スリランカの造船所 Colombo Dockyard でケーブル敷設船建造
2023年7月28日、フランスの大手通信会社 Orange のグループ会社 Orange Marine 向けとなるケーブル敷設・修理船(CLRV,Cable Laying and Repair Vessel)「SOPHIE GERMAIN」が完成し、引き渡しがおこなわれました。
ケーブル敷設・修理船を建造したのは、スリランカの最大都市コロンボにある Colombo Dockyard。スリランカからヨーロッパ市場へ向けてケーブル敷設・修理船が建造されるのは初めてだという。
「SOPHIE GERMAIN」の船体寸法は長さ100m、幅18.8mで、船内には3つのケーブルタンクを搭載しており、その内1つは電力ケーブルの敷設に適したカルーセルシステムを装備。海底ケーブルの敷設と修理をおこなうことが可能で、洋上風力発電所で使用される光ファイバー通信ケーブルとアレイ間電力ケーブルの両方をメンテナンスするため特別な設計になっているという。
船名 | SOPHIE GERMAIN |
載貨重量トン | 1,800トン |
長さ | 100m |
幅 | 18.8m |
深さ | 7.15m |
航行速力 | 14.5ノット |
宿泊設備 | 76人 |
Colombo Dockyard と日本との意外な繋がり
Colombo Dockyard でヨーロッパ市場向けのケーブル敷設船を建造するのは初めてですが、ケーブル敷設船の建造自体は2隻目だという。1隻目の建造は2017年9月から2019年6月にかけておこなわれており、その船名は「KDDIケーブルインフィニティ」。
日本の大手通信会社 KDDI の100%出資子会社である国際ケーブル・シップ株式会社が運用する日本船籍のケーブル敷設船「KDDIケーブルインフィニティ」がスリランカの Colombo Dockyard で建造された最初のケーブル敷設船。これは知らなかった。
何となく最初に画像で「SOPHIE GERMAIN」を見た時、「KDDIケーブルインフィニティ」に似てるなというのは感じましたが、船種が同じだからという理由だけでは無さそう。ケーブル敷設・修理船「SOPHIE GERMAIN」の船体基本設計を手掛けたのは、イタリアの造船会社フィンカンティエリ傘下のVARDで、「KDDIケーブルインフィニティ」の基本設計も同様にVARDが手掛けている。
スリランカの造船所と日本との意外な繋がりがある事が分かって少し驚きました。ただ、もう少し深い繋がりがあったことから「KDDIケーブルインフィニティ」が Colombo Dockyard で建造されることになったようです。
日本の尾道造船が Colombo Dockyard を子会社化
1992年に尾道造船株式会社(本社:兵庫県神戸市)は、Colombo Dockyard の株式を取得し子会社化しています。これがスリランカでの「KDDIケーブルインフィニティ」建造につながった要因だと思われる。そして、今回建造された2隻目のケーブル敷設船「SOPHIE GERMAIN」へと続く。
Colombo Dockyard は完成・引き渡しをおこなった「SOPHIE GERMAIN」に関してホームページに掲載している記事の中で、スリランカが直面している金融危機が重要なプロジェクトの中止や国際市場での地位を失うリスクにつながっているとした上で、「SOPHIE GERMAIN」建造によって Colombo Dockyard がこれまで以上に強靭で、世界の中でも優秀な造船所として回復していることを国際市場に強くアピールすることが出来ると述べている。さらに、今回のプロジェクトで ”スリランカの技術と日本の品質をスリランカの造船所で融合させた” という付加価値は、ヨーロッパ市場で Colombo Dockyard の評判を高める、とまで言っている。こう言われると、日本人として少し嬉しい気持ちになります。
「SOPHIE GERMAIN」の完成・引き渡し式典には、在スリランカ日本大使や在スリランカ日本大使館一等書記官も臨席していたようです。
国外で初めて海上自衛隊の艦艇を整備
2023年8月2日に掲載された Colombo Dockyard の記事では、日本の海上自衛隊の艦艇を国外の造船所としては初めて整備したことを発表しています。整備作業は、2023年7月21日から25日にかけてコロンボ港で実施されたそうです。
外務省が公表している最近のスリランカ情勢をみても依然として深刻な経済危機が続いており、食料や燃料などの必需品が不足している状態にあるという。今回のような関係がスリランカの支援に少しでも繋がることが期待されます。
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