ジブラルタル沖の貨物船「OS 35」半潜水式バージへの搭載完了
SUCCESSFUL LOADING OF MV OS 35 WRECK!
(座礁船 MV OS 35 のロードに成功しました!)
https://www.koole.eu/insights/successful-loading-of-mv-os-35-wreck/
2022年8月にジブラルタル沖でLNGタンカー「Adam LNG」と衝突し、その後に浅瀬で座礁した貨物船「OS 35」。撤去作業をおこなう KOOLE Contractors は、座礁していた「OS 35」の浮上に成功し、半潜水式バージ「FJORD」への搭載作業が完了したと発表。今回のサルベージプロジェクトにおいて、最も重要で難易度の高い作業を計画通りに遂行できたことを嬉しく思うと述べる一方で、まだプロジェクトが終了した訳ではなく、最終マイルストーンへ向けて引き続き残る作業に注力するという。
難易度の高い作業を計画通りに遂行
当然なんでしょうけど、半潜水式バージ「FJORD」へ積み込まれた船体は事前に発表されていた計画図の通り。積み込みする船体の位置を誘導する黄色いガイドポールのような鋼材は、写真を見る限り半潜水式バージの甲板上に3箇所しか設置されていないようです。
搭載順序 小さな船首ブロック → 大きな船尾ブロック
搭載順序は、小さな船首ブロックを先に積んだ後、大きな船尾ブロックを搭載するという順番。大きなブロックを先に積んだ方が残りのスペースに小さいブロックが入るかどうか確認し易いし、何より大きいブロックを搭載する時、半潜水式バージに搭載物が無い状態で甲板を広く使える方が作業性が良い。
では、なぜ先に小さい船首ブロックを積んだのか?
それは、船首ブロックが気密性を高めても自船の浮力だけでは浮上させることが出来ないため、揚重する必要があるということが関係している。
船首ブロックの搭載方法
船首ブロックの浮上方法については、浮力だけで船体を浮上させることは難しく、気密性を確保して一定の浮力を持たせた上で揚重するという施工手順が事前に発表されていました。
船首ブロックの揚重方法は、2隻のクレーン付き台船で両側から挟み込んで甲板上に取り付けたチェーンプラーを使用して引き揚げているのが確認できます。ここまでは以前の掲載情報からも分かっていましたが、どのようにして半潜水式バージに搭載するのかが非常に気になっていました。
船首ブロックの搭載方法が分かり易い画像がこちら👇
2隻のクレーン付き台船で挟み込んだ状態のまま、必要な水深まで沈めた半潜水式バージ「FJORD」の上に移動して船首ブロックを搭載。この施工方法なので船首ブロックを先に積み込んでいるというのが施工順序の決定理由。
「チェーンプラー」+「半潜水式運搬船」は定石
やっぱりこの方法しか無いんでしょうね。甲板にチェーンプラーを設置するという特性上、引き揚げる船の船底を水面より上にあげることが出来ない。したがって、水面際まで引き揚げた船体を水面上に上昇させるには、半潜水式重量物運搬船が必要不可欠。
日本国内で進行中のサルベージオペレーションでもチェーンプラーを使用する場合は、引き揚げた船体を最終的に半潜水式重量物運搬船へ搭載することが推測できる。
「CRIMSON POLARIS」や「白虎」の引き揚げ方法
現在、日本国内で進行しているサルベージ作業でチェーンプラーを採用しているものに、八戸沖の「CRIMSON POLARIS」と今治沖の「白虎」があります。
「CRIMSON POLARIS」と「白虎」、どちらも2023年中に引き揚げを開始する予定。
厳密に言うと「白虎」の方は、チェーンプラー使用について明言した発表はありません。ですが、公表されている情報から推測するとチェーンプラーを使用する可能性が非常に高いと言える。
引き揚げまでの準備作業に多くの日数が費やされる
今回の「OS 35」もそうですが、船体の引き揚げ作業では準備期間に多くの日数が費やされます。そして準備が完了し、いざ引き揚げとなっても引き揚げ開始から船体の安定が確保できるまでにかかる時間を逆算して、長期的に海象条件が整う気象予報にならなければ作業を開始することは出来ません。
船体の引き揚げがニュースで報道される場面は、プロジェクトの全体工程から見ると一瞬。ですが、船体を引き揚げるということが最大かつ唯一の目的なので最も重要なステップであることは間違いない。
以前、八戸沖の「CRIMSON POLARIS」引き揚げに向かった起重機船「海翔」がワイヤリングはおこなったものの、天候が整わず何もしないまま帰港するという事がありましたが、報道などを見た人の中には ”わざわざ来たんだから、ちょっとくらい無理して作業すればいいのに” と思う方もいたでしょう。しかし、誰よりも引き揚げ作業をやりたいと思っているのは撤去作業に関係する当事者の方々。やりたい気持ちと長い準備期間を経て辿り着いた集大成の引き揚げ作業を少しでも良いコンディションで実施したいという気持ちの狭間で葛藤しながら決断していることは知っておきたい。
2023年に予定されているサルベージ作業の集大成と言える2件の引き揚げ作業には注目。
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