六連沖で錨泊していた韓国船籍のケミカルタンカー転覆

六連沖で錨泊していた韓国船籍のケミカルタンカー転覆 国内ニュース
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六連沖で錨泊していた韓国船籍のケミカルタンカー転覆

2024年3月20日、山口県下関市の六連島から北北西約8kmの海上で韓国船籍のケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」が転覆する事故が発生。

報道されている情報では、20日午前7時頃に錨泊していたケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」から船が傾いていると、救助を要請する通報があったという。事故当時、船には韓国人2人、インドネシア人8人、中国人1人の計11人が乗船していた。

現地海域では巡視船やヘリコプターによる懸命な救助・捜索活動がおこなわれ、乗組員11人のうち9人が救助されましたが、命に別状なかったのは1人だけで8人の死亡が確認されたという。残る2人の救助・捜索活動は引き続きおこなわれています。

ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」には、積荷としてアクリル酸980トンが積まれていましたが、今のところ流出は確認されていないそうです。報道されている映像を見れば分かる通り、現況では船が転覆した海域は荒れた状態なので海面上から見る限り流出は確認できないという意味でしょう。

残る行方不明者の捜索・救助活動と並行して、天候が回復してくれば詳細な積荷状況の確認を含め撤去・曳航できる状態なのか船体破損の確認がおこなわれると思いますが、アクリル酸は毒物劇物取締法で劇物、消防法で危険物に指定されており、流出に気付かず接近すると2次災害の危険もある。

ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」事故前の動静

ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」が転覆した六連沖の錨泊場所に到着したのは、3月20日3時頃。救助要請の通報からおよそ4時間前にあたる。

それまでの動静をAIS情報で見てみると、3月18日14時頃に兵庫県姫路市網干の日本触媒 姫路製造所を出港し、瀬戸内海、関門海峡を通過して日本海へ。この時点で次の目的地がどこだったのかは分かりませんが、報道されている情報では韓国の蔚山となっており、過去1ヶ月のAIS情報では釜山入港の実績がありました。

3月19日13時過ぎに関門海峡を抜けて韓国方面へ向けて航行していましたが、約8時間後の21時頃、180度反転して関門方面へ航行を開始。そして、約6時間航行を続け、日付が変わった20日3時頃に六連沖の錨泊場所に到着。その後、錨泊してからのAISデータには走錨しているとみられる航跡が残されており、どこかの段階で転覆したものと思われる。

少し気になったのは、ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」と同じように付近には錨泊している船舶がいたようなので、走錨により他船と接触したことが転覆につながった可能性もあるのかもしれないという点。気象海象による要因が一番大きいのは確かだと思いますが、いくつかの要因が重ならないと船が転覆することは考えにくい。

まだ行方不明者の捜索・救助活動をおこなっている段階なので事故原因の調査は二の次ですが、今後の類似事故を未然に防ぐためにも原因を究明して欲しい。

有義波高3m、最大瞬間風速20m以上

時刻船舶動静有義波高周期
3月18日14時姫路出港1.03m5.9s
3月19日13時関門海峡通過0.64m4.3s
3月19日21時180度反転1.82m5.6s
3月20日03時六連沖錨泊2.08m6.8s
3月20日07時救助要請3.23m7.2s
藍島港の有義波実況
出典:国土交通省港湾局 全国港湾海洋波浪情報網 ナウファス

六連島から北西に約4kmの位置にある藍島港の国土交通省港湾局 全国港湾海洋波浪情報網 ナウファスで閲覧できる波浪実況データにより現地海域の波浪状況を確認してみました。

関門海峡通過時は有義波高1m以下だったようですが、それ以降は徐々に高くなり、180度反転した時点で有義波高は1.8m。六連沖に錨泊した時には2mを超えており、救助要請の通報をおこなった時には3mを超えています。

ナウファスで風速データはありませんが、3月20日5時頃に下関市で20mを超える最大瞬間風速が観測されたそうです。

有義波高とは?

有義波高とは、ある地点で観測された波高の高い方から順に全体の1/3の個数の波を平均したもの。

有義波高は目視で観測される波高にほぼ等しいと言われており、統計学上の確率では、100波に1波は有義波高の1.5倍、1,000波に1波は2倍近い高波が出現する。

海上保安庁発表の行方不明者情報

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ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」は日本の広島県で建造

ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」は、Korean Register(韓国船級協会)で船級登録されています。今回の事故とは関係ありませんが、登録情報を照会してみると建造場所は日本の広島県大崎上島にある佐々木造船株式会社でした。竣工したのは28年前の1996年6月。

Korean Registerに登録されているケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」のRegister of Ship
  • Owner(船主):KEOYOUNG SHIPPING CO., LTD.
  • Manager(運航会社):KEOYOUNG SHIPPING CO., LTD.
  • Shipbuilder(建造):SASAKI SHIPBUILDING CO., LTD.(佐々木造船株式会社)

ケミカルタンカー「KEOYOUNG SUN」

船名KEOYOUNG SUN
総トン数870トン
載貨重量トン1,168トン
長さ68.82m
10.6m
船籍韓国
建造年1996年6月
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