ポルトガル北部の沖合にあるテストサイトへの設置準備が進められている波力発電設備。CorPower Oceanが開発した商用規模の波力エネルギー変換器(Wave Energy Converter)「C4」は、発電出力300kW。2022年内にテストサイトへ設置し、実証を経てプロトタイプ認証取得を目指す。
ポルトガルで設置される商用規模の波力発電設備「C4」
2022年12月22日、CorPower Oceanは開発を進めている波の力を利用して発電する波力エネルギー変換器(Wave Energy Converter)「C4」の設置準備が完了したことを発表。ポルトガルのビアナ・ド・カシュテロ(Viana do Castelo)港内で係留ユニットなどを取り付けた後、設置前の事前テストが完了し、進水をおこなう岸壁へ運ばれました。
今後は、進水を行った後に小型のタグボートにより設置場所まで曳航し、事前に設置している「UMACK anchor」と呼ばれる海底に打設した杭と接続して設置を完了させる予定。
C4 WECの大きさは、直径9m、浮体部分は長さ19m、全体重量70トン(基礎部分の杭なども含んだ重量?)。水深40m以上の海域に設置を想定しており、発電出力は300kW。動作環境は、波高0.25mから8mの範囲。
今回設置が予定されているのは1基のみで、アグサドウラ(Aguçadoura)沖合のテストサイトで実証を行い、プロトタイプ認証を目指している。テストサイトは沖合5kmの位置にあり、水深は45m~50m。
CorPower Oceanが進める「HiWave-5」プロジェクトでは、2025年までに追加で3基の設置を行い、実証を経て型式認証を取得することが目的。
最終的な設置コンセプト(概念)は、150m間隔でWEC(Wave Energy Converter)を28基配置した発電出力10MW程度の「CorPack」を1つのユニットとして、そのユニットを複数配置することで「波力発電所(wave farms)」を形成するというもの。
アイルランド西部のクレア沖では「Saoirse project」と呼ばれる実証事業も進められており、15~16基のWECユニットを設置して2026年に5MW規模の試運転、そして2028年までに合計出力30MWの設置が計画されている。
浮体の係留には「UMACK anchor」を使用
CorPower Oceanは、2022年9月21日に掲載した記事の中で「UMACK anchor」の設置が完了したことを発表。
「C4」の係留に使用されているのは「UMACK anchor」と呼ばれる杭。大きさは直径1.6m、長さ24m、重量43トン。杭の下端近くの直径が大きくなっているのは、引き抜き力に対する抵抗を増やすためだと思われる。逆に打ち込む時は凄い抵抗になると思いますが。
ただ、このこぶのような形状による効果で最終的な引張容量は15MN(約1,500トン)を超えるそうです。波力発電なので浮体が波で上下する動作を繰り返すたびに杭を引き抜こうとする方向に力が作用する。CorPower Oceanによると、「UMACK anchor」は1億回以上の負荷サイクルに耐える十分な耐久性を備えているそうです。ちなみに、1億回という回数は、期間に到達した波が平均して周期4秒だと13年分、周期5秒だと16年分、周期6秒だと19年分。
打設に使用されたのは、PVE(Piling & Vibro Equipment)というオランダ企業のバイブロハンマー「500MU」。「500M」という製品にUpending(建て起こし)機能が付いているので「500MU」という名称になっている。
スペックとしては、偏心モーメントが500㎏m、起振力は10,748kN(約1,096トン)という怪物級のバイブロ。先日、石狩湾新港洋上風力で森長組の「第一豊号」がジャケット基礎杭(直径2.5m、長さ60m、重量160トン/本)の打設で使用した「CAPE VLT-320」よりも強力。
型式 | 500MU | CAPE VLT-320 | 320ⅡMR |
メーカー | PVE | CAPE Holland | 調和工業株式会社 |
偏心モーメント | 500㎏m (50,000㎏㎝) | 320㎏m (32,000㎏㎝) | 370㎏m (37,000㎏㎝) |
起振力 | 10,748kN (約1,096トン) | 6,853kN (約699トン) | 1,987.6kN (202.8トン) |
日本メーカーが製造している最大クラスのバイブロ、調和工業株式会社の「320ⅡMR」でも偏心モーメントは370㎏m、起振力は1,987.6kN(202.8トン)。起振力が桁違いに小さいのはなぜなんでしょう。
出典:MAERSK
「UMACK anchor」の打設を行った作業船は、Maersk Supply Serviceが所有するSSV(Subsea Support Vessels)「Maersk Achiever」。
船名 | Maersk Achiever |
長さ | 90.3m |
幅 | 23.0m |
深さ | 9.5m |
総トン数 | 6,690トン |
クレーン能力 | 250トン (AHC crane) |
DPS | DP2 |
宿泊設備 | 86人 |
「Maersk Achiever」に搭載されているクレーンは、250トン吊りでAHC(Active heave compensated)と呼ばれる揺動補償動作機能が付いており、波による船体の動揺をセンサーで感知し、クレーン動作を制御することで吊荷の姿勢を一定に保持することが出来る。
そして、海中で杭を打設する作業に欠かせないROVを2台搭載している。
今後、設置完了・動作状況など進捗情報が公表されれば記事でお伝えします。
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