2,500トン吊りSEP船「SEAWAY VENTUS」完成・引き渡し
2023年11月末、中国の招商局重工(CMHI)で建造していたSeaway7の2,500トン吊りSEP起重機船「Seaway Ventus」が完成し、引き渡しがおこなわれました。
SEP起重機船「Seaway Ventus」のAIS情報によると、11月28日に建造場所である中国の江蘇省南通市を出発し、現在は南シナ海を11ノットの速力で航行していました。完成後の予定として、ドイツ沖合で建設が進められている「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」で Siemens Gamesa の11MW風力タービン「SG 11.0-200 DD」設置作業が入っています。そしてもう一つ、現場作業ではありませんがHuismanに発注しているモノパイル設置機材の受け取りがオランダのスヒーダムで予定されています。Huismanへ発注している機材はパイルグリッパー、建て起こし用フレーム、2セットのモノパイル保管クレードル。
初作業となる「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」でおこなうのは風力タービン設置なので、スヒーダムへ寄らない可能性もありますが、SEP起重機船「Seaway Ventus」の目的地は不明。ただし、ヨーロッパへ向かう航行経路は全長109mのレグを搭載しているため、スエズ運河を通航することは出来ない。したがって、アフリカ大陸南端の喜望峰を通るルートを選択することは間違いなさそう。
中国からヨーロッパまで約2ヵ月
中国からオランダまでの航行距離は約27,000km、約14,500海里。12月2日時点で約1,900km、約1,000海里を航行した位置にいるので残る距離は約25,000km、約13,500海里。残る距離を平均10ノットで航行した時の所要時間は、1,350時間≒56日≒2ヵ月。なので2024年1月末頃にオランダ付近に到着する予定になりますが、どこかで燃料補給や食料の調達などをおこなうと考えると、もう少し時間がかかる可能性はありそう。
名称 | パナマ運河 | スエズ運河 |
船の長さ | 366m | 制限無し |
高さ制限 | 57.91m | 68m |
喫水 | 18m | 20.1m – 12.2m |
幅 | 51m | 50m – 77.5m |
「BLUE WIND」とほぼ同仕様のSEP船「SEAWAY VENTUS」
「Seaway Ventus」の船体設計を手掛けているのは、GustoMSC。日本のSEP船でも多く採用されており大林組・東亜が建造した「柏鶴」を除く全船、といっても3隻だけですが「CP-8001」「CP-16001」「BLUE WIND」で採用されています。
「Seaway Ventus」に搭載されているクレーンは、2,500トン吊りで「BLUE WIND」と同じ吊り上げ能力。そして、大きな特徴となるジブが伸縮するテレスコピッククレーンという点でも両船は同じ仕様となっている。
違いはジブ拡張時の能力
船名 | Seaway Ventus | BLUE WIND |
クレーン能力 | 2,500トン | 2,500トン |
揚程(ジブ格納) | 116.5m (2,500トン) | 116.5m (2,500トン) |
揚程(ジブ拡張) | 156.0m (1,600トン) | 158.5m (1,250トン) |
長さ | 142m | 142m |
幅 | 50m | 50m |
深さ | 11m | 11m |
レグ長さ | 109m | 90m(最大109m) |
DPS | DP2 | DP2 |
最大乗船人数 | 130人 | 130人 |
2隻の船体寸法には、ほとんど違いが見られない。少し違うのは搭載しているテレスコピッククレーンを伸ばした拡張時の能力。「Seaway Ventus」は揚程156.0mでクレーン能力1,600トンに対して、「BLUE WIND」は揚程158.5mでクレーン能力は1,250トン。
2,500トン吊り自航式SEP起重機船「Seaway Ventus」
船名 | Seaway Ventus |
クレーン能力 | 2,500トン |
揚重高さ(2,500トン仕様) | 116.5m |
揚重高さ(1,600トン仕様) | 156.0m |
長さ | 142m |
幅 | 50m |
深さ | 11m |
喫水 | 6.2m |
デッキスペース | 4,600m2 |
レグ長さ | 109m |
最大作業水深 | 65m |
アジマススラスター | 3,500kW×3 |
トンネルスラスター | 3,000kW×3 |
最大航行速度 | 10ノット |
宿泊設備 | 130名 |
DPS | DP2 |
- 2021年11月First Steel Cutting Ceremony 鉄鋼切断式
中国の江蘇省にあるCMHI(China Merchants Heavy Industry)で建造開始
- 2022年6月Keel Laying Ceremony 起工式(キール敷設)
- 2023年1月Launching 進水式
- 2023年3月メインクレーン設置完了
- 2023年7月傾斜試験完了
- 2023年11月Delivery 完成・引き渡し
SEP起重機船「Seaway Ventus」に関する記事
「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」の概要
デンマークのØrstedによって開発が進められているドイツの着床式洋上風力発電所「Gode Wind 3」と「Borkum Riffgrund 3」。ともに2023年夏の着工が予定されており、風力タービンはSiemens Gamesaの出力11MW「SG 11.0-200 DD」を合わせて106基設置する。運転開始の予定は規模の小さい「Gode Wind 3」(242MW)が2024年、「Borkum Riffgrund 3」(900MW)が2025年となっている。
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