5,500トン吊り起重機船「二航卓越」竣工
2024年9月13日、上海振华重工(ZPMC)が中交第二航務工程局有限公司向けに建造していた5,500トン吊りの起伏式起重機船「二航卓越」(Er Hang Zhuo Yue)の竣工式がおこなわれました。
中国にいる同種の起伏式起重機船の中で5,500トン吊りというクレーン能力は国内最大。世界的に見ても韓国の10,000トン吊り起重機船「HYUNDAI-10000」、8,000トン吊り起重機船「SAMSUNG 5HO」に続いて3番目。
メインジブは2基搭載されていますが、バックタワーが1つというデザインが斬新。各ジブにはそれぞれ2基のメインフックを装備、加えてジブ先端に補助フックがあり、揚程やアウトリーチで有利となる実用的な仕様。
竣工後は、建設が進められている浙江省の杭州湾横断鉄道橋で稼働が予定されており、将来的には福建省厦門市の橋梁建設作業に従事する予定。
起重機船「二航卓越」の概要
出典:龙船风电网
船名 | 二航卓越 |
クレーン能力 | 5,500トン |
揚程 | 130m |
長さ | 165m |
幅 | 52m |
深さ | 11m |
設計喫水 | 6.5m |
エアドラフト | 47m(最小) |
スラスター | アジマススラスター:2,000kW×2基 サイドスラスター:600kW×2基 |
起重機船「二航卓越」の船体寸法は長さ165m、幅52m、深さ11m。起伏式のジブ2基を搭載しており、最大吊り上げ能力は5,500トン。エアドラフト47m、最低喫水4.5mという特長があり、ジブを倒した状態にすると水面からの高さを47mに抑えることが出来る。これにより、通常の状態では通航できない桁下制限の橋を通過することが可能になり、川の上流側で橋梁工事の橋桁設置作業などを施工できる範囲が広がるというメリットがあります。
そして、注目すべきは2,000kWのアジマススラスター2基と800kWのサイドスラスター2基を備えているという点。竣工式を報じる中国メディアの情報では自航式・非自航式についての説明は記載されていないため、よく分かりません。日本でもスラスターを搭載しているクレーン船はいますが、一部の自航船や近年建造されたSEP船を除き、ほとんどが係留または係留補助として使用されており、推進装置としては使用していない。
起重機船「二航卓越」が自航式の可能性もありますが、潮流の強い施工場所の係留補助などで使用が想定されていることも考えられる。例えば、2,000kW(2,719PS)のアジマススラスター(全方位スラスター)2基を曳航するタグボートとして考えると、起重機船「二航卓越」を5,438PSのタグボート1隻で曳航することになる。無理ではないかもしれませんが、少し厳しいような印象・・。スラスターを搭載していますが、非自航式で係留補助としての使用というのが妥当なのかも。
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