14,000トン吊りクレーン船「Saipem 7000」

14,000トン吊りクレーン船「Saipem 7000」

 イタリアのSAIPEMが所有する14,000トン吊りクレーン船「Saipem 7000」。建造されたのは1987年、今から35年前のイタリアにあるフィンカンティエリ造船所で建造された。建造当時の船名は「Micoperi 7000」。

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14,000トン吊りクレーン船「Saipem 7000」

 半潜水型の船体に搭載されているクレーンはそれぞれ7,000トン吊りで、2台のクレーンを使用するタンデムリフトにより最大14,000トンの吊り上げ能力がある。

イタリアのミラノ郊外にあるSAIPEM本社
出典:Wikipedia | Di Marcuscalabresus – Opera propria, CC BY-SA 4.0, Collegamento

 「Saipem 7000」を所有するSAIPEMは、イタリアのミラノ郊外に本社を置き、世界60ヶ国以上にオフィスを構える世界的な多国籍企業。

 1957年に設立、従業員数は約3万2千人、2020年の取引高は74億3,200万ユーロ、日本円に換算すると約9,140億円(1ユーロ=123円として換算)。

巨大な船体は分割して建造された

「Micoperi 7000」
出典:CARNEMOLLA, Stefania Elena, «Monfalcone, storia di un cantiere navale», Diacronie. Studi di Storia Contemporanea, N. 12, 4|2012

 1987年にイタリアのフィンカンティエリ造船所で建造された「Micoperi 7000」。

 全長約200m、幅87mという巨大な船体を建造できるドックが当時は無かったことが原因だと思われますが、少し変わった方法で建造がおこなわれたようです。

 その建造方法は、左右に分割した状態の船体を1つのドックでそれぞれ建造し、ドックから曳き出した後にドッキングをおこなうというもの。その後、クレーンを搭載。画像を見るとクレーンタブの高さとドック内の門型クレーンの高さはほとんど差がないので、物理的にクレーンの設置をドック内でおこなうのは不可能だったようです。

巨大な船体は9.5ノットで航行できる自航式

 「Saipem 7000」の船体は長さ197.95m、幅87.0mと巨大ですが、自船に搭載されたプロペラで航行することができる自航式のクレーン船

搭載されているプロペラ
  • 4,500kw アジマススラスター(船尾側)×4基
  • 3,000kw 格納式アジマススラスター(船首側)×4基
  • 5,500kw 格納式アジマススラスター(船首側)×2基
  • 2,500kw バウトンネルスラスター×2基
船名Vessel name Saipem 7000
吊上げ能力Lifting capacity 7,000トン×2基
タンデム 14,000トン
長さlength 197.95m
width87.0m
深さdepth 43.5m
建造年Year of construction 1987年
所有会社Owner companySaipem
「Saipem 7000」の概要

 喫水10.5mの状態で航行速力9.5ノット。

 DPS(自動船位保持装置)は、イギリスのロイド船級協会による認証のDP(AAA)、IMO(国際海事機関)でいうClass3と同等。

 アンカーによる係留設備も搭載されており、1,350kwのシングルドラムウインチが14基あり、それぞれ直径3と3/4インチ(約95mm)、長さ3,350mの係留ラインと40トンアンカーがセットされている。

 

各船級協会のDPS階級

パイプライン敷設が可能

 「Saipem 7000」は、半潜水式の吊り上げ能力世界TOP3の中で唯一、パイプラインを敷設する設備を搭載できるという特徴がある。1999年から2000年にかけて行われた発電機やスラスターのアップグレードに合わせて、J-layシステムのパイプライン敷設設備を搭載する改造を行った。

J-layシステムを搭載した「Saipem 7000」
出典:Huisman

 「Saipem 7000」のクレーンとクレーンの間に設置されているJ-Layタワーは、高さ135m。タワーを含む関連機材の総重量は4,500トン。

 搭載されているJ-layシステムの概要として、敷設可能なパイプライン直径は4インチ(約10㎝)から32インチ(約81㎝)まで。敷設深度は水深3,000mまで対応可能。船には6,000トンのパイプを貯蔵可能で、1日当たり最大で3kmのパイプラインを敷設する能力がある。

パイプライン敷設 S-lay方式とJ-lay方式

 パイプラインの敷設方式は大きく分けて2種類あり、S-lay方式J-lay方式。その名称は、パイプラインを敷設する時の形状がアルファベットのSとJに似ているところに由来。

S-lay方式とJ-lay方式
出典:Wikipedia | Par Lusilier – Travail personnel, CC BY-SA 3.0, Lien

 S-lay方式とは、船上で敷設するパイプが水平に近い状態で置かれるため、復数箇所での溶接作業が可能。水深の浅い海域で、小径のパイプ敷設に使用されることが多い。

 J-lay方式とは、船上で敷設するパイプが鉛直に近い状態で置かれるため、パイプの溶接は1箇所に限定され、溶接速度が敷設速度を大きく支配する。大水深の海域で、大径のパイプ敷設に採用される。

2022年4月に起きたクレーン検査中のメインフック落下事故

荷重試験中に起きたメインフック落下による急激な荷重開放によって大きく傾いた「Saipem 7000」

 「Saipem 7000」は、2022年4月14日にメインフックが落下するという大きな事故を起こしている。事故はクレーンの検査中に発生。

 SAIPEMに掲載されているプレスリリース(2022年4月15日発表)によると、ノルウェーのアモイフィヨルド沖合で5年に一度行われる7,000トン吊りメインフックの負荷試験中にワイヤーが破損し、フックブロックとテストウェイト用として吊り上げていた2隻の台船が水中に落下。急激な荷重開放によって船体が大きく傾きましたが、すぐに安定した状態に船体を復旧。事故による負傷者はいなかったと発表した。

 その後のプレスリリース(2022年6月13日発表)では、事故を起こしたクレーンは修理出来ていないものの、もう1基のクレーンはクレーン検査に関連する認証を取得し、「Saipem 7000」が作業に復帰したことを発表。事故により破損した方のクレーンについては、2023年初頭までに修理作業を完了する予定。

吊り上げ記録

「Bahr Essalam field」の中央プラットフォーム「Sabratha」のトップサイド設置(重量=12,100トン)
出典:YouTube | SAIPEM

 「Saipem 7000」の吊り上げ記録は、2004年10月に記録された12,100トン。地中海のリビア沖110kmに位置する「Bahr Essalam field」の中央プラットフォーム「Sabratha」のトップサイド設置。

「Valhall」油田トップサイドの設置(重量=11,600トン)

 12,100トンの吊り上げ記録は、アンカーリングによる係留を行った状態でしたが、DPS(Dynamic Positioning System)、自動船位保持装置の制御下で作業した吊り上げ記録は、11,600トン。2010年、ノルウェー沖合の北海にある「Valhall」油田トップサイドの設置。

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