14,200トン吊りクレーン船「Thialf」

14,200トン吊りクレーン船「Thialf」

 1985年に建造された「Thialf」。14,200トン吊りの吊り上げ能力は2019年に「Sleipnir」が誕生するまでの長い間、世界最大のクレーン船として頂点に君臨していた。建造時の船名は「McDERMOTT DERRICK BARGE NO.102」。

 世界に誇るクレーン船が建造されたのは日本の岡山県にある三井造船。誇るべき日本の先人たちの技術力。

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14,200トン吊「Thialf」

 「Thialf」は、世界最大のクレーン船「Sleipnir」と同じオランダのHeerema Marine Contractorsが所有する世界で2番目に大きなクレーン船。7,100トン吊りのクレーンを2基搭載し、タンデムリフトで14,200トンの重量を吊り上げることが可能。

巨大な船体は半潜水式

 驚異的な吊り上げ能力を発揮する土台となる船体は、半潜水式(Semi Submersible)と呼ばれ、深さが大きいのが特徴。👆上の画像は喫水が最小時と最大時のもので、その差は約20m。最も喫水が小さい状態の11.9mの時、水面から甲板上までの高さ(乾舷)は 49.5m – 11.9m = 37.6m になる。

半潜水式クレーン船(SSCV)

半潜水式クレーン船(SSCV:Semi Submersible Crane Vessel)は、ヨーロッパの北海という過酷な環境でも操作性を高め、さらに優れた吊り上げ能力を提供することを目的として開発された。

船名Vessel name Thialf
吊上げ能力Lifting capacity 7,100トン吊×2基
タンデム 14,200トン吊
長さlength 201.6m
width88.4m
深さDepth49.5m
喫水Draft Range 11.9m~31.6m
建造年Year of construction 1985年
所有会社Owner companyHeerema Marine Contractors
「Thialf」の概要

 オフショア建設業界で最初に建造された半潜水クレーン船は、1978年に完成した「Hermod」。建造当時は2,700トン吊り、1,800トン吊りのクレーンを搭載。1984年にアップグレードされ、4,500トン吊りと3,600トン吊りのクレーンを搭載。残念ながら2018年に廃船となり現存しません。ただ、このクレーン船を建造したのも日本の三井造船

 「Hermod」の建造実績によって「Thialf」建造に至ったことが想像できます。

ー 三井造船が建造した「Hermod」の記事 ー

建造時の船名は「McDERMOTT DERRICK BARGE NO.102」

 1985年(昭和60年)、三井造船で建造された当時の船名は「McDERMOTT DERRICK BARGE NO.102」。搭載されていたクレーンも現在の7,100トン吊りより少し小さい6,000トン吊りのクレーンが2基搭載されていました。

「McDERMOTT DERRICK BARGE NO.102」
出典:Heerema

 1997年に McDermott から Heerema Marine Contractors へ引き継がれた「Thialf」は、2000年に7,100トン吊りクレーン2基を搭載し、吊り上げ能力14,200トンで世界最大のクレーン船となりました。

 「Thialf」には、5,500kw(7,478PS)の格納式アジマススラスターが6基備えられていて、自航することが可能。Class IIIのDPS(自動船位保持装置)を搭載し、喫水12.5mで1隻のタグボートを使用した航行速度は7ノット。アンカーによる係留設備も搭載されており、22.5トンのFlipper Delta anchor12基を使用して係留する事もできる。仕込まれているアンカーワイヤーは、Φ80mm、長さ2,400m。

数々のプロジェクトに従事

 建造されてから今日まで長い歴史の中で数多くのプロジェクトに携わってきた「Thialf」。その中からいくつかのプロジェクトを紹介。

1995年に設置されたエラスムス橋の主塔
出典:Heerema
2005年 直径2.74m、長さ190m、重量818トンの基礎杭打設
出典:YouTube | ursusII
2000年、Shearwaterガス田 トップサイド設置(W=11,833t)
出典:Heerema
2022年、Kinsale Headガス田 トップサイド撤去
出典:Heerema

Aフレームを格納式に改造、そしてバルト海へ

クレーンのAフレームを格納してグレートベルト・リンクを通過する「Thialf」
出典:Heerema

 「Thialf」は2021年から2022年にかけてオランダのロッテルダムに係留中、Aフレームを格納式にする改造を行いました。改造の目的は、北海からバルト海へ向かうときに通過する橋、Great Belt Linkの桁下制限65mをクリアするため。

喫水を最大にしてAフレームを格納した「Thialf」
出典:Heerema

 Aフレームを格納しないで、通常の航行をおこなう喫水だと水面上に出ている高さは105m。

 Great Belt Link通過時は、Aフレームを格納した上でバラスト調整により、最大喫水の31.6mまで船体を沈めた状態で65mの桁下を通過。

 「Thialf」は、2022年10月頃にGreat Belt Link通過し、初めてバルト海に入った。Heerema社が所有するクレーン船がバルト海に入るのは初めて。

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