中国の広東省にある南澳島の沖合に建設中の華能汕頭勒门(2) 洋上風力発電所で行われているモノパイル設置作業。設置を行うのは4,600トン吊りクレーン船「冠盛一航」。設置するモノパイルは長さ93.3m、重量1,732トン。建て込み、打設には杭安定化プラットフォームと呼ばれる補助設備を使用。
4,600トン吊りクレーン船による1,732トンのモノパイル設置
中国南東部の広東省 汕頭市にある南澳島の沖合に建設中の華能汕頭勒门(2) 洋上風力発電所(Huaneng Shantou Lemen (II) offshore wind farm)。11MWの風力タービン54基を設置する計画で総出力は約600MW。事業費用は約82億元、日本円に換算すると約1,600億円(1元=19.5円として換算)。2023年9月までに完成予定。
設置するモノパイルは長さ93.3m、重量1,732トンとかなりの大きさ。設置作業を行うのは、4,600トン吊りクレーン船「冠盛一航」(GUAN SHENG YI HANG)。2021年8月に完成したばかりで新しい船ですが、DPS非搭載で非自航式、そしてパイルグリッパーも無いというクレーン船。そんな作業船で巨大モノパイルの打設を行うために”杭安定化プラットフォーム”と呼ばれる補助設備を使用している。
杭安定化プラットフォーム
パイルグリッパーの無いクレーン船を使用して油圧ハンマーによるモノパイル打設を行う方法として”杭安定化プラットフォーム”と呼ばれる巨大なガイド材を使用していました。
2022年12月に中国の江蘇省南通市で製造された”杭安定化プラットフォーム”は、高さ75m、重量は補助杭なども含めると2,800トン。ジャケットの様な形状で海底に置いた時に自立し、自重で埋まり込まないように底面が少し拡幅されているのが分かる。さすがにそのまま置いただけではモノパイルを建て込んだ時に支える事は難しいので、4隅に杭を打ち込んだ状態で使用。
モノパイル打設後に”杭安定化プラットフォーム”は、撤去し転用するので4隅に打ち込んだ杭を引き抜くために、クレーン船の甲板上には大型のバイブロハンマーが積み込まれていました。
別の画像に映っている甲板上の大型バイブロハンマーには「EP1600」という型番が確認できました。
「EP1600」は、上海振中建机科技有限公司など数社が共同で開発した大型バイブロハンマー。スペックは、モーター出力1,200kW、偏心モーメント10,983N・m、全体重量96トン。
非効率な施工方法をなぜ採用?
この”杭安定化プラットフォーム”を使用したモノパイルの打設は、事前の準備作業に費やす時間が多くかなり非効率的な感じがしますが、なぜ中国はこの施工方法を採用しているのでしょうか。
重量2,000トン近いモノパイル打設を現状のSEP起重機船で施工するのが難しいのか、既存のクレーン船を利用するための方法として採用しているのかは分かりません。ただ、風力タービンの大型化に合わせて着床式の基礎となるモノパイルもそれに合わせてどんどん巨大化。海底地盤の条件にもよりますが、モノパイルを建て込んだ時に自沈量が少ない場合、船上のパイルグリッパーで巨大なモノパイルを保持する状況は不安定な気もします。
”杭安定化プラットフォーム”を使用する利点として、浮いている船上とは違い固定されているので動作補償機能が不要で、クレーン旋回時の船体傾斜を考慮する必要が無くなるなどが考えられる。船上に設置するパイルグリッパーに比べると構造が単純で様々な要因に縛られないという点では扱いやすいのかもしれない。
今回の施工に限らず、以前から中国では同じような方法でモノパイル設置作業が行われています。
4,600トン吊りクレーン船「冠盛一航」
2021年8月に完成したクレーン船「冠盛一航」(GUAN SHENG YI HANG)。
船体寸法は、全長168.5m、幅51.8mで、4,600トン吊りのクレーンを搭載し、最大揚程は125m。メインフック2基と補助フック1基があり、巨大なモノパイルを自船のクレーンのみで建て起こし可能。推進装置は搭載されておらず、非自航式でDPSも非搭載。
洋上風車基礎のモノパイル設置や洋上変電所の設置、洋上油田やガス田などのモジュール設置作業が主な使用目的。
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