台湾北部で座礁した運搬船の油抜き取り作業、間もなく開始
台湾北部に位置する新北市野柳(Yeliou)の海岸に座礁した重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」(钰洲启航)で間もなく船内の油抜き取り作業が開始される予定。
2024年11月8日朝に油抜き取り作業をおこなう台湾船籍の多目的船「ORIENT CONSTRUCTOR」が基隆港に到着し、9日から準備作業を実施する予定。さらに、9日午後には多目的船「MMA CRYSTAL」も基隆港へ到着しており、気象海象状況が良ければ11月10日から油抜き取り作業を開始するという。
2024年10月29日に座礁した重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」には軽油37トン、重油247トン、潤滑油6,280リットルの合わせて約290トンの油が積まれており、抜き取りを開始して順調に進めば重油247トンの抜き取りが5日以内に完了する見込み。
座礁場所付近の天候は予報を見る限り数日は悪いようです。
多目的船「ORIENT CONSTRUCTOR」(東方建設者)
船名 | ORIENT CONSTRUCTOR |
総トン数 | 7,883トン |
長さ | 105.89m |
幅 | 22m |
深さ | 9m |
船籍 | 台湾 |
建造年 | 2014年4月 |
建造場所 | Kleven Verft AS |
多目的船「MMA CRYSTAL」(克里司朵)
船名 | MMA CRYSTAL |
総トン数 | 2,763トン |
長さ | 66.15m |
幅 | 17m |
深さ | 7.5m |
船籍 | 台湾 |
建造年 | 2012年5月 |
建造場所 | PT. Jaya Asiatic Shipyard |
【動画】座礁前に基隆港を出港する重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」
2024年10月14日に基隆港(Keelung Port)で港内に設置されていたコンテナクレーンと衝突し、倒壊事故を起こした重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」。その後、10月29日に台風21号接近による影響で波浪が高まる中、基隆港を出港。港内での衝突事故によって損傷した積荷のコンテナクレーンは修理が必要となり、そのままの状態では設置することが出来なかったということですが、なぜ出港判断をしたのか少し疑問を感じます。
YouTubeに投稿された動画には10月29日、基隆港を出港する様子がドローンで撮影されていました。出港直後から波浪により船体が大きくピッチングしているのが確認できます。
動画内の説明によると、重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」が基隆港を出港した時点で北の風が風力四級(5.5~7.9m/s)、瞬間的な突風は風力六~七級(10.8~17.1m/s)、波高2.6m。出港して間もなく航行不能となった重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」は港外で錨泊する旨を関係当局に連絡した際に、錨泊場所の水深が100mあることを伝えられていたにも関わらず、その場所で投錨したという。
日本の操船論等で紹介されている荒天時に錨泊する場合の錨鎖距離の目安である「L(錨鎖の伸出量)=4d(水深)+145」を基に算出すると、錨鎖距離は545m。座礁時の報道では、海岸から約0.5海里(約1km)の位置で投錨したと報じられていました。
基隆港でのコンテナクレーン倒壊事故を起こして以降、出港判断や錨泊位置など人為的なミスでは納得できない不可解なエラーが続いた結果の座礁事故。台風による天災というよりも人災と言えそう。
幸いにも重量物運搬船「YU ZHOU QI HANG」の乗組員17人は無事に避難できたようですが、今後、油流出による環境被害の恐れがあることや積荷の巨大なコンテナクレーンが倒壊した運搬船のサルベージ作業では2次災害が起きてもおかしくない危険な作業が予想される。
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