口之島沖で座礁の韓国船籍タンカー積荷抜き取り断念、海洋放出開始
鹿児島県口之島沖で座礁し、その後、波浪によって船体が分断した韓国船籍のケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」。そこに積まれている積荷のシクロヘキサンについて、6月5日より海洋放出を開始するという。
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」が口之島沖で座礁したのは2024年4月16日。事故当時、船に乗船していた乗組員14人は全員救助されましたが、船は無人の状態に。座礁から1週間後の4月23日には、船体付近の空気中から積荷のシクロヘキサンと推定される成分を確認。その後、船内の油を抜き取る作業がおこなわれ、5月10日に完了したものの、5月16日には波浪で船体が分断しているのが確認されました。
今回、積荷の海洋放出という最終手段を選択した理由については、船体が分断して傾いたことで安全に積荷の抜き取り作業ができなくなったためだとしています。海洋放出は6月5日午前9時から始められる予定。放出前の時点で船内に積荷のシクロヘキサンがどれだけ残っているのかは分かりませんが、座礁時点での積載量は2,886トンと報じられていました。
海洋放出により揮発したシクロヘキサンを直接吸い込んで被害が出ることは考えにくい。しかし、海に流出したシクロヘキサンによって限定的とはいえ、海洋生態系に影響を与えるのではないでしょうか。それがどの程度なのかが問題ですが、あらゆる影響について調査するのは難しそう。加えて、実害以上に問題なのは漁業者へ風評被害かもしれない。
事故発生からのタイムライン
- 2024年
4月16日鹿児島県口之島から北西約8kmで座礁事故発生インドネシア人10人、韓国人3人、ミャンマー人1人の14人は全員救助
- 4月22日62歳の韓国人船長を業務上過失往来危険の疑いで鹿児島地方検察庁に書類送検
鹿児島区検察庁は4月24日付けで韓国人船長を略式起訴し、鹿児島簡易裁判所は罰金30万円の略式命令を出した
- 4月23日流出した積荷のシクロヘキサンが付近の空気中から確認される
座礁している船体付近の空気中から積荷のシクロヘキサンと推定される成分を確認、第十管区海上保安本部が4月24日に緊急情報として発表
- 4月25日船内の油を抜き取る作業を開始
5月10日に完了
- 5月16日波浪により船体の折損を確認
船舶所有者が手配したサルベージ会社から船体が折れたと第十管区海上保安本部へ報告
- 6月5日積荷のシクロヘキサン海洋放出開始
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」
船名 | KEOYOUNG PIONEER |
総トン数 | 2,577トン |
載貨重量トン | 3,970トン |
長さ | 88.6m |
幅 | 14.6m |
深さ | 7.2m |
船籍 | 韓国 |
建造年 | 2006年1月 |
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