オランダのVan OordはSEP起重機船「Aeolus」のクレーン大規模アップグレードを発表。吊り上げ能力は1,600トンのままでブーム長さが133mに延長される。2023年初頭には完了する見込みで最大15MWの洋上風車設置が可能になる。
SEP船「Aeolus」のクレーン大規模アップグレード
2022年9月28日、オランダのVan Oordは1,600トン吊りSEP起重機船「Aeolus」の大規模アップグレードを発表。アップグレードするのはクレーン部分。吊り上げ能力は1,600トンを維持したまま、ブームを133mに延長。
このアップグレードにより12MW~15MWの洋上風車設置が可能となり、風車基礎部材の設置にも従来通り1,600トンの能力を発揮することが出来る。
Investing in the future: Major crane upgrade for offshore installation vessel Aeolus
(未来への投資:オフショア設置船Aeolusのクレーンの大規模アップグレード)
Investing in the future: Major crane upgrade for offshore installation vessel Aeolus | Van Oord
新しいブームの設計及び製造を行うのは信頼と実績の Huisman 。日本のSEP起重機船もほとんどがHuisman製。
2023年初頭には大規模アップグレードが完了する見込み。
今後、既存船のアップグレードは増える!?
洋上風車の大型化に伴い、既存の作業船では揚程不足になるという場合が今後増えてくるかもしれません。風車基礎の設置に関しては設置地盤や水深によって大きく変わるので一概には言えませんが、風車タービンの設置についてはもれなく揚程が施工可否の条件になる。日本の場合は既存船がほぼいない状態でこれから新造船を建造する状況なので対応可能だと思いますが、洋上風車先進国のヨーロッパ勢の既存船ではこの手のアップグレードが増えてくる可能性があるかもしれません。船体の構造的な強度や経年劣化を考慮すると新船を建造するというのも1つの方法ですが。
「Aeolus」のクレーンアップグレードは2度目
今回発表された「Aeolus」のクレーンアップグレード、実は以前にも1度行っており、今回で2度目。前回のアップグレードは2018年2月に行われた。
SEP船「Aeolus」には2014年の建造当時、900トン吊りのクレーンが搭載されていましたが、1度目のアップグレードにより吊り上げ能力は1,600トンへ大幅に増強。
Van Oordの戦略的な投資
Van Oordは今回の「Aeolus」アップグレード以外にも急成長する洋上風力業界に適応するため、継続的な投資を行っている。代表的なものとして世界最大のSEP起重機船「Boreas」とケーブル敷設船「Calypso」の建造。キーワードは”state-of-the-art sustainable technology”(最先端の持続可能な技術)。
- 3,000トン吊りSEP起重機船
- メタノール燃料船
- 2024年完成予定
- ケーブル運搬能力 8,000トン
- バイオ燃料、ハイブリッド船
- 2023年完成予定
Van Oordと協業を検討している日本郵船
2020年1月16日、日本郵船はVan Oordと洋上風力発電設備の設置作業に使用する自航式SEP船の共同保有および運航についての覚書を締結したことを発表している。
近い将来、日本の海域でVan Oordの作業船が洋上風車を組み立てているかもしれない。
似たような例でいうと、五洋建設とベルギーのDEMEが設立した合弁会社 ジャパンオフショアマリン株式会社がDEME所有のSEP起重機船「Sea Challenger」を1,600トン吊りに改造した上で2025年春に日本船籍化し共同保有する予定がある。
どちらも既存船をアップグレードしたSEP起重機船ですが、現状として洋上風車設置船の隻数が圧倒的に少ない日本にとっては喉から手が出るほど欲しいのかもしれない。
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