契約総額546億円、完成間近だったMaerskの風力設置船契約解消

契約総額546億円、完成間近だったMaerskの風力設置船契約解消 洋上風力発電
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契約総額546億円、完成間近だったMaerskの風力設置船契約解消

出典:Maersk Offshore Wind

2025年10月10日、SeatriumMaersk Offshore Wind向けとなる風力設置船(WIV,Wind Installation Vessel)の建造について契約解除通知を受領したと発表。

契約がおこなわれたのは、およそ3年半前の2022年3月23日。当時、Sembcorp Marineのグループ子会社であるSembcorp Marine Rigs & Floaters(現Seatrium Energy International)が契約締結し、契約総額は約4億7,500万米ドル、契約締結当時の為替相場で換算すると約546億円(1ドル=115円として換算)。

完成間近での解約通知、Seatriumは有効性について審査中

建造中の風力設置船は、Equinorがアメリカで進める洋上風力発電所「Empire Wind 1」に配備予定となっていることから、プロジェクトの事業者であるEquinorの子会社でアメリカに本拠を置くEmpire Offshore Windと協議の上、実行可能な解決策を検討するという。

アメリカのジョーンズ法に対応した機能を搭載しているという今までにない珍しい仕様が特長のMaersk Offshore Windの風力設置船は、2022年10月に鉄鋼切断式(First steel cutting)がおこなわれ建造開始。2025年4月には船体進水がおこなわれ、その後、1,900トン吊りメインクレーンや専用輸送船をドッキングする画期的なロックシステム設置が進められ、2025年10月10日の時点で建造プロジェクトは約98.9%完了。完成間近という状態。

約546億円という高価な作業船を完成間近でキャンセルすることは尋常でない。相応の理由があると思いますが、Seatriumは解約通知の有効性および記載されている申し立てについて審査中であるとした上で、解約通知に異議を申し立てる権利、および不当な解約に対するあらゆる救済措置を求めるための法的手続きを開始する権利を含め、契約に関する法的および商業的選択肢について検討を進めていると述べています。

汎用性がある一般的なSEP起重機船であれば他に買い手がつく可能性もありそうですけど、Maersk Offshore Windの風力設置船はジョーンズ法に対応したクセ強な仕様であるため、難しいのかもしれません。ユニークな施工方法は興味深いので、どうにか折り合いをつけて活躍する姿を見てみたい気持ちですが、どうなってしまうんでしょうか。今後の進展に注目。

Maersk Offshore Windの風力設置船

Maersk Offshore Windの風力設置船は、アメリカのジョーンズ法に対応した機能を搭載しているという今までにない珍しい仕様のSEP起重機船。船尾側にコの字型の切り欠きが設けられており、その部分にジョーンズ法に準拠した専用輸送船を係留して必要な部材を輸送。輸送船上のトレイに積まれた風力タービン部材をトレイごとリフトアップして荷受けするという仕組み。

風力設置船の船体寸法は長さ143m、幅83.2m、深さ11m。メインクレーンの最大吊り上げ能力は1,900トンで揚程180m(甲板上)のメインフックに加え、揚程190mの300トン吊り補助フックを備えている。

船名未発表
クレーン能力1,900トン
揚程180m
長さ143m
83.2m
深さ11m
レグ長さ118m
スラスターアジマス 4,300kW×6基
トンネル 900kW×2基
DPSDP2
速力7ノット
甲板面積4,000m2
甲板強度7.5トン/m2
宿泊設備100人
船籍デンマーク
貨物押し込み・昇降システム(Cargo pushdown/Elevation system)
  • 貨物昇降時の最大重量:5,000トン
  • バージ押し込み量:2m
  • 押し込み容量:9,200トン(アクティブ)14,400トン(パッシブ)
  • ジャッキ数:4基

Maersk Offshore Windの風力設置船で使用する専用輸送船は、アメリカのボリンジャー造船所(Bollinger Shipyards)で建造され、2026年に引き渡し予定。建造予定のタグボート2隻とバージ2隻については、Edison Chouest Offshore(ECO)が所有・運航をおこなうことが発表されています。Maersk Offshore Windのウェブサイトにはタグボートとバージの詳細情報がArticulated Tug/Barge(連結式タグ・バージ)として掲載されており、押船方式で連結した上でDPS-2の自動船位保持能力を有している。バージへの電力供給はタグから有線ケーブルによりおこなわれる仕組み。船体寸法などの要目は以下の通り。

船種Barge
載貨重量トン数7,044トン
長さ68m
36m
深さ12m
スラスターアジマス 1,350kW×2基
トンネル 1,400kW×1基
DPSDPS-2
(タグ・バージ連結時)
速力6ノット
(タグ・バージ連結時)
船籍アメリカ
船種Tug
総トン数200トン未満
長さ43.3m
13.4m
深さ7.5m
スラスターアジマス 2,500kW×2基
DPSDPS-2
(タグ・バージ連結時)
速力6ノット
(タグ・バージ連結時)
船籍アメリカ
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