台風によるクレーン船沈没
2022年7月2日に中国で起きたクレーン船の沈没事故。破損して半分沈みかかった船体から救助される乗組員の様子。周囲の海は荒れ狂い、ヘリでの救助も危うい状況。一体なぜ、このような事故が起きてしまったのでしょうか?
2023年5月末に公表された事故調査報告書によると、沈没したクレーン船は2,000トン吊りクレーンを搭載した非自航式のクレーン船「福景001」。このクレーン船は改造船で元になっている船は1983年にタンカーとして建造、そして、2006年にタンカーから自航式の重量物運搬船「Zhenhua20」へ変換する1度目の改造を実施。さらに、2021年9月には2度目の改造が行われ2,000トン吊りクレーン船「福景001」が完成している。2度目の改造では長さ247mあった船体の船首部分を80m分撤去して、クレーンなどを搭載する37.5mの構造セクションを船首側に追加している。
改造後にクレーン船「福景001」が作業していたのは、広東省 陽江市沖合の粤电阳江青洲第1、第2洋上風力発電プロジェクト。この現場で2022年5月から風車基礎杭の設置を行なっていましたが、事故当時は台風3号の接近に備えて、24海里離れた錨泊地に避難していました。
錨泊地では船首側の12.9tアンカーが付いたチェーンアンカーを275m、同じく船首側の10.5tアンカーが付いた4番ワイヤーアンカーを1,000m投錨していた。
台風の接近により風速25m/s、最大波高9mを超えてきた7月2日午前0時5分、事態が急変する。
4番ワイヤーの張力が425トンを超えた後、波と風の力で船体が押され、ウインチからワイヤーが抜け落ち、「福景001」は南西に漂流し始める。停泊場所から9.5海里の位置にあった粵電陽江沙扒洋上風力に向かって流され、漂流中に洋上風車と衝突。衝突した3基目の風力タービン基礎で船体が分断し、この位置で船首部分は沈没。
さらに漂流する船尾部分には30人全員が乗っていた。そして、傾いた船尾部分を大きな波が襲い27人が海に投げ出される中、ヘリコプターにより乗組員3人を救助。海に投げ出された27人のうち1人は事故から2日後に救助されましたが、残る26人は25人が死亡、1人行方不明になっている。
事故調査報告書によると事故当時、救命ボートは2隻積んでいましたが、法定救命いかだ4隻をメンテナンスのため積んでいなかったことや必要に応じて乗組員を避難させず、乗船者人数を虚偽報告していたことが多くの死傷者を出す重大事故につながったとしている。
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