迷走する台風6号、進行中のサルベージオペレーションへの影響は?
2023年7月28日にフィリピン東の海上で発生した台風6号カーヌン。発生当初は、発達しながら沖縄を通過してそのまま中国大陸へ向かう予報となっていましたが、予報が変わり中国大陸に上陸する手前で跳ね返されるように方向転換。現状の予報では、日本列島へ向かってくるという進路が予想されています。
石垣沖で座礁したままの貨物船「XIN HAI ZHOU 2」への影響
沖縄付近は長期間に渡って台風が滞在する予報となっており、様々な被害につながることが予想されますが、7月中旬に撤去作業が開始された石垣島沖の座礁貨物船「XIN HAI ZHOU 2」の状況も気になります。
石垣島沖で座礁している貨物船「XIN HAI ZHOU 2」についての詳しい被害状況の確認は、台風通過後になると思われます。7月中旬に開始した撤去作業では積荷として積まれている1万トン以上のウッドチップの除去がおこなわれていましたが、台風前までにどこまで作業が進捗しているのかは不明。船体が半分出ている状態で座礁しており、台風の波浪による影響を大きく受けていることが予想される。
船内の油は抜き取りが完了しているとのことですが、さらなる船体破損により積荷の流出拡大や場合によっては船体が横転している可能性も十分考えられる。座礁している場所は「石西礁湖」と呼ばれる日本最大のサンゴ礁の海域であり、サンゴ礁や周辺海域への影響は必至で生態系への悪影響が懸念される。
台風6号の影響範囲で進行中のサルベージオペレーション
場所 | 船名 | 事故発生日 | 撤去完了予定 |
愛媛県 来島海峡 | RO-RO貨物船「白虎」 | 2021年5月27日 | 2023年11月 |
青森県 八戸港沖 | 貨物船「CRIMSON POLARIS」 | 2021年8月11日 | 2023年12月末 |
沖縄県 石垣島沖 | 貨物船「XIN HAI ZHOU 2」 | 2023年1月24日 | 2024年2月 |
中国 浙江省寧波市沖 | コンテナ船「新遠隆6」 | 2023年7月17日 | ? |
台湾 高雄港沖 | コンテナ船「ANGEL」 | 2023年7月21日 | ? |
当サイトで取り上げている船舶の座礁・沈没事故の中で、台風6号による影響がありそうなのは5件。なかでも、先程の沖縄県石垣島沖で座礁している貨物船「XIN HAI ZHOU 2」と愛媛県の来島海峡で起きた衝突事故により沈没したRO-RO貨物船「白虎」は、大きく影響が出る可能性がある。
台風接近が撤去工程に大きく影響
「白虎」の引き揚げ作業に向けた準備は2023年3月に開始され、吊り上げ用チェーンの取り付けがおこなわれています。現場海域には甲板上にチェーンプラーを艤装した台船2隻も確認されており、当初は7月中旬に「白虎」を海面近くまで引き揚げて小部湾まで曳航する作業が行われる予定でしたが、まだ引き揚げまで作業は進んでいない。今治海上保安部発表の海上安全情報に掲載されている情報の作業期間も6月12日~7月19日になっており、現在は8月末までの予備期間に入っている。
引き揚げに向けた準備作業が思うように進んでいない事が想像できますが、さらに台風の予想進路によって現場海域から作業船を退避させるという状況になる可能性がある。水深60mの海底に沈没している「白虎」に取り付けたチェーンをどのように一旦仮置きするのか分かりませんが、相当な労力と時間が台風避難と台風通過後の作業再開に費やされる。そして、台風の進路によっては波浪による影響で沈没している「白虎」の状況が大きく変化する可能性もある。台風接近が撤去工程に及ぼす影響は、かなり大きい。
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