モーリシャスでの「わかしお」座礁事故 スマホ電波が最大の原因

事件・事故

 2022年6月30日、国土交通省の運輸安全委員会は、 ”貨物船WAKASHIO乗揚事故に係る船舶事故調査について” 経過報告を公表した。

 その中で、現時点での事故発生状況の分析が記載されていますが、最大の原因はモーリシャス島に接近することで、スマホを通信可能な状態にしようとしたこと。

 何とも情けない。

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貨物船「WAKASHIO」座礁事故

 2020年7月25日19時25分頃(モーリシャス時間)、モーリシャス共和国のモーリシャス島南東部の浅瀬に貨物船「WAKASHIO」が乗り揚げた。

事故の経緯

事故の経過
  • 2020年
    7月14日
    貨物船「WAKASHIO」シンガポール港出港

    目的地は、ブラジルのトゥバラン港

  • 7月25日
    モーリシャス島南東部の浅瀬に座礁

    座礁の際に船体を損傷

  • 8月6日
    右舷側に深刻な座屈が発生し、燃料が海上に流出

    流出した燃料油(C重油)は約1,000トン

  • 8月7~12日
    「WAKASHIO」に残っている燃料油汲み出し作業

    3隻のタンカーにより汲み出された燃料油の合計量 約3,193トン

  • 8月15日
    船首部が船尾部から完全に分離し、船体が2つに分断
  • 8月19~24日
    船首部撤去作業

    作動油等の有害物質を除去した上で、海没処分

  • 船尾部撤去作業

    2021年2月17~2022年1月16日

事故の原因

 運輸安全委員会の経過報告では、事故発生状況の分析(現時点)として事故につながる要因を3点挙げている

事故発生状況の分析(現時点)
  • モーリシャス島付近海域の詳細な海図等を入手していなかった
  • 乗組員のスマートフォンの電波を受信する目的で航海計画を変更し、モーリシャス島に接近した
  • 定額課金制でデータ通信が可能な通信機器を搭載していなかった
モーリシャス島付近海域の詳細海図が無かった

モーリシャス島付近海域の詳細な海図等を入手していなかった

 事故当時、貨物船「WAKASHIO」は紙海図及びENC(Electronic Navigational Chart、航海用電子海図)を使用していたが、モーリシャス島付近の詳細な水深、沿岸地形等が記載された海図を持っていなかった。

 電子海図は、👆上の画像中央付近にあるECDISと呼ばれる電子海図表示情報システムに表示される。公表された経過報告の中に、事故当時の貨物船「WAKASHIO」で表示されていた画面を再現したものが👇下の画像。

 確かに、事故当時の表示画面を再現した方(左の画像)だとモーリシャス島の海岸線まで2マイル程度は離れているように見えるが、詳細データが記載されている方(右の画像)を見るとほぼ障害物に接触している位置にいることが分かる。これは分かり易い。

ECDISとは?

ECDISとはElectronic Chart Display and Information Systemの略で、電子海図表示情報システムのこと。航海計画と航路監視において、船舶の安全航行を支援するための航海情報装置。

国際SOLAS条約の改訂によりIMOは、国際航海に従事する500トン以上の旅客船、及び3,000トン以上のタンカー、貨物船に対して、2012年7月より段階的にECDISの搭載を義務化。また、1台目のECDISを航海用の主装置とする場合、バックアップとして従来の紙海図もしくは2台目のECDISの装備が要求される。

貨物船「WAKASHIO」は、総トン数101,932トンなので搭載義務がある。

スマホ電波を受信する目的で島に接近

スマホの電波を受信する目的でモーリシャス島に接近した

 こんな理由で大事故が起こったと思うと、やりきれない気持ちになりますが、事実です。

 経過報告の中に、船長と航海士の事故当日のやり取りが ”調査により確認された事実情報” として記載されています。気になる方は読んでみて下さい。

 抜粋すると、スマホの電波を求めて船長がモーリシャス島に接近するよう指示を出して近付いたけど船長のスマホはモーリシャス国内では通信できない契約だった。航海士のスマホは通信可能だったので船長が航海士にテザリングで通信を共有するよう依頼。航海士は了解したけど通信容量を使い切り通信出来なくなったのでテザリングを断念。船長は機関長に減速してゆっくり走るように指示を出し、他の手段は無いかと雑談している時に座礁。

以前にもスマホ電波を求めて島に接近していた

 経過報告によると、貨物船「WAKASHIO」は事故を起こした航海のシンガポールを出港した後にも航海計画の予定進路から離れ、陸地に接近していた。陸地に接近することが頻繁に行われていたことが推測できます。

 起こるべくして事故は起きたようです。

定額課金制でデータ通信が可能な通信機器を搭載していなかった

 この要因は、直接の原因ではないような気がしますが、搭載していれば事故は起きなかったかもしれません。ただ、多分搭載していない同様の貨物船はたくさんあると思うので、船長の安全意識の欠如が一番の原因でしょう。

 

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