世界最大、26MW洋上風力タービンのブレードとナセルを輸送

世界最大、26MW洋上風力タービンのブレードとナセルを輸送 洋上風力発電
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世界最大、26MW洋上風力タービンのブレードとナセルを輸送

2025年8月6日、中国東方電気集団(Dongfang Electric Corporation)は子会社である東方電気風電(Dongfang Electric Wind Power)が開発した26MW洋上風力タービンのコア部品にあたるブレードとナセルが山東省東営市の広利港へ輸送されたことを発表しました。

驚きの単機出力26MWという大きさは、当然ながら世界最大。そして、使用する部材も世界最長、世界最重量となっており、ブレードの長さは153m、ナセル重量は500トンを超える。

製造場所から広利港への海上輸送は、長さ130mの重量物運搬船「盛达联航」(Sheng Da Lian Hang)を使用。輸送船の全長よりも長いブレードは、貨物を搭載する甲板スペースに収まりきらないため、船尾側にかなりの部分がオーバーハングした状態で輸送。

東方電気の掲載情報によると、広利港への到着は8月4日であると説明されています。しかし、輸送をおこなったのは重量物運搬船「盛达联航」1隻のようなので、ブレードとナセルは別々の日に輸送されたようです。「盛达联航」のAIS情報を確認すると、7月17日時点ではナセルの製造がおこなわれた福建省福清市にいますが、8月1日にはブレード製造場所である山東省烟台市蓬莱区に移動していました。7月17日~8月1日の航跡情報は欠損しているため確認できませんが、この間にナセルの輸送をおこなったものと思われます。ブレード輸送に関しては、8月1日10時ごろに山東省烟台市蓬莱区を出港し、8月3日12時ごろに東営市広利港へ到着。

部材の損傷無く輸送を完了

世界最大という26MW風力タービンの部材を輸送する作業は想像以上に大変なようです。

特に153mのブレードを製造場所から輸送船のいる港へ運搬する作業は極めて困難であったという説明がされています。製造場所から港までの輸送ルートは、高圧送電線、橋梁、急カーブなどが立ちはだかり、まるで障害物コースのようだったという。輸送チームは、6ヶ月前から現地調査を実施し、複数回の再調査を経て、セグメントごとの輸送計画をカスタマイズして対応。超長尺ブレードの潜在的な曲げや変形のリスク、そして複雑な道路網がもたらす数々の障害に対処するため、輸送チームはSPMT(Self-Propelled Modular Transporter)と呼ばれる自走式多軸台車に革新的なマルチモード操舵システムを採用。このシステムは、直進、斜め、360度回転といった高精度な操縦に加え、全工程を通してドローンによる誘導を併用したという。このシステムにより、ブレードは狭い道路、高所の障害物、急カーブを安全かつ正確に通過し、1センチ単位の移動精度を確保。最終的に、このシステムにより「無損傷」輸送が実現し、超長尺ブレードの海上陸上輸送における新記録を樹立したそうです。

巨大なナセルの方は、ブレードのように長尺ではないものの、500トンを超える重量によって輸送船での荷役時に既存の港湾クレーン能力では吊り上げることが出来ないという問題が発生。そのため、従来のクレーンを使用した吊り上げ方式ではなく、ロールオン・ロールオフ方式を採用。ロールオン・ロールオフ方式の積み込みでは岸壁と輸送船甲板の高さをキープしなければならないため、「潮流との競争」を強いられたという。対策として、高精度潮汐モデルを用いた上で、早朝の潮止まり(満潮又は干潮)の2時間という限られた時間帯で積み込み作業を計画。さらに、波浪センサーとダイナミックバランシングシステムを使用して、超重量級のナセル積み込み作業という技術的課題を克服したという。

26MW洋上風力タービンの設置準備が整った

随着核心部件精准就位,标志着26兆瓦级海上风电机组即将迎来吊装时刻。

(主要部品が正確に配置され、26MWの洋上風力タービンの設置準備が整いました。)

出典:https://www.dongfang.com/info/1035/19722.htm

26MW洋上風力タービンの主要部材が輸送され設置準備は整った、と掲載情報には記載されていますが、どこに設置する予定なのかは不明。

洋上に設置するならモノパイルやジャケットなど基礎部材の製造についても報じられると思うので、プロトタイプとして陸上に設置する可能性が高そう。そこで様々な性能に関するデータ取りがおこなわれるのではないでしょうか。

風力タービン1基で5万5000世帯の年間電力需要に相当

定格出力26MW
ブレード長さ153m
ローター直径不明
ハブ高さ185m
年間発電電力量100GWh

26MWの風力タービンナセルには、完全統合型セミダイレクトドライブ技術を採用。シャフトシステム、ギアボックス、発電機が高度に統合されており、自社の18MW洋上風力タービンと比較して、トルクが67%増加、風力タービンの振動は36.8%減少、温度上昇は5.9%減少しているという。

風速8m/sを超える中風速から高風速の海域向けに設計。年間平均風速10m/sの場合、1台で100GWhの年間発電電力量が見込まれている。

100GWhという年間発電電力量について、東方電気の掲載情報では ”一般家庭5万5000世帯の年間電力需要を満たすことができる” と記載されています。この数値から中国の一般家庭1世帯あたりの年間電力量を計算すると、100GWh÷55,000世帯=0.00182GWh=1.82MWh=1,820kWhとなる。

日本の環境省が発表している令和3年度の1世帯当たりが消費した電力量は4,175kWh。中国と日本で世帯当たりの電力消費量にかなりの差があるようです。風力タービンの性能を大きく見せるためにあえて小さな数値で計算しているのか、東方電気の掲載情報で採用している数値が古いだけなのか、平均すると1世帯あたり1,820kWhくらいになるのか、実際のところはよく分かりません。

世帯当たり年間エネルギー種別消費量(固有単位)および支払金額(令和3年度)
出典:環境省ホームページ

(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/energy/detail/01/)
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