シンガポールで起きた油流出事故、除去作業を継続中
シンガポールの Pasir Panjang Terminal で6月14日に浚渫船「Vox Maxima」がタンカー「Marine Honour」へ衝突した事故で流出した油の除去作業が継続して実施されています。
2024年6月24日にシンガポール海事港湾管理局(MPA)が公表した更新情報によると、海面上および海岸に流出した大きな油の回収はほぼ完了。今後は、オイルフェンスなどで封じ込めた油について、より細かい部分の清掃を開始する段階に移行していくと述べています。
衛星画像とドローン画像から East Coast 及び Changi 沿岸では除去作業により、6月18日の時点で油膜は確認されていないという。セントーサ島のタンジョンビーチとパラワンビーチを除き、これまでに油が漂着した公共ビーチのほとんどで除去作業が完了。油を含んだ砂や残骸など約550トンが回収されているそうです。
MPAが公表した各地点の現状
タンカー「Marine Honour」の積荷移送に1~2週間
出典:Maritime and Port Authority of Singapore
タンカー「Marine Honour」では現在、船内に残っている油を別の船に移送する作業が実施されている。油の抜き取りが終わると船体修理のため造船所へ曳航する予定。船体中央部には衝突によって大きな穴が空いているため、船体の安定性を常時確認しながら移送する必要があり、1~2週間かかる見込み。
確かに不安定な状態の船体から積荷を抜き取ることでバランスが崩れると転覆・沈没といった事態も考えられるため、慎重な移送作業がおこなわれているようです。
移送作業中の油流出に備えて船体の外周にオイルフェンスを設置しているほか、積載容量35トンのCurrent Buster System が配備されている。
Van Oordの声明
タンカーに衝突した浚渫船「Vox Maxima」を所有するVan Oordは、事故発生翌日の6月15日に最初の声明を発表。その後、6月17日と20日に事故に関する更新情報を発表しています。
Van Oordは声明の中でMPAの対応計画に基づいて現状に対処するために全力で協力および支援をしていると述べた上で、MPAの迅速な対応と清掃作業に協力しているすべての対応者とボランティアの努力に感謝を表明。自社の所有船である「Vox Maxima」にはVan Oordの専門チームを派遣し、船長と乗組員を訪問して支援しているという。何か起きた時に会社が手厚いバックアップをすることは当然のことですが、現場として心強いでしょうね。
事故に関する調査に対して、浚渫船「Vox Maxima」の船長および乗組員は全面的に協力しているということですが、詳細についてはMPAによる調査が進行中であるためVan Oordの声明では明らかにされていない。
Van Oordは、自社が加入しているP&I保険(Protection & Indemnity Insurance:船主責任保険)の保険会社でも事故調査を進めていることを明らかにしています。
Van Oordの声明を読んでいる中で感心した点が1つ。Van Oordがこの事故に関する責任と義務を果たすと明言しているところ。調査結果で過失がある部分について責任を負うのは当然のことですけど、思っていることを確実に周囲の人へ伝えること、発信することは国際的な企業として必要な能力だなと感じました。
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