浮体基礎「BRUNEL」がメンテナンス課題を克服した革新的な方法
The Floating Foundation BRUNEL overcomes the O&M challenge – Innovative and Integrated Maintenance Solution
(The Floating Foundation BRUNEL は、O&M の課題を克服します – 革新的で統合されたメンテナンス ソリューション)
https://www.fredolsen1848.com/news/fred-olsen-1848-is-developing-a-complete-o-m-solution-and-operational-procedure-for-major-component-exchange-that-is-optimized-for-the-floating-foundation-brunel/
2023年4月25日、Fred. Olsen 1848は浮体基礎「BRUNEL」に最適化された主要部材交換のための完全なO&Mソリューションと操作手順を開発したと発表。
洋上風力発電設備に関する新技術や新工法の記事はこれまでにいくつも見てきましたが、発想という視点で言うとかなり意表を突いた方法。世界にはいろんな人がいて、いろんな考え方があるんだなと改めて思い知らされるほどの驚きがありました。
焦点を当てているのは、浮体式洋上風車のO&M(Operation & Maintenance)と呼ばれるメンテナンス(運用および保守点検)について。浮体式洋上風車の建造時、浮体基礎に風力タービンを搭載する作業は港内の岸壁で陸上クレーンを使用する方法が一般的で、特に作業上の問題は無い。ですが、現地海域に浮体式洋上風車を係留し、運転開始したあとの運用時にブレードなどの主要部材を交換する場合、浮体の係留解除をおこない浮体式洋上風車を港内の岸壁まで曳航して戻す必要がある。
浮体基礎「BRUNEL」に最適化されたメンテナンスソリューションでは、洋上風車が稼働する現地海域で安全かつコスト効率の高い方法により大規模な部材を直接交換できるという。
では、どのような方法でブレードなどの部材を現地海域で交換するのか?
ジャッキシステムとクレーンを搭載したバージを独自に設計
Fred. Olsen 1848は、ジャッキシステムとクレーンを搭載したバージ、いわゆるSEP船を独自に設計。基本的に浮体式洋上風車は水深の深い海域に設置されているので、SEP起重機船のレグを使用できる最大水深を超えており、船体をジャッキアップすることは不可能。
そこで考えられた方法が、浮体基礎の上にジャッキアップするという方法。
浮体基礎「BRUNEL」は、浮体底面と海面との間に最大10mの水深クリアランスがあり、三角形の形状をした浮体底面上にSEP船を進入させることが出来る。そして、浮体基礎にレグをおろし船体をジャッキアップ。SEP船と浮体は一体化され、メンテナンスのための部材交換を安全に行うことが出来る。
SEP船は非自航式が想定されており、浮体底面の形状に合わせてレグの搭載位置が調整されていますが、そこまで特殊な仕様では無さそうな感じ。安定性にはやや不安がありますが、発想としては素晴らしい。
浮体基礎「BRUNEL」について
浮体基礎「BRUNEL」のコンセプトはモジュラー設計。
次世代の風力タービン向けで、北海という過酷な環境条件にも耐える半潜水型の浮体基礎でありながら、既存サプライチェーンでの連続生産に適したモジュラーアプローチを採用しており、即時のスケールアップと低コストを実現するという。
「BRUNEL」の由来
Fred. Olsen 1848のウェブページでは「BRUNEL」の由来について記載はありませんが、調べてみると実在した人物の名前に由来している可能性が高そう。その人物は、M.I.ブルネルというフランス生まれの技術者。
M.I.ブルネルは、1769年にフランスで生まれ、アメリカやイギリスで活躍した技術者。彼が残した功績のひとつに、1801年ポーツマスの海軍工廠でイギリス海軍向けに滑車の生産法を確立したことが挙げられる。ここで採用したアセンブリー・ライン方式は、現代のライン生産方式の先駆けとなり、この点が浮体基礎「BRUNEL」のコンセプトと合致している。
彼の息子I.K.ブルネルは、さらに有名で2002年、BBCが行った「100名の最も偉大な英国人」投票で第2位に選ばれている。優秀なデザインの鉄道車両や鉄道施設などに贈呈されるブルネル賞は彼に由来する。
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