荒天によりシールドマシン撤去作業を延期
2023年6月25日、福島第一原子力発電所で建設を進めているトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を海に放出する施設のうち、海底トンネルの掘進に使用したシールドマシンを撤去する予定でしたが、現地海域のうねりによる影響で6月26日以降に作業が延期されました。
海底トンネルを掘進した重量約200トンのシールドマシンを撤去するのは、兵庫県神戸市に本社を置く寄神建設㈱所有の1,600トン吊り旋回式起重機船「神翔-1600」。
船名 | 神翔-1600 |
クレーン能力 | 1,600トン |
長さ | 95.0m |
幅 | 45.0m |
深さ | 7.0m |
建造年 | 1993年 |
所有会社 | 寄神建設㈱ |
AIS情報によると、6月10日に東京湾を出港したクレーン船「神翔-1600」と曳船「第5天翔丸」の船団は6月12日夕方に福島県相馬港沖へ到着。しばらく荒天が続き、6月24日20時頃に相馬港を出港。25日明け方には福島第一原発へ到着していましたがうねりによる影響で作業することが出来ず、シールドマシン撤去は翌日以降に延期されたようです。「神翔-1600」船団は、そのまま現場海域に停泊しているので海象が良くなればすぐに作業を開始できる体制をとっています。
気になる処理水の海洋放出については、報道されている情報によると放出前の最終的な検査を6月28日から開始する方針で、実際に放出が始まるのは夏頃。とはいえ、シールドマシンを撤去しないことには放出できない。工程優先で危険な天候の中、作業を敢行することは無いと思いますが、無事に作業が終わると信じてます。
追記 翌日6月26日に無事、シールドマシン撤去作業完了
シールドマシン撤去後に放水口天端にケーソン蓋を設置
東京電力が掲載している参考資料によると、今回撤去するシールドマシンはトンネル全長約1,031mを陸側から掘進した先の放水口ケーソンから撤去するという。上部が開口になっている箱状の放水口ケーソンは、□9m×12m、高さ10mのコンクリート製。シールドマシンは、およそ水深20m付近の位置にあり、掲載されている施工図を見る限りケーソン内側とのクリアランスは狭い。
シールドマシン撤去では、クレーン船と潜水士が共同して作業する必要があり尚且つ狭いコンクリート製の箱から鉄製のシールドマシンを引き揚げるという繊細なクレーン操作が要求される難易度の高い作業。船体の動揺につながる ”うねり” の影響で作業が延期されるのも納得できる。
シールドマシンの撤去が完了すると放水口ケーソン天端にケーソン蓋を設置するそうです。トップ画像の「神翔-1600」甲板上に積まれている吊具の横にある白色の四角い物体が、設置するケーソン蓋だと思われる。
シールドマシンによる処理水放出トンネル掘進は4月26日に完了
陸上側の立坑からシールドマシンによる処理水放出トンネルの掘進が開始されたのは2022年8月4日、そして2023年4月26日に掘進作業完了。その後、シールドマシン撤去に向けてトンネル内の不要設備撤去や止水作業のあとにトンネル内へ海水を注入して準備をおこなっていた。
シールドマシンを撤去する放水口ケーソン据え付け作業もクレーン船「神翔-1600」により、2022年11月18日に実施されている。据え付け後におこなわれた放水口ケーソン外側の埋め戻しには、コンクリートプラント船「関栄」で製造した水中不分離性のモルタルとコンクリートを打設。「関栄」は山口県下関市に本社を置く関門港湾建設㈱が所有し、2018年に建造された最新のコンクリートプラント船。
出典:東京電力ホールディングス
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