米ボルティモア橋崩落の残骸撤去に油圧式巨大グラブ投入

米ボルティモア橋崩落の残骸撤去に油圧式巨大グラブ投入 事件・事故
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米ボルティモア橋崩落の残骸撤去に油圧式巨大グラブ投入

2024年4月22日、USACE(United States Army Corps of Engineers:アメリカ陸軍工兵隊)はメリーランド州ボルティモアに架かるフランシス・スコット・キー橋で起きた崩落事故の残骸撤去に向けて、油圧式の巨大グラブが事故現場近くのSparrows Pointに到着したことを明らかにしました。

航路復旧に向けた崩落した橋の残骸撤去として、水面上に見えている橋桁をある程度の大きさで切断撤去したり、水中の残骸についてもグラブバケットを使用した撤去作業がおこなわれ、これまでに1,000トン以上が引き揚げられているという。

容量1,000トンの油圧式グラブバケット

Sparrows Pointに到着した巨大な油圧式グラブバケット
出典:X | USACE Baltimore(@USACEBaltimore
USACE BaltimoreのX投稿【2024年4月22日投稿】

(翻訳)

統合コマンドの沿岸作業員が、テキサス州ガルベストンから1週間のバージの旅を経て、今週末スパローズポイントに到着した200トンの巨大な油圧式サルベージグラブの隣に立っています。
1,000トンの容量を誇るこのグラブは、フランシス・スコット・キー橋の崩壊現場から5万トンの残骸のかなりの部分を回収するために使用されます。

X | USACE Baltimore(@USACEBaltimore

USACEのX投稿によるとグラブ重量は200トン、そしてグラブで掴みあげられる重量は1,000トン。投稿文の中にある ”5万トンの残骸” というのも気になります。

巨大な油圧式グラブバケットは台船に積まれ、テキサス州ガルベストン(Galveston)から1週間かけて海上輸送。

これまでにも現場ではグラブバケットを使用した残骸撤去は実施されていますが、使用されているのは日本国内でもよく見かけるクレーンの巻き上げウインチ2基で開閉するタイプ。支持ワイヤーと開閉ワイヤーを操作してグラブバケットを開閉する仕組みで、ガット船に搭載されているのと同じ構造。

今回、ボルティモアに到着した油圧式グラブバケットは開閉を油圧でおこなう構造になっており、上部には吊り上げるためだけのシャックルが確認できます。開閉用のワイヤーが無いかわりに、使用時にはグラブバケットを開閉するための油圧ラインが必要になると思われる。

巨大な油圧式グラブバケットはThe Grab Specialistの製品

巨大な油圧式グラブバケットについて調べてみると、形状やカラーリング、容量などからオランダのThe Grab Specialist(TGS)が開発したHydraulic Salavage Grabs(油圧式サルベージグラブ)のようです。

仕様シングル(2歯)ダブル(4歯)
自重70トン160トン
閉止力5,000kN
(2×2,500kN)
10,000kN
(4×2,500kN)
揚重容量500トン1,000トン
Hydraulic Salavage Grabsの仕様

シングルとダブルという2種類の仕様があり、今回ボルティモアに到着したのはダブル。揚重容量の1,000トンは同じ数値ですが、グラブバケットの自重は160トンと記載されておりUSACEの200トンとは少し違った数値になっていました。160トンをショートトンに変換しても約177ショートトンであるため、吊具や油圧ラインなどの重量を含めた概算重量なのかも。もしかするとボルティモアの現場向けに特別な補強を施して重量が増えている可能性も。

YouTubeリンク先 TGS | The Grabs Specialist 3d Film Salvage grab

メキシコ湾に沈んだジャッキアップリグのサルベージ作業で使用

沈没前のジャッキアップ船「Troll Solution」
出典:X | Gaspar Villaseñor(@survemex
Hydraulic Salavage Grabsを使用した船体の引き揚げ
出典:X | Eric Haun(@erichaun10

2015年5月、メキシコのカンペチェ湾に設置されたプラットフォームのメンテナンス作業中にジャッキアップ船「Troll Solution」が沈没した事故では、船体を引き揚げるサルベージ作業にHydraulic Salavage Grabsが使用されていました。

プラットフォームから2mという近距離に沈没したジャッキアップ船「Troll Solution」のサルベージ作業では、 ”Guided Guillotine” (ガイド付きギロチン)と呼ばれるもので船体を31のブロックに分割した後、1,400トン吊りクレーン船「CONQUEST MB1」でHydraulic Salavage Grabsを使用して分割した船体ブロックを引き揚げ。

船体ブロックを引き揚げる画像を見ると、油圧式のHydraulic Salavage Grabsの爪が船体を突き破り食い込んでいるのが分かります。フランシス・スコット・キー橋の橋桁に使用されている鉄骨程度なら、いとも簡単に切断してしまいそうですが大丈夫なんでしょうか。

船名CONQUEST MB1
クレーン能力1,400トン
ブーム長さ75m
長さ136m
36m
深さ8m
建造年2012年
1,400トン吊りクレーン船「CONQUEST MB1」
出典:MarineTraffic | marco schoone

クレーン船「Chesapeake 1000」で施工の可能性

メキシコでの使用実績では1,400トン吊りクレーン船「CONQUEST MB1」が作業をおこない、グラブバケット自体の重量だけで約200トン、引き揚げ可能な重量が1,000トンであることから1,000トン以上のクレーン船で施工することが望ましい。

ですが現状、フランシス・スコット・キー橋のサルベージ作業に従事しているクレーン船の中で最もクレーン能力が大きいのは907トン(1,000ショートトン)吊りの「Chesapeake 1000」。吊り上げ能力から推測すると「Chesapeake 1000」で施工する可能性が高そうですが旋回できない構造のクレーン船であるため、Hydraulic Salavage Grabsの装着および解除には別の台船が必要となり施工効率が悪い面もある。

船名Chesapeake 1000
クレーン能力907トン
※(1,000トン)
長さ58.27m
30.84m
深さ6.12m
建造年1972年
※( )内の数値はショートトン
クレーン船「Chesapeake 1000」
出典:U. S. Coast Guard
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