記者「沈没したんじゃないんですか?」
運営会社「転覆したとは言ったけど、沈没したとは言ってない」
記者「沈没してないんですね?」
運営会社「いや、これから沈める」
記者「えっ?」
なんか「ジャンボ・キングダム」に絡むやりとりがコントみたいになってきた。
船体の一部が破損し、半分沈んでいるような状態が事実だとすれば「海底に沈める予定」という選択になってしまうかも。ただ、天候を考慮した曳航の判断や曳航時のリスク対策(避難港の設定、浸水に対する水密対策)に大きな過失がありそう。
このままジャンボ・キングダムは海底に沈められてしまうのでしょうか。
これまでの経緯
発表内容がころころ変わっているので、これまでの経緯をおさらい。
- 6月14日「ジャンボ・キングダム」香港を出発
- 6月20日「ジャンボ・キングダム」転覆
出港してから4日後の6月18日、西沙諸島 (パラセル諸島)を通過していた時に悪天候により浸水し、傾き始めた。船を救うための努力したが失敗し、6月19日に転覆。
「現場の水深は1000メートル以上で、引き揚げ作業をする場合は非常に難しいものになる」という、すでに沈没してしまっている様なコメント。
- 6月24日一転して「転覆した状態にある」が「沈んでいない」と発表
- 出港時に”非公開の場所”とされていた目的地は、カンボジアのシアヌークビル
- 曳航していたボートは「JAEWON 9」。全長38.8m、幅11m、総トン数498トン、韓国船籍。
- 「ジャンボ・キングダム」は、2メートルほどの高波に襲われて船体の一部が損傷し、左側が沈んだ状態にあるものの、沈没せずに海上を漂っている
ソース記事
「引き揚げ作業をするのは不可能だ。この船がとても有名なことは知っているが、船の所有者と保険会社は海底に沈めることを計画している」と語った。
香港の水上レストラン、えい航船の運営業者「海底に沈める予定」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
曳船「JAEWON 9」のAIS登録情報を調べると、曳航船の運営業者は「S&P Marine」という韓国の海運会社。「ジャンボ・キングダム」の所有者は「香港仔飲食集団」。
船舶を意図的に沈没させることを「自沈」又は「自沈処分」、「海没処分」といい、その目的は船舶の種類により異なる。
軍艦の場合は、航行不能に陥った軍艦に対して機密保持、鹵獲(ろかく)防止などを目的として行われる。[鹵獲(ろかく)とは、戦地などで敵対勢力の装備品(兵器)や補給物資を奪うこと。]
対して民間船舶の場合、かつては大きく損傷した船舶を曳航、修理する費用が割に合わないとして意図的に沈没させることもあったが、保険の適用審査が厳格になるに従って行われなくなっていった。しかし、現在でも行われている。
記憶に新しいのは、2020年7月25日に起きた全長約300mのばら積み貨物船「わかしお」座礁事故で行われた船首部分の海没処分。

2022年7月25日夜、インド洋を航行していた「わかしお」は、モーリシャス南東部沖でサンゴ礁に乗り上げ座礁。座礁の際に船体を損傷し、2週間後の8月6日朝には燃料タンクに亀裂が入り重油1,000トン余りが流出。8月12日、残油抜き取り作業ほぼ完了。波浪により船体の亀裂が拡大し、8月15日には船体が2つに分断。そして、8月24日にモーリシャス沖15キロ、水深3,180メートルの海底へ船首部分が海没処分された。
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