITE MARLIN」の長さは216.7m。
船名 | ZHONG REN 121 ZHONG REN 122 | FAN ZHOU 10 |
長さ | 169m | 274m |
幅 | 39.8m | 48m |
載荷重量 | 12,000トン | 62,074トン |
八戸沖の座礁船も同様の方法で引き揚げ予定
青森県八戸港の沖で座礁した木材チップ専用船 CRIMSON POLARIS(クリムゾン・ポラリス)の現場に座礁したままになっている船尾部分。大型起重機船による引き揚げ方法から「チェーンプラー」と呼ばれる装置を使った撤去方法に変更されましたが、今回おこなわれた「X-Press Pearl」の引き揚げ方法と同じ流れになるものと思われる。
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