大型起重機船による反転作業、変わり果てた姿の「白虎」に衝撃
2021年5月に来島海峡付近で衝突事故により沈没した貨物船「白虎」。2023年8月に水深60mの海底から海面付近まで引き揚げられたあとに小部湾へ移動し、引き続きスクラップに向けた準備がおこなわれていましたが、大型起重機船2隻によりひっくり返った状態の「白虎」を反転させる作業がおこなわれました。
海底から引き揚げられた時は船底しか見えていなかった「白虎」ですが、反転作業によっておよそ2年5か月ぶりに海上へ姿を現した船橋や上部の甲板部分。鮮やかだった外板の塗装はくすみ、船体上部は着底した影響なのか平坦に押しつぶされており、変わり果てた姿の「白虎」に衝撃を受けました。
報道されている情報によると、11月上旬頃に広島県江田島市へ運んでスクラップにする予定だという。反転させて正常な態勢に戻ったとはいえ、不安定な「白虎」を曳航するリスクや今後のスクラップにする工程を考えると、半潜水式運搬船に搭載するという方法がより確実だと思われますが、どのようにして小部湾から江田島まで「白虎」を運ぶのかは不明。
国内最大級の起重機船「武蔵」、「第50吉田号」による相吊り
「白虎」を元の態勢に反転させる吊り作業をおこなったのは、国内最大級の起重機船「武蔵」(深田サルベージ建設 所有)と「第50吉田号」(吉田組 所有)。ともに最大吊り上げ能力3,700トンでジブを2基搭載した連装ジブ起伏式。
「白虎」の重さを表わす排水トン数は不明ですが、韓国で沈没した「セウォル号」引き揚げ時の重量は、吊具や吊り上げ用の架台などを含めて1万トン以上。船種が異なりますが、「セウォル号」よりも船体の大きい「白虎」を浮力無しで気中に揚重することは国内の起重機船だけでは難しい。
船名 | 白虎 | セウォル号 |
総トン数 | 11,454トン | 6,825トン |
長さ | 169.98m | 146.61m |
幅 | 26.0m | 22.2m |
沈没場所の水深 | 60m | 44m |
「白虎」反転作業では繊細な荷重管理が必要
今回の「白虎」反転作業で起重機船がどれくらいの吊り上げ荷重をかけたのかは分かりませんが、2隻の起重機船は最大3,700トン吊りでメインフックが4つ。各フックの最大吊り上げ荷重は、925トン。
起重機船1隻のトータル吊り上げ荷重が3,700トン以下であっても、偏荷重により1フックでも925トンを超えてしまうと許容オーバーになるため、それ以上巻き上げることは出来ない。それどころか大事故につながる恐れすらある。
途方もなく重たい「白虎」の反転作業では、吊り上げ荷重を分散させるということが重要なポイントの1つになり、巨大な起重機船でありながら繊細な荷重管理をおこなっていたことが想像できる。
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