バルト海のパイプライン損傷調査、中国のコンテナ船が関与の可能性
2023年10月8日に漏洩が確認されて運転を停止したパイプライン「Balticconnector」の損傷について、フィンランド政府は意図的に「外部活動」により引き起こされた可能性があると発表した。
「Balticconnector」は、フィンランド南部のインクーとエストニア北西部のパルティスキを結ぶ双方向の天然ガスパイプライン。洋上パイプライン77km、陸上部はフィンランド側21kmとエストニア側55kmのパイプラインで構成されている。
損傷部分は、パイプラインを防護するコンクリートが壊れ、片側がひどく損傷し、位置がズレていたという。このことから、船舶のアンカー(錨)がパイプラインを引きずったことが原因である可能性を示唆している。
事故発生時に付近でAIS情報により確認された中国とロシアの船
今回、損傷を受けたのはパイプラインだけではなくフィンランド、エストニア、スウェーデンを結ぶ通信ケーブル2本も切断されたという。そして、パイプラインと通信ケーブルそれぞれがダメージを受けたころ現場海域付近にいたとされているのが、香港船籍のコンテナ船「NEWNEW POLAR BEAR」とロシア船籍の原子力貨物船「Sevmorput」の2隻。
動力に原子炉を搭載した貨物船が存在していることに驚きますが、事故の当事者として可能性が高いとみられているのは、香港船籍のコンテナ船「NEWNEW POLAR BEAR」。
コンテナ船はアンカー喪失、そして荷崩れしたコンテナ
報道されている情報では、コンテナ船「NEWNEW POLAR BEAR」が船首側のチェーンアンカーを喪失していることや積荷のコンテナが一部で荷崩れを起こしていることなどから、何らかの緊急事態に陥ったことで今回のパイプラインと通信ケーブル破損が引き起こされたのではないかという見方もある。
コンテナ船「NEWNEW POLAR BEAR」がトラブルに見舞われていたことは間違いなさそうですが、今回のパイプライン破損と関係があるかどうかは不明。しかし、事故の当事者であったとしても故意ではなく不可抗力による可能性が高いのかもしれません。
コンテナ船「NEWNEW POLAR BEAR」
船名 | NEWNEW POLAR BEAR |
総トン数 | 16,324トン |
長さ | 169m |
幅 | 27.23m |
船籍 | 香港 |
建造年 | 2005年 |
出典:MarineTraffic | Jerzy Nowak
原子力貨物船「Sevmorput」
船名 | Sevmorput |
総トン数 | 38,226トン |
長さ | 260m |
幅 | 32m |
船籍 | ロシア |
建造年 | 1988年 |
中国政府は客観的調査を要求
中国政府は今回の事故に関して、客観的で公正な調査を要求したという。
船籍が香港というだけで乗船している乗組員は中国人とも限らない。中国が国として管理している船舶なら責任問題になりそうですが、現段階で調査に協力することしか出来ないというのは当然のような気がします。
もし、悪意を持った船が故意にアンカーでパイプラインを破損しようとしてもピンポイントで直撃させることは不可能。想定されるパイプラインや通信ケーブルの位置手前からアンカーを着底させた状態で航行するという底引き網のようなスタイルで犯行に及んだとすれば、AIS情報を詳細に確認すると判別できそうな気がします。
どのようにしてパイプラインと通信ケーブルが損傷したのか、そして故意なのか過失なのか。さらに、故意の場合どのような命令系統で指示がおこなわれたのか、という部分まで調査する必要がありそうです。
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