騒音軽減システム「NMS-T-10000」MP設置に向け運搬開始
2024年5月1日、Heerema Marine ContractorsはIQIPと共同で開発した騒音軽減システム(Noise Mitigation System)「NMS-T-10000」が輸送台船への積み込みを終え、モノパイル設置に向けてオランダからの輸送を開始したとLinkedInへの投稿で発表。
投稿内容によると、輸送台船「H-542」が輸送を開始したのは4月29日朝で、目的地はノルウェーのスタバンゲル(Stavanger)だという。IQIPの発表情報によると、騒音軽減システム「NMS-T-10000」が輸送台船に積まれたのは1カ月以上前の3月22日のことで、その後、同輸送台船上にはモノパイル打設に使用するIQIPの油圧ハンマー「IQ6」も合積みされています。
騒音軽減システム「NMS-T-10000」
騒音軽減システム「NMS-T-10000」の重量は約2,500トン、高さ50m、テンプレートベースの幅は45m。直径10mまでのモノパイルに対応し、打設時に発生する水中騒音を軽減させるという効果に加えて、最大傾斜3度までモノパイルの鉛直性を保持するというレベリング機能を備えている。
輸送台船「H-542」は長さ165m、幅42m、深さ10.7m、載貨重量トン数(Deadweight)41,177トン。積み込みが終わった上空からのドローン映像では、「NMS-T-10000」のベース部分両側が台船から少しはみ出しているのが確認できます。台船幅42mに対して「NMS-T-10000」は45m。
騒音軽減の仕組みとしては、モノパイルを挿入する中央部分の排水をおこない、空気の障壁をつくることで周囲の水中へ騒音が伝わらないようにするというもの。なので、全体を水没させて使用することはできないようで、高さ50mに対して使用可能水深は42mとなっている。さらに、IQIPのウェブサイトで掲載されている情報によると、外周部分にマルチサイズの気泡を注入するバブルシステムも備えており、この効率的な方法によって水中騒音を最大98~100%軽減すると述べている。
初配備が予定されているドイツ沖の「He Dreiht Offshore Wind Farm」では、モノパイル打設に最大6,600kJという打撃エネルギーを発揮する世界最大の油圧ハンマー「IQ6」を使用。合わせて打設時の負荷と騒音を低減する「PULSE」(Piling Under Limited Stress Equipment)を組み合わせたものが使われるという。
興味深い騒音軽減システムを搭載した「NMS-T-10000」ですが、モノパイル建て込み装置という機能も大きな特長のひとつ。フローティングクレーンでモノパイルを打設する場合、パイルグリッパーを使用すると波浪による船体動揺を抑制する動作補償機能が必要になりますが、海底面に設置する「NMS-T-10000」だと船体動揺の影響を排除して作業することが可能。打設時は油圧ハンマーをモノパイルに預けた状態で施工するため、完全に船体動揺の影響を受けないことから施工精度や効率など期待される効果は大きいと言えそう。
「NMS-T-10000」を使用するクレーン船
Heerema Marine Contractorsに掲載されている施工イメージで「NMS-T-10000」を使用しているのは14,200トン吊りの「Thialf」。
モノパイルを設置する洋上風力発電所「He Dreiht Offshore Wind Farm」はドイツ沖合の北海に位置していますが、「NMS-T-10000」を積んだ輸送台船「H-542」が向かっているのは、ノルウェーのスタバンゲル。施工場所から離れた場所へ輸送する目的は、そこで準備作業をおこなうためだと思われる。
ノルウェーのスタバンゲル付近でAIS情報を確認すると近くに「Thialf」は確認できましたが、他に「Sleipnir」も停泊していました。どちらで施工するのかは分かりません。
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