中国が洋上風力発電容量で世界一に

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イギリスを抜いて中国が世界一に

WFO(World Forum Offshore Wind)「世界洋上風力フォーラム」が2022年2月17日に発表したレポート「Global Offshore Wind Report 2021」によると、中国の洋上風力発電容量がイギリスを抜いて世界1位になったそうです。

 レポートによると、2021年末時点で洋上風力発電容量の世界第1位は中国で19.7GW、第2位はイギリス 12.3GW、第3位はドイツ 7.7GW、第4位はオランダ 3.0GW、第5位はデンマーク 2.34GW、第6位はベルギー 2.26GWとなっている。

WFOとは?

WFOWorld Forum Offshore Wind)「世界洋上風力フォーラム」とは、洋上風力発電の世界的な普及に向け、洋上風力発電に関する情報収集・発信や各国の政府関係者への理解活動等を行うNPO組織

2018年にドイツで発足。現在、洋上風力発電に携わる事業者に加え、金融、法律、保険等の分野からグローバル企業・団体が参加している。

レポートのリンク先:WFO | Global Offshore Wind Report 2021(PDF形式)

日本の順位は?

 気になる日本はというと、第11位 85MW(0.085GW)。トップクラスとは桁が違いました。

 国内初の商用風力発電事業である「秋田洋上風力発電」は発電容量およそ140MWですが、まだ建設中なのでカウントされていません。

 日本と中国以外のアジアの国でトップ10にランクインしているのは韓国、台湾、ベトナム。それぞれの順位は第7位に台湾 237MW、第9位に韓国 104MW、第10位にベトナム 99MW

 中国とヨーロッパ勢のTOP6とそれ以下で差が非常に大きいです。7位以下の国は洋上風力事業にこれから本格参入していくといった感じ。

 あれ、アメリカは?

 アメリカは第13位 42MW。アメリカも日本同様、洋上風力発電事業をこれからスタートさせようとしている段階。ですが、アメリカには「ジョーンズ法(Jones Act)」と呼ばれる法律があり、洋上風力発電事業の初期段階で障害になっている。

ジョーンズ法(Jones Act)

ジョーンズ法(Jones Act)

ジョーンズ法(Jones Act)とは?

ジョーンズ法(Jones Act)とは米国内の地点間の物品の輸送を行う船舶は米国船籍で、

  1. 米国人配乗
  2. 米国人所有
  3. 米国建造 ← ココが問題

でなければならない、という法律

 国内輸送(内航)を自国籍船に留保するカボタージュ(Cabotage)制度は国際慣行として日本を含む多くの国で実施されている。

 日本では沿岸輸送について、船舶法第3条の規程に基づき、「法律若しくは条約に別段の定めがあるとき、外国籍船舶は海難若しくは捕獲を避けようとするとき又は国土交通大臣の特許を得たとき以外は、日本国内の港間における貨物又は旅客の沿岸輸送を行なうことが出来ない」とされています。

 米国のジョーンズ・アクトで問題とされるのは他国のカボタージュ制度にはない「国内建造」要件

中国の驚異的な成⾧

 予想はされていましたが、中国の驚異的な成長を数字で見るとあらためてその成長が分かります。

 冒頭でも書きましたが、2021年末時点で、中国の洋上風力発電容量は19.7GW。これに対して全世界の洋上風力発電容量は48.2GW。なんと、全世界の洋上風力発電設備の内、40%以上が中国に設置されているという事を示しています。

 次に全世界における洋上風力発電容量の年間増加量を見ると、2016年までは年間1~4GW、2017年~2020年は年間5GW前後の増加量だったのに対して、2021年に完成した洋上風力発電容量は、15.7GW。前年までの5GW前後と比べても3倍以上の成長率。

 2021年の年間増加量 15.7GWの内、中国だけの年間増加量は12.7GW、なんと世界の発電容量増加量の80%を占めています。逆に中国以外の増加量を見ると3GWなので、増加量的には例年並み又は微減くらい。

年間増加量12.7GWはスゴイ

 中国が記録した2021年の1年間で設置した洋上風力発電容量12.7GWという数字。これがどれだけスゴイ事なのか?

 日本政府の導入目標と比べると分かり易い。

政府は、年間100万kW程度の区域指定を10年継続し、2030年までに1,000万kW、2040年までに浮体式も含む3,000万kW~4,500万kWの案件を形成する。

第2回 洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会 2020年12月15日 | 経済産業省

 ここで表記されている単位が違うので、分かり易くするために”万kW” → ”GW”に換算すると以下のような数字になります。

 ”政府は、年間1GW程度の区域指定を10年継続し、2030年までに10GW、2040年までに浮体式も含む30GW~45GWの案件を形成する。”

 ほら、中国やばいでしょ。

 とりあえず日本政府が10年間で達成しようとしている目標を1年間であっさりクリア。なんなら日本政府が掲げた2040年までに30GW~45GWという目標もあと2年くらいで達成する勢い。

 日本とは様々な条件が違うので一概には言えない部分がありますが、中国の記録した数字は単純にスゴイものだという事が分かります。ただ、中国の急成長している理由を調べると今後も同じ勢いで成長を続けることは難しそうだということも分かります。

FIT価格による優遇が無くなる?

 これまでは2014年に中国政府が打ち出したFIT価格による優遇があったようですが、2019年から補助金の縮小、2020年以降の新規プロジェクトは中央政府の補助対象から除外されているようです。これまでの成長スピードを今後も維持できるかは微妙なところのようです。

FIT価格とは?

 FIT価格とは、固定価格買い取り制度Feed-in Tariff)のことで、エネルギーの買い取り価格を法律で定める方式の助成制度。固定価格制度、フィードイン・タリフ制度、電力買い取り補償制などとも呼ばれる。

 地球温暖化への対策やエネルギー源の確保、環境汚染への対処などの一環として、主に再生可能エネルギー(もしくは、日本における新エネルギー)の普及拡大と価格低減の目的で用いられる。設備導入時に一定期間の助成水準が法的に保証されるほか、生産コストの変化や技術の発達段階に応じて助成水準を柔軟に調節できる制度である。適切に運用した場合は費用当たりの普及促進効果が最も高くなるとされる。世界50カ国以上で用いられ、再生可能エネルギーの助成政策としては一般的な手法となっている。その一方、買い取り価格の設定次第で過大な設置や利用家庭の負担が増大する危険性がある。

現在、建設中の洋上風力

現在、建設中で最大の11MW風車(SG 11.0-200 DD)
出典:Siemens Gamesa

 WFOのレポート「Global Offshore Wind Report 2021」には各国と世界全体の年間増加量、発電容量の累計データに加えて、2021年末までに着工された洋上風力発電容量についてもデータがあります。

 日本の「秋田洋上風力発電」も前者のデータにはカウントされていませんが、着工しているので後者のデータにはしっかりカウントされています。

世界で48の洋上風力発電所を建設中

 2021年に建設が始まった洋上風力発電設備は全世界で48件、発電容量の合計は17GW

 「秋田洋上風力発電」もこの48件の中にカウントされてました。”Akita Port”と”Noshiro Port”の2件に分かれて表記されてます。日本でカウントされてるのはこれだけ。なので建設中の洋上風力発電容量、日本は140MW

 建設中の発電容量が最も多いのは中国で33件で8GW。2番目以降はイギリス 3GW、台湾 2.5GW、オランダ 2.2GW、フランス 1GW。日本は6番目。

 レポートによると2021年に商用風力発電事業を開始した国は日本、フランス、イタリアの3ヶ国。中国、イギリス、ドイツの3強を除けば、これから洋上風力発電事業を成長させようと各国頑張っている感じかな。

洋上風力のこれからを予想

 ここから先はWFOのレポートとは無関係の個人的な意見。

 中国の急成長はいつまで続くのか?

 FIT価格による政府の補助が無くなり、中国国内での洋上風力事業が減少に転じるのは早そうな気がします。2021年の成長スピードが異常なだけに、収束していくのもあっという間かも。

 ですが、中国では現在もSEP起重機船だけでなく洋上風力事業に特化した作業船の建造ラッシュは継続。作業船だけではなく、海底ケーブル・変電設備の製造や風力タービンメーカーも国内に数社あるので、中国国内の風力事業が減少に転じると国外に需要を探すのは必然なのではないかと。

 そうなると、韓国や台湾も近いですが、圧倒的な潜在事業ポテンシャルを持つ日本の市場も狙われてしまいそう。

 中国製のSEP起重機船で中国製の風車を日本で建設。これなんか嫌ですよね?

 そうならないようにするには、中国の成長スピードが減少する前に日本の国内企業が洋上風力発電事業を完遂できる程に成熟し、国内市場の需要を満たす技術と設備を保有することだと思いました。

 勝手な推測ですが、以上の点から国内の洋上風力事業に携わる方々を応援してます。

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