口之島沖で座礁したタンカーから化学物質の海洋放出完了、早期撤去を
2024年6月26日、鹿児島県口之島沖で座礁した韓国船籍のケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」で実施されていた積荷の化学物質シクロヘキサンを海洋放出する作業が完了。
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」が口之島沖で座礁したのは、2カ月以上前の4月16日。
事故当時、船に乗船していた乗組員14人は全員救助されましたが、船は無人の状態に。座礁から1週間後の4月23日には、船体付近の空気中から積荷のシクロヘキサンと推定される成分を確認。その後、船内の油を抜き取る作業がおこなわれ、5月10日に完了したものの、5月16日には波浪で船体が分断しているのが確認されました。船体が分断して傾いたことで安全に積荷の抜き取り作業ができなくなったことから、6月5日よりシクロヘキサンの海洋放出を開始。
報道されている情報によると、6月22日に海洋放出の作業は完了。6月26日、専門家によるモニタリングで危険性がないことが証明されたという。現在のところ、シクロヘキサンによる被害情報はない。そして、第十管区海上保安本部は所有者に船体を早く撤去するよう求めていると報じられていました。
シクロヘキサン検知無し、座礁したままの船体には注意
第十管区海上保安本部は、緊急情報でケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」の船体周辺海域において人体や環境に影響を及ぼす濃度のシクロヘキサンは検知されていないとした上で、船体は座礁したままになっていることから付近航行船舶への注意喚起をおこなっている。
分断した船体の撤去方法は?
どうやって撤去するのだろう?
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」船内の油抜き取り作業は5月10日の時点で完了しているという情報ですが、その後の波浪により船体は前後に分断した状態。
撤去方法を考えた時、最初に把握したいのは船体の状態。4月の座礁時点で損傷した船体からは浸水が確認されていましたが、船体が分断した位置以外の損傷具合が気になるところ。補修して水密処理を施した上で、浮力が確保できるようであれば船首部分を曳航出来る可能性もある。しかし、座礁位置の水深は浅いため積荷を放出しているとはいえ、自船浮力だけでの離礁は厳しいと考えると何かしらの揚重設備が必要かもしれない。
船体は水深が浅い場所に留まっているので水面上から目視により確認できるという点で有利な反面、作業中に波浪の影響を受けやすく危険にさらされるというリスクも高い。いろいろ考えても手堅く撤去できる方法は無いように思える。しいて言えば、作業可能な海象状況の日に小さく分割しながら撤去を進めて海が荒れそうになったら作業を中断して避難するというのを繰り返す方法でしょうか。
時季的にこれから台風シーズンになるので、撤去が終わるまでに高い確率で台風が襲来すると考えれば、現在の状況は ”絶望的”。数か月後には、分断した船体がさらに破損している可能性が高そう。
事故発生からのタイムライン
- 2024年
4月16日鹿児島県口之島から北西約8kmで座礁事故発生インドネシア人10人、韓国人3人、ミャンマー人1人の14人は全員救助
- 4月22日62歳の韓国人船長を業務上過失往来危険の疑いで鹿児島地方検察庁に書類送検
鹿児島区検察庁は4月24日付けで韓国人船長を略式起訴し、鹿児島簡易裁判所は罰金30万円の略式命令を出した
- 4月23日流出した積荷のシクロヘキサンが付近の空気中から確認される
座礁している船体付近の空気中から積荷のシクロヘキサンと推定される成分を確認、第十管区海上保安本部が4月24日に緊急情報として発表
- 4月25日船内の油を抜き取る作業を開始
5月10日に完了
- 5月16日波浪により船体の折損を確認
船舶所有者が手配したサルベージ会社から船体が折れたと第十管区海上保安本部へ報告
- 6月5日積荷のシクロヘキサン海洋放出開始
- 6月26日海洋放出完了後のモニタリングで危険性が無いことを確認
海洋放出は6月22日に完了
ケミカルタンカー「KEOYOUNG PIONEER」
船名 | KEOYOUNG PIONEER |
総トン数 | 2,577トン |
載貨重量トン | 3,970トン |
長さ | 88.6m |
幅 | 14.6m |
深さ | 7.2m |
船籍 | 韓国 |
建造年 | 2006年1月 |
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