崩落した橋の重量でコンテナ船「DALI」は座礁している状態
アメリカのメリーランド州ボルティモアに架かるフランシス・スコット・キー橋の橋脚にコンテナ船「DALI」が衝突した事故。崩壊した橋の残骸を撤去するためクレーン船が現場に到着し、封鎖されている航路を一刻も早く再開すべく作業がおこなわれています。
撤去作業をより困難にしているのは、コンテナ船「DALI」の船首部分を覆っている橋桁。片側は海底に着底しているので全ての橋桁重量がコンテナ船にかかっている訳ではありませんが、関係している橋桁部分の重量は数千トンにもなるそうです。
そして、船首部分に橋桁の重量が掛かっている影響でコンテナ船「DALI」の船首は海底に着底し、座礁しているという。確かに、言われて見ると不安定な状態で橋桁が載っているにも関わらず、ここ数日間で動いている様子はない。座礁している船首部分の船底に今のところ大きな損傷を示す兆候は確認されていない模様。
橋桁撤去時に船体が浮上すると想定外の動きをする可能性
橋桁の重量で船首部分が座礁しているということは、橋桁を撤去すると船体浮力が解放され、船体が浮き上がる。浮上した船体が動いてしまうと、それまで釣り合い安定していた部分も不安定になり想定外の動きをする事も考えられる。
コンテナ船の船首にある残骸を撤去しても座礁状態を保持するというのも対策の1つとして考えられますが、バラスト調整などで出来るのか不明な上に、負荷をかけるタイミングによっては座礁している船底に大きな損傷を与える可能性もある。
どのような方法で撤去作業を進めていくのか、今後も注目。
水面下の残骸は海底に埋まり込んでいる
残骸の撤去作業は、動員されているクレーン船で吊り上げ可能な大きさに切断しながら進められています。その作業は水面上に見えている部分でも足場が無いため、ゴンドラに乗って切断を実施。大変な作業ですが、視界の悪い水中での撤去作業はさらに困難。
橋の残骸は水中で複雑に絡み合い、下側は柔らかい海底面に埋まり込んでいるため、不安定な状況により切断撤去時の人的リスクが非常に高くなるという。
水中部分の調査についてはソナーによる3Dスキャンなどで全体像を正確に把握する取り組みがおこなわれていますが、実際に現場で作業する潜水士は視界が悪くほぼ暗闇といった厳しい条件におかれているのが現状。
そんな中、フランシス・スコット・キー橋の事故対応をおこなっている統合司令部は、人的リスクを考慮した上で切断しなくても撤去することが出来る作業船動員の可能性について言及しています。
切断しなくても橋桁を撤去できる作業船。一体なんだろう?
「Golden Ray」を撤去した「VB-10000」
出典:Wikipedia | By Bureau of Ocean Energy Management – SP-57 A to WD-89 on flickr, Public Domain, Link
出典:Versabar
千トン級の吊り上げ能力があり、玉掛け不要で残骸を引き揚げられることから大型の浚渫船という可能性が高いような気がしますが、真っ先に思い浮かんだのは「VB-10000」。可能性は薄いと思いますけど・・。
「VB-10000」は特殊な形状をしており、2つの台船をまたぐ様にアーチ状の門型クレーン2基を搭載。2つの台船寸法はそれぞれ長さ84m、幅22mで、揚重をおこなうスペースとなる台船と台船の間は49m。1,000馬力の格納式アジマススラスター8基を装備しており、DPS-3搭載。ボルティモアの現場では水深が浅いので格納式スラスターは使用できないかも。
吊り上げ能力は最大6,800トンですが、今回の橋桁撤去に適しているClaw(爪)を装備した状態では爪1基当たり2,700トン。爪の自重が約900トンあるので実際に引き揚げられる重量は、1,800トン×2基=3,600トン。
「VB-10000」は、2020年から2021年にかけてアメリカのジョージア沖で転覆した全長約200mの自動車運搬船「Golden Ray」の引き揚げに従事した実績があります。
暫定の代替航路を設定
2024年4月2日までにコンテナ船「DALI」が鎮座する橋の中央部分から見て北側と南側に2つの暫定代替航路が設定され、船舶の通航が再開しています。
4月1日に橋の北側で開通した最初の暫定航路は日中のみの使用に制限されており、航路の制限寸法はそれぞれ幅80.5m、桁下高さ29m、水深3.35m。
そして4月2日、2番目に開通した南側の航路は幅85.3m、桁下高さ37.8m、水深4.27m。こちらも日中のみに使用が制限されています。
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