二酸化炭素を運ぶ実証試験船「えくすくぅる」完成
2023年11月28日、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業である「CCUS研究開発・実証関連事業」の一環で開発された液化CO2輸送実証試験船「えくすくぅる」(EXCOOL)が完成し、山口県下関市にある三菱重工業下関造船所江浦工場で命名・引き渡し式がおこなわれました。
完成した船体の船主はNEDOおよび山友汽船株式会社で、日本ガスライン株式会社が傭船して運航をおこなうという。
CO2輸送実証試験船「えくすくぅる」
船名 | えくすくぅる |
総トン数 | 996トン |
載貨重量トン | 1,262トン |
長さ | 71.99m |
幅 | 12.5m |
深さ | 5.5m |
CCUSとは? そして、普及に向けた課題
「えくすくぅる」は試験運航後、NEDOの委託事業である「CCUS研究開発・実証関連事業」で液化CO2の輸送実証試験での運用がおこなわれる予定になっています。この事業名称にも入っている”CCUS”。建設業界の方であれば「建設キャリアアップシステム」を意味するCCUSを真っ先に思い浮かべる人が多いと思いますが、ここで使われている”CCUS”はそれではない。
CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、二酸化炭素の分離、回収、利用、貯蔵を意味しており、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた動きの中で達成に不可欠な技術として注目されている。
工場や火力発電所などから排出されるCO2を分離・回収することで、大気中に放出されるCO2を大幅に削減することができます。しかし、CO2の排出地と貯留地・活用地が離れていることが多く、CO2を安全かつ低コストで大量に輸送する技術の確立がCCUSの普及に向けた課題となっているそうです。
実証事業の概要
「えくすくぅる」は、NEDOが実施する「CCUS 研究開発・ 実証関連事業/苫小牧における CCUS大規模実証試験/CO2 輸送に関する実証試験/ CO2 船舶輸送に関する技術開発および実証試験」で運用される予定。今回の事業で開発した「えくすくぅる」に搭載されているカーゴタンクに、さまざまな温度で液化したCO2を積載するとともに、圧力などを含めタンク内の状態を変更し、船舶輸送をおこない検証する。これにより、陸上基地の荷役設備や貯蔵用タンクの機能性も併せて評価し、船舶一貫輸送に最適なCO2の輸送条件を特定することで、大量輸送技術の開発につなげるという。
「えくすくぅる」は、主に当該事業で建設した京都府舞鶴市と北海道苫小牧市の陸上基地間を繰り返し輸送する計画になっているそうです。
実証試験における液化CO2の低温・低圧状態(-50℃、0.6MPaなど)での船舶輸送試験は世界初の取り組みとなり、低コストでCO2を長距離大量輸送する成果が大きく期待できるという。
船名「えくすくぅる」(EXCOOL)の由来は液化CO2の大量輸送
船名「えくすくぅる」(EXCOOL)の由来は、CO2 を”COO”と読み替え、船舶の大型化に適した、低い温度の液化 CO2 輸送の安全なオペレーション技術を確立するという、強い思いが込めているそうです。色んな意味が掛け合わされていて、意味を知るとよく考えられた船名だと感心します。
「えくすくぅる」12月1日に神戸到着
11月28日の命名・引き渡し式が終わった後、山口県下関市を出港した「えくすくぅる」は愛媛県伊予市に寄港し、12月1日朝に兵庫県神戸市に到着。お披露目式でもおこなわれるのでしょうか。
今後の活躍が期待されます。
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