ドローンによる船舶土量検収システム、計測時間20分から5秒へ短縮
2024年5月24日、五洋建設とACSLは3D-LiDARとLTE通信機能を搭載したドローン「Penta-Ocean Vanguard-DroneLiDAR」(POV-DL)によるリアルタイム船舶土量検収システムを開発したと発表。
港湾工事では工事数量を管理するため、運搬船に積まれて搬入した石や砂などの積載量を現場受入時に検収する必要があります。運搬船に移動して乗船、数名でスタッフやリボンテープを用いて検収、終了後に下船して事務所に戻って帳票作成というのが一般的な運搬船での検収の流れ。運搬船が沖合にいる場合には、交通船で往復移動する必要があるため検収に1時間以上を要するケースもある。
今回開発したリアルタイム船舶土量検収システムを使用すると、陸上の職員1名が運搬船の上空まで「POV-DL」を飛行させ、光学カメラで積載状況を写真撮影し、3D-LiDARで船倉内の積載形状を5秒間計測することで、積載土量が直ちに算出・表示され、帳票も自動で作成できるようになったという。これまで20分程度かかっていた計測時間が5秒に短縮されるという画期的なシステム。
どの現場でも運搬船の検収がある訳では無いので使用場所は限定されますが、運搬船の検収隻数が多い現場では人員削減および工程短縮にもつながる大きな効果が期待できそう。さらに、海上を移動して運搬船へ乗下船する作業も無くなるので安全面でもリスクが低減すると言えそう。
項目 | 従来の検収方法 | 「POV-DL」使用 |
---|---|---|
必要人員 | 4~6人 | 1人 |
往復の移動時間 | 40分 | 4分 |
計測時間 | 20分 | 5秒 |
検収時間の合計 | 約60分 | 約5分 |
帳票作成 | 自動作成 | 事務所で内業 |
”3D-LiDAR” + ”SLAM” により検収作業をシステム化
リアルタイム船舶土量検収システムでは、3D-LiDARによる点群データから積載土量をクラウド上で算出して帳票作成していますが、波の影響で揺れる運搬船でも安定して計測できるようにSLAM(Simultaneous Localization and Mapping:地図と位置の同時推定)と呼ばれる点群データから自己位置推定と周辺認識を同時におこなう技術と組み合わせたシステムを実装。
また、2020年12月に電波法で制度整備された上空でのLTE通信機能を利用して、POV-DLの帰還を待たずに直ちに計測データをクラウドに伝送・保存できる機能を拡張している。これにより、POV-DLによる計測データの取得から、クラウドへの伝送・保存、積載土量の算出・帳票作成までの一連の検収作業をシステム化しているという。
横浜港本牧地区で実証実験を実施
神奈川県の横浜港本牧地区防波堤築造工事で実施した実証試験では、土砂運搬船(積載量約2,100m3)の土量検収に要した時間は20分から5分に、人員は6名から1名に削減し、大幅な生産性の向上を確認。
リアルタイム船舶土量検収システムは、検収作業の負荷軽減に貢献するだけでなく、土砂運搬船の待機時間削減につながることから、土砂投入工事の効率化にも寄与している。
LiDARを活用した開発
洋上風力の分野でもLiDARシステムを活用した開発が進められており、当ブログでも過去にHuismanの「Wind Gust Buster」やオルデンブルク大学の風力エネルギー研究センターであるForWindが開発するLiDAR-based power forecasting(LiDAR ベースの電力予測)を記事で取り上げています。
どちらもLiDARシステムによって風速や風向などの風況予測をおこなうというものですが、今回のリアルタイム船舶土量検収システムをはじめ、まだまだ活用の幅が広がりそう。
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