運輸安全委員会が知床観光船沈没事故の経過報告を発表

運輸安全委員会が知床観光船沈没事故の中間報告を発表事件・事故

 2022年4月23日に発生した知床観光船沈没事故の経過報告が12月15日、運輸安全委員会から発表されました。更に詳細な調査・分析の必要があり、最終的な報告書ではありませんが現段階で必要と考えられる再発防止策について、国土交通大臣に対し意見が述べられている。

 この記事では観光船「KAZUⅠ」が沈没に至った直接の原因となる船内への海水流入がどのようにして起きたのか、ということを焦点に経過報告の内容を紹介しています。

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運輸安全委員会が知床観光船沈没事故の経過報告を発表

 2022年12月15日、国の運輸安全委員会は75ページに及ぶ知床観光船沈没事故の経過報告を発表。最終的な報告書ではありませんが、事故の発生に至る要因として4点を挙げています。

事故の発生に至る4つの要因
  • 船体構造の問題
  • 発航の可否判断及び運航継続の判断に問題があったこと
  • 運航会社が安全管理規程を遵守していなかったこと
  • 監査・検査の実効性に問題があったこと

― 運輸安全委員会発表の経過報告 ―

経過報告 http://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/rep-acci/2022/keika20221215-0_2022tk0003.pdf

説明資料 http://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/p-pdf/keika20221215-0-p.pdf

船体構造の問題

 様々な要因が重なって起きた事故ですが、船が沈没するに至った直接の原因となる船内への海水流入がどのようにして起きたのか。

 事故当時の報道などでは、事故以前に座礁した時に損傷した船首側の船底部分が完全に修繕されておらず浸水につながった可能性があるのではないかと言われていました。ですが、経過報告の中でバルバスバウ下部にFRP表面の剝離は見られましたが、調査の結果、船体内部までは繋がっていなかったことが分かったようです。

 そして、船の浸水につながった要因として挙げられているのが、船首甲板部ハッチからの浸水

「KAZUⅠ」の船首部分に設置されているハッチ

 「KAZUⅠ」の船首部分に設置されているハッチ。画像では板のようなもので蓋をされた状態ですが、もともと取り付けられていたハッチ蓋は破損して所在不明となっているようです。このハッチ蓋を閉じた状態で固定するためのクリップが4箇所あるそうですが、どうやら正常に機能する状態ではなかったという。事故発生の2日前に実施された救命訓練では、前方2箇所のクリップは回しても確実に固定できない状態、後方右舷側の1箇所はクリップ止め部の下にクリップが掛からず、上滑りしていたと考えられる状態。事故当日、ハッチ蓋はクリップを回しても確実には固定できなかった可能性がある。

海水の流入

 船首甲板部ハッチから「KAZUⅠ」沈没につながる浸水が始まったと想定されますが、それを助長する要因として挙げられているのが、船首甲板部外縁のブルワーク(防波壁)の高さが約10㎝で比較的低いこと、さらに、そのブルワークよりもハッチコーミング上端が低いこと。これは、もともと「KAZUⅠ」が平水区域を航行区域とする船舶であったことに起因しているそうです。

 事故当時の海は波高が高く、ブルワークを越えて船首甲板部に直接波が打ち込む状態。ハッチ蓋が開いた状態で波が打ち込むと、相当量の海水がハッチ内の船首区画に流入したと考えられる。

客室前面にある中央のガラス窓が破損

 引き揚げられた「KAZUⅠ」船体の画像を見ると分かりますが、船首側の客室前面にある中央のガラス窓は割れており、これまた板のようなもので塞がれている状態。ガラス窓には強化ガラスが使用されていて、一部の損傷により窓全体のガラスが粉々に砕けたものと推定される。この窓ガラスを破損させた原因として考えられているのが、先程の所在不明となっているハッチ蓋

ハッチのすぐ後ろにある割れた中央ガラス窓

 確かに位置関係を確認すると、ハッチのすぐ後ろに船首側の客室前面にある中央のガラス窓がある事が分かる。

 ハッチ蓋の破損したヒンジ部分の破断面から大きな荷重を受けて破壊されたことが分かったそうです。

 さらにハッチ蓋の開口角度は最大120°で、それ以上開かないようにストッパーが取り付けられていましたが、そのストッパーには衝突跡が確認され、開いた状態のハッチ蓋に波が直接当たり、ヒンジに過大な荷重がかかったことが分かったそうです。

 天候が急変し、波高が高くなる海域で船首側のハッチから浸水が始まり、船首側が少しずつ沈むにつれて波が開いた状態のハッチ蓋に直接当たったことで破損。壊れたハッチ蓋は客室中央のガラス窓を破壊し、いっきに海水の流入量が増加して沈没に至った、と考えられるようです。

その他の要因

避難港と沈没位置の位置関係

 発航の可否判断及び運航継続の判断に問題があったことについては、事故当日は天候が悪くなる予報で中止基準に達する恐れがあり、複数人からの助言があったにも関わらず、出航を中止しなかったことや復路において荒天に遭遇したにも関わらず、避難港であるウトロ漁港(知床岬地区)に避難して救助を待つ措置をとらなかった点が挙げられている。

 運航会社が安全管理規程を遵守していなかったことや監査・検査の実効性に問題があったことについては事故当時に報道されていた内容とあまり差が無いような感じでした。

国土交通大臣への意見

 全国で多数の小型旅客船が運航されている現状に鑑み、有限会社知床遊覧船と同様の小型旅客船を運航する事業者の事故防止のため、運輸安全委員会から国土交通大臣に対し、述べられた意見は2点と検討事項1点。

国土交通大臣への意見
  • 航行区域を平水区域から限定沿海区域に変更した小型旅客船の船首甲板開口部の点検
  • 避難港の活用として、航行する海域における避難港の存在、活用等について再確認すること

 以上2点の意見に加えて 今後、安全性を更に高める観点から、限定沿海区域を航行区域とする小型旅客船の隔壁の水密化に関し、検討すること という検討事項が述べられた。

 

 

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