海上輸送によるガザ支援に向けて全長500mを超える桟橋の建設開始
2024年4月25日、米国防総省は人道支援物資をガザへ海上輸送するための仮設桟橋建設を開始したと発表。
米国防総省が管理・運営するDefense Media Activity(DMA)の掲載情報によると、桟橋建設は5月初旬に完了する予定。完成後、初期の運用ではトラック約90台分の輸送能力が想定されており、完全に運用が開始されると最大でトラック約150台分の輸送が可能になるという。
建設する仮設桟橋は、モジュール式セクションで構成され約1,800フィート、約550mという長さ。World Central Kitchenによるガザへの海上輸送で応急的に建設した桟橋よりも長いと思われる。延長が長い事に加えて、小型台船を連結した構造により船舶を着桟する海側の水深は十分確保できそう。少し大変そうだなと思うのは、陸側の取り合い部分をすりつける作業と設置時の桟橋自体を係留する作業でしょうか。しかしながら、これまでの実績を考慮すると、通常通り作業が出来る環境であれば造作もない作業。
DMAの掲載情報によると、ガザ側へ設置する1,800フィート(約550m)の仮設桟橋の他に、幅72フィート(約22m)、長さ270フィート(約82m)のロールオン・ロールオフ(Ro-Ro)施設も建設。このRo-Ro施設は、ガザの海岸から約3マイル沖に留まり、貨物船が運んできた支援物資を荷おろしするために使用されるものだという。
仮設桟橋の資機材を運搬した「ROY P.BENAVIDEZ」
出典:U.S. Navy
出典:U.S. Army Central
建設を開始した仮設桟橋およびRo-Ro施設の部材を運搬したのは全長290mの「ROY P.BENAVIDEZ」。ランプウェイを搭載したRo-Roタイプ。「ROY P.BENAVIDEZ」は仮設桟橋建設用の資機材を積み込み、2024年3月15日にバージニア州のニューポート・ニューズを出港していました。
「ROY P.BENAVIDEZ」は2003年から2022年まで米海軍に就役し、現在は軍事海上輸送司令部(Military Sealift Command)との契約の下で民間企業によって運営されているため「MV ROY P.BENAVIDEZ」と紹介されており、商船を意味する ”MV”(Merchant Vessel)という艦船接頭辞が用いられています。
「ROY P.BENAVIDEZ」のAIS情報を見てみると4月25日で位置情報の受信は途絶えていますが、ガザ沖の海上にいることが確認できました。
出典:MarineTraffic
ガザへの陸上部隊駐留はないことを強調
人道支援物資の海上輸送という今回の作戦は、イスラエル国防軍と連携した上でおこなわれていますが、計画発表当初から一貫してガザへの米軍陸上部隊の駐留はないとされており、このたびの桟橋建設発表時も ”no U.S. boots will be on the ground in Gaza as part of the operation”(作戦の一環としてガザの地上に米軍の軍靴が配備されることはない。)と強調されています。
仮設桟橋設置に選んだガザ地域周辺の安全保障環境は、任務の遂行を支援するのに十分であると評価されていますが、刻々と変化する状況に対して日々再評価をおこなっているという。そして、今回の任務に限らず全ての任務で共通することですが、アメリカ中央軍(U.S. Central Command)の司令官は安全状況に基づいてJLOTS(Joint Logistics Over-the-Shore:陸上共同物流)建設を進めるかどうかについて日々最終決定を下している。
この辺りの任務にあたる姿勢が垣間見えると非日常的な状況下での任務であることを再認識させられます。一般的な港湾土木作業とは訳が違う。
桟橋建設の完了が間近にせまる中、キプロスでは海上輸送に向けた貨物の準備が開始されているそうです。
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