ドイツの「Gode Wind 1」で風力タービンに貨物船が衝突
Schiff rammt Offshore-Windrad: Kollision offiziell bestätigt
(船舶が洋上風力タービンに衝突:衝突が正式に確認された)
https://www.ndr.de/nachrichten/niedersachsen/oldenburg_ostfriesland/Schiff-rammt-Offshore-Windrad-Kollision-offiziell-bestaetigt,schiff1390.html
2023年4月24日20時頃(現地時間)、ドイツの北海で稼働中の洋上風力発電所「Gode Wind 1」に設置されている風力タービンに貨物船「PETRA L」が衝突する事故が発生。船は4月22日にポーランドのシュチェチン(Szczecin)を出港し、北海バルト海運河(Nord‐Ostsee‐Kanal)を抜けてベルギーのアントワープ(Antwerp)に1,500トンの穀物を運ぶ途中だったようです。
衝突した貨物船「PETRA L」の船首右舷側は衝突により船体が大きく破損し、船内への浸水も確認されたという。船には6人の乗組員が乗船していましたが、事故による負傷者は確認されておらず、船体に穴が空き浸水した状態の貨物船「PETRA L」も海象が穏やかだったおかげで自力航行によりドイツのエムデンに入港することが出来たようです。
貨物船の船長が事故を隠蔽?
ドイツの公共放送局である北ドイツ放送局(NDR,Norddeutscher Rundfunk)のニュース記事によると、貨物船「PETRA L」の船長は風力タービンとの衝突後、エムデン港に入港してからも関係機関に事故の報告をしていなかったため通報義務違反の疑いがかけられているようです。
衝突した風力タービンの損傷具合を見て事故を隠蔽できると思ったのかは分かりませんが、自船の船体があれだけ大きく破損していたらすぐにばれると思うのが普通。ただ、他のニュース記事では事故原因について当初、海上の浮遊物に接触したと思って事故調査を進めていたという記事もあるので、意外とすぐにはばれないものなのかも。船長が偽証していた可能性はありますが。
船は自動操舵で航行していた
事故当時、船は自動操舵で航行していたようですが、コースからは何マイルも外れていたという。
自動操舵装置といっても種類があるようで、船の船首方位だけを制御するものや船の航路を制御するものがあるそうです。船首方位だけを制御する自動操舵装置では、船首方位が保持されていても潮流や風の影響で想定していた航路を外れる事がある。
船名 | Petra L |
総トン数 | 1,162トン |
長さ | 73.66m |
幅 | 11.5m |
建造年 | 1984年 |
貨物船「PETRA L」が建造されたのは1984年なので、およそ40年前。搭載されている各種機器は更新されていると思いますが、使用していた海図データは最新のものだったのでしょうか。
衝突した風力タービンが設置されている「Gode Wind 1 & 2」が運転を開始したのは2017年6月。Siemensの出力6MW風力タービン「SWT-6.0-154」が「Gode Wind 1」に55基、「Gode Wind 2」に42基設置され、総発電容量は582MW。
日本でも各地で洋上風力発電所の建設が進められると思いますが、同様の事故がいつかは必ず起きる。どうにかして未然に防ぐ良い方法はないものか。
類似する過去の事故
過去に洋上風力発電所の風力タービンに船舶が衝突する事故は2件起きている。他にもあるかもしれませんが、北ドイツ放送局のニュース記事でも過去に2件発生と報じている。世界で最も洋上風車を設置している中国で同様の事故が起きていないのは不思議。何か対策を行っているのか、それとも。。。
高速輸送船が20ノットで風力タービンに衝突
2020年4月23日、ドイツの「Borkum Rifgrund wind farm」でメンテナンス作業員を輸送する全長26.3mの高速輸送船「NJORD FORSETI」が20ノット(時速37km)というスピードで風力タービンに激突。接触した船首右舷部分が大きく損傷。事故当時3人が乗船しており、重傷者はでたものの命に別状はない。
事故原因は船長の周囲確認不足によるもの。船長がVHFの設定調整に気を取られ、全く前方を見ていない状態で衝突事故を起こす瞬間が船内カメラによって記録されている。
荒天により漂流した貨物船が風車基礎と洋上変電所のジャケットに衝突
2022年1月31日、オランダ沖合の北海で建設している洋上風力発電所「Hollandse Kust Zuid」の風力タービンを設置する前の風車基礎とトップサイド設置前の変電所ジャケットに全長190mの貨物船「JULIETTA D」が漂流して衝突。
建設している途中の洋上風力発電所で起きた衝突事故。衝突した貨物船のサイズが大きかったことも影響したのか、損傷した風力タービン基礎のモノパイルや2次鋼を撤去する事態に。2023年前半に撤去作業が開始される予定。
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