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スエズ運河でタンカーと衝突したタグボート沈没、6人救助1人不明

スエズ運河でタンカーと衝突したタグボートが沈没、6人救助1人不明 事件・事故
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スエズ運河でタンカーと衝突したタグボートが沈没

2023年8月5日、地中海と紅海を結ぶスエズ運河で全長230mのLPGタンカー「CHINAGAS LEGEND」とタグボート「FAHD」が衝突する事故が発生。衝突後、タグボートは沈没してしまったという。事故当時、タグボートに乗船していた7人の乗組員のうち6人は救助され、1人が行方不明になっており捜索活動が続けられている。

スエズ運河庁(Suez Canal Authority)の発表によると、タンカー「CHINAGAS LEGEND」はシンガポールからアメリカへ向かうため、スエズ運河を北向きに航行していたという。衝突によりタグボートの船体が損傷、船内に水が浸水し、最終的には沈没したと説明している。

その後、スエズ運河庁は更新した記事で沈没したタグボートの位置を特定したことを明らかにし、船体を引き揚げて回収するため、500トン吊りクレーン船「Enkaz」を手配して作業に向けた準備を進めていると述べた。

LPGタンカー「CHINAGAS LEGEND」は、船体に大きな損傷が無く衝突後も北への航行を続け、スエズ運河を抜けた地中海側で停泊している。事故に関する手続きなどが完了するまでその場に留まるという。

LPGタンカー「CHINAGAS LEGEND」

船名CHINAGAS
LEGEND
船種LPGタンカー
船籍香港
総トン数48,894トン
長さ230m
36m
建造年2020年
LPGタンカー「CHINAGAS LEGEND」
出典:江南造船(集团)有限责任公司

タグボート「FAHD」

船名FAHD
船種タグボート
総トン数249トン
長さ34.3m
9.57m
航行速力12.2ノット
タグボート「FAHD」
出典:MarineTraffic | smp

500トン吊りクレーン船「Enkaz」

スエズ運河庁のジブ固定式起重機船。メインフック2基で最大吊り上げ重量500トン。フライングジブにも2基のフックがあり最大吊り上げ重量は300トン、最大揚程60m。同型船で「Enkaz Ⅰ」、「Enkaz Ⅱ」の2隻がいるようですが、今回の引き揚げにどちらが向かっているのかは分かりません。画像は「Enkaz Ⅰ」。

船名Enkaz
船種クレーン船
クレーン能力500トン
長さ60.91m
26.62m
深さ5.5m
500トン吊りクレーン船「Enkaz」
出典:Damen
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スエズ運河を通航する船舶への影響

スエズ運河の北と南及びグレートビター湖で待機する多くの船舶(8月6日09:00UTC時点)

衝突事故が起きたのは2023年8月5日11:30頃(UTC:世界協定時)とみられており、直後の12:00には北行きの航行は閉鎖されたという。

8月5日にスエズ運河庁から発表された内容によると、南行きの通航に関しては間もなく通常通りに戻る見通しでしたが、AIS情報を確認した8月6日09:00UTC時点では通航が制限されている状態。スエズ運河を挟んで北と南、そして北行きの船舶がグレートビター湖で待機していることが確認できます。

南行き船舶の通航が再開(8月6日12:00UTC時点)

動きがあったのは、8月6日11:00UTC頃。南行きの船舶の通航が開始されたようですが、北行きの船舶については依然として制限されているような状態。ちょうど同じ時間帯に速力5ノットくらいのタグボートが沈没位置に到着していたので、引き揚げ用のクレーン船を曳航してきたのかもしれません。北行きの船舶についてはタグボート引き揚げ後に通航が再開されるものと思われる。

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コンテナ船「エヴァーギヴン」座礁では6.5日間封鎖

今回の事故では、まだ北行きの船舶が制限されている状態ですが、南行きの船舶の制限解除まで丸1日スエズ運河が封鎖されていたことになります。ですが、まだ記憶に新しいコンテナ船「エヴァーギヴン」座礁事故では6.5日間に渡ってスエズ運河が封鎖されていました。

コンテナ船「エヴァーギヴン」の所有者は正栄汽船。これまた最近聞き覚えがある社名ですが、オランダ沖で火災が起きた自動車運搬船「フリーマントル・ハイウェイ」と同じ所有者。

2021年3月23日の現地時間午前7時40分にスエズ運河において、日本の正栄汽船が保有し台湾の長栄海運が運用するコンテナ船「エヴァーギヴン」が座礁した上、他の船舶の通航を遮っていた事故。これに伴い、スエズ運河での船舶運航が停止していたが、同年3月29日に運航再開。スエズ運河を6.5日間封鎖。

コンテナ船「エヴァーギヴン」座礁事故

座礁事故から運航再開までの経緯
  • 3月23日
    7:40
    座礁事故発生

    エヴァーギヴン号は砂嵐および、最大で秒速20メートル(m/s)の強風に煽られて、進行方向から外れ、船は運河の岸壁に座礁して動けなくなる

  • 3月29日
    離礁

    船頭が約20 m、船尾が約50 m移動したことが正栄汽船によって発表された。またスエズ運河庁長官は、エヴァーギヴン号が岸から102 m離れたと発表した。その後スエズ運河庁はエヴァーギヴン号が離礁したことを公表した。

  • 3月29日
    18:00
    通航再開

    スエズ運河の通航が再開。エヴァーギヴン号は運河上のグレートビター湖に移動して点検を受ける

  • 4月3日
    スエズ運河 通常運行に復帰

    通航再開の時点において、この事故の影響で停止していた船舶は累計422隻。

この座礁事故でコンテナ船の離礁作業にかかった費用や運河閉鎖にともなう通過料収入の損失、風評被害などへの賠償金額について正栄汽船がスエズ運河庁に支払った金額などは公表されていません。最終的に双方が主張していた金額は、スエズ運河庁が5億5,000万ドル、正栄汽船が1億5,000万ドルなので恐らくその間の金額であることは想像できます。いずれにしても日本円に換算すると数百億円という金額。

今回起きた衝突によるタグボート沈没事故に関しては事故の経緯が不明なので、どのような話になるのかはこれからの事故調査次第。

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