浸水を隠蔽しクイーンビートルを3ヶ月以上運航、抜き打ち監査で発覚

浸水を隠蔽しクイーンビートルを3ヶ月以上運航、抜き打ち監査で発覚 国内ニュース
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浸水を隠蔽しクイーンビートルを3ヶ月以上運航、抜き打ち監査で発覚

高速旅客船「クイーンビートル」
出典:JR KYUSHU JET FERRY INC.

2024年8月9日、JR九州(九州旅客鉄道株式会社)のグループ会社であるJR九州高速船は、運航する高速旅客船「クイーンビートル」(QUEEN BEETLE)について、8月13日以降の運航中止を発表。運航再開時期は現時点で未定となっており当面の間、運航を休止するという。

高速旅客船「クイーンビートル」は、2024年5月30日の運航中に浸水が発生。その後の緊急点検で船首の溶接に亀裂が確認され、運休。1カ月以上が経過した7月11日にドックでの修理作業が完了し、運航再開といった経緯がこれまで報じられていた情報でしたが、実際は違ったようです。

JR九州高速船が発表した内容

JR九州高速船株式会社は、8月9日にウェブサイトで ”8月13日(火)以降の運休及び新規予約の受付停止について” という情報を掲載し、その中で運航中止理由について国土交通省による監査(継続中)にて、2023年7月に同省へ提出した改善報告書に記載の対策が実行されていなかったためだと述べています。

この情報だけでは1年前に提出した改善報告書に記載した対策が実行されていなかったということしか分かりませんし、どのような対策が実行されなかったのかという内容が一切不明。この辺りにも企業としての不誠実さが現れている様な気がしました。

2023年7月23日にJR九州高速船が国土交通省へ提出し、受理された改善報告書のうち4つの安全確保のための基本方針は以下の通り。これに付随する具体的な施策の実施・計画については不明。

2023年7月23日にJR九州高速船が提出した改善報告書のうち、4つの安全確保のための基本方針
  1. 経営トップの抜本的な意識改革
  2. 社外関係機関への速やかな報告と相談
  3. 事象発生時の継続的な最新情報の共有
  4. 全社員を対象とした安全意識の醸成と定着

出典:JR九州高速船株式会社 | https://www.jrbeetle.com/news/1622/

リンク先(PDF形式) 国土交通省 海事局安全政策課(2023年6月23日) |「輸送の安全の確保に関する命令」

JR九州が発表した内容

JR九州の掲載情報【2024年8月9日】

クイーンビートルの運休について(抜粋)

【運休理由】
2023 年6月に国土交通省より発出された「輸送の安全確保に関する命令」を受け、JR九州
高速船が同年7月に提出した改善報告書に記載の対策が実行されていなかったため
【経緯】
2024 年8月6日実施の国土交通省によるJR九州高速船への監査(継続中)にて、安全確保
に関わる重大な問題があるとの指摘を受け、JR九州が確認して判明
【運休期間】
2024 年8月 13 日(火) ~ 当面の間

出典:https://www.jrkyushu.co.jp/common/inc/info/list/__icsFiles/afieldfile/2024/08/09/240809_QUEENBEETLE.pdf

JR九州は掲載情報で、高速旅客船「クイーンビートル」の運休理由として1年前の改善報告書に記載の対策が実行されていなかったためという部分はJR九州高速船と同様の説明をしています。運休の経緯として、8月6日実施の国土交通省によるJR九州高速船への監査で安全確保に関わる重大な問題があるとの指摘を受けたことを明らかにしています。

この掲載情報からは、何かやらかしたなというのは分かりますが、その内容については詳細を一切説明していない。

報道されている情報

JR九州とJR九州高速船がウェブサイトに掲載している情報では、運休に至った経緯がよく分かりませんでしたが、報道されている情報によると、2024年8月6日に実施された国土交通省によるJR九州高速船への監査で5月30日に発見された船首部分の亀裂による浸水について、3ヵ月前の2月時点でJR九州高速船は把握していたという。

JR九州高速船は2月に亀裂で浸水が発生していることを把握したものの、法令で義務づけられた検査や修理を実施せず、国交省に報告しなかった。さらに、浸水を感知する警報センサーの位置を作動しないようにずらし、浸水に関するデータも改竄した上で浸水していないように偽装

ポンプで排水して運航を継続していましたが、浸水の悪化で対応できなくなり、5月30日に初めて浸水が確認されたように装って国土交通省やJR九州に報告。

JR九州高速船は2023年2月にも国交省の行政処分を受けていた

2023年7月にJR九州高速船が国土交通省に提出した改善報告書は、2023年2月11日に高速旅客船「クイーンビートル」で発生した浸水に関する事態の対応で行政処分を受けたことによるもの。

2023年2月11日に「クイーンビートル」運航中、浸水警報装置が作動したため、翌日2月12日にダイバーの潜水により船体のクラックを確認。応急処置を実施した上で2月14日まで運航を継続させたことが、船舶安全法第5条第1項第3号に規定する臨時検査を受けずに運航していたことに加え、社内の連絡体制不備及び報告遅延等の法令違反があったとされ、行政処分を受けています。

2023年にも同様の浸水に関する事態の対応で行政処分を受けていたにも関わらず、同じようなことを繰り返していることがよく分かります。今回はさらに、浸水を隠すような偽装までおこなっているだけにより悪質。

営利企業なので会社の利益を最大化させることは重要だと思いますが、リスクの大きさを考えると、なぜこのような事態に再び至ってしまったのか理解に苦しむ。船の乗組員側だけでやっていたとは思えないので、経営陣の意向でしょうか?もしかすると、確信犯的に乗客のためと思い、運休することが ”悪” で偽装してでも運航を継続することが正しいと思っている人が主導していたのではないかと想像してしまいます。いずれにしても間違った考えの下、起きてしまった事態だと思うので、健全な運航体制を再構築すべく立て直しを図ってもらいたい。

運航中止は8月13日以降なので、高速旅客船「クイーンビートル」はまだ福岡-釜山の航路を運航中。

高速旅客船「クイーンビートル」のAIS情報(2024年8月10日現在)
出典:Marine Traffic
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