オランダのSkylift Marineが所有する400トン吊りの起重機船「Skylift 3」。見た目の第一印象では固定式の起重機船ですが、実は旋回式の起重機船。このジブ形状で固定式の起重機船はたくさんいるけど旋回式は他で見たことがない。
見た目は固定式だけど実は旋回式という起重機船「Skylift 3」
オランダのSkylift Marineが所有する400トン吊りの起重機船「Skylift 3」。ジブの形状は、旋回式起重機船で一般的なトラス型ではなく箱形になっている。箱形のジブで旋回式の起重機船というのは珍しいと思います。他に同様の起重機船はいないかも。
建造年は2022年で、オランダのDeestにあるRavesteinで建造されたようです。2022年末にクレーンの荷重試験が行われ、クレーン最大能力400トンの1割増しとなる440トンを吊り上げて検査は無事に完了。フライングジブに取り付けられているフックは40トン吊り。
初仕事はイギリスのリバプール
出典:Ravestein B.V.
完成した起重機船「Skylift 3」の初仕事はイギリスのリバプールにあるグラッドストーンロックと呼ばれるロックゲート(閘門)の設置作業。非自航式の「Skylift 3」をオランダからドーバー海峡を越えてイギリスのリバプールまで曳航する時に有効なのがジブを格納できるという特徴。
出典:Ravestein B.V.
実際のところは分かりませんが、見た感じでは部材の数が多くなので艤装工程が簡素化されているのかもしれません。格納後の水面上高さもかなり低いので結構低い橋でも通過できそう。
初仕事で設置を行うロックゲートは長さ21.95m、高さ18.3m、重量は380トン。400トン吊りで380トンだと能力に対して95%なのでほぼ限界マックスの作業になりそうです。
同様の所有船「Skylift 1」「Skylift 2」
出典:Twitter | @AJBC_1
Skylift Marineは「Skylift 3」の他に、同様の非自航式で全旋回の起重機船「Skylift 1」「Skylift 2」を所有しています。クレーン吊り上げ能力は2隻とも250トンの起重機船でそれぞれ、2013年、2018年に建造。
船名 | Skylift 1 | Skylift 2 |
クレーン能力 | 250トン | 250トン |
長さ | 60m | 60m |
幅 | 22m | 16.5m |
深さ | 3.5m | 3.5m |
「Skylift 3」と同じようにクレーンジブを格納することが可能で、見た目の形状や塗装の色はほぼ同一なので見分けが付かないくらい一緒。
Skylift Marineのウェブサイトに掲載されている情報によると台船部分は半潜水式の仕様になっているそうですが、どのような時に使用するのかは不明。
半潜水式多目的ジャッキアップバージ「Skylift 3000」
出典:Skylift Marine BV
さらにSkylift Marineは、「Skylift 3000」という半潜水式の多目的ジャッキアップバージを所有していました。いわゆるSEP船。
出典:Skylift Marine BV
「Skylift 3000」は長さ60m、幅28m、深さ4m、載貨重量3,000トンで半潜水すると甲板が水深8mまで降下する仕様。
多目的という名前の通り様々な用途で使用され、その船体構造は昨今の洋上風車設置に登場するSEP船と同じ自己昇降式。そして、なんとこの「Skylift 3000」と「Skylift 2」を組み合わせてSEP起重機船のような状態で作業することが出来るみたいです。
「Skylift 3000」+「Skylift 2」=SEP起重機船?
出典:Ravestein B.V.
これは驚きの組み合わせ。
「Skylift 3000」と「Skylift 2」を組み合わせると、それはもうSEP起重機船。もともと、このように使用する前提で両者の建造が行われていたんでしょうね。それにしても旋回式のクレーンを搭載できる甲板の形状がどのようになっているのか気になります。この状態で「Skylift 2」の最大吊上げ荷重250トンの能力が保持されているかどうかは不明。
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