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兼子建設の600トン吊り新造クレーン船「第8若栄丸」

兼子建設の600トン吊り新造クレーン船「第8若栄丸」 起重機船、クレーン船
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兼子建設の600トン吊り新造クレーン船「第8若栄丸」

2023年7月に完成後のお披露目がおこなわれた兼子建設 株式会社(本社:徳島県)の600トン吊りクレーン船「第8若栄丸」。全旋回のクレーン船で吊り上げ能力600トンという大きさは国内だと珍しく、とても気になっていました。「第8若栄丸」の船体情報について公式な発表がしばらく無かったため、これまで詳細情報は分からない状態でしたが、このたび兼子建設のウェブサイトに「第8若栄丸」の仕様が掲載されたので公表されている情報を基に気になるクレーン船「第8若栄丸」について調べた情報を紹介します。

新造クレーン船「第8若栄丸」は、600トンという大きなクレーン能力に加えて環境に配慮した最新設備が搭載され、他にもガントリーの折り畳みやスパッド上部が取り外し出来る仕様になっていたりと、実用性を考慮した機能も備えられているようです。今後の活躍が期待されます。

リンク先 兼子建設 株式会社 ウェブサイト 保有船紹介

600トン吊りクレーン船「第8若栄丸」の概要

船名第8若栄丸
クレーン能力主巻:600トン
第1補巻:80トン
ジブ長さ常用 56m(最大 64m)
長さ80.0m
30.0m
深さ5.5m
スパッド長さ30m(□1.5m×1.5m)
 有効水深20m、上部5m取り外し式 
貨物スペース32m×30m(960m2
貨物積載能力4,500トン
サイドスラスター4基(推力5トン、495PS)
600トン吊りクレーン船「第8若栄丸」の概要
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船体部は中西造船、クレーン部はSKKで建造

「第8若栄丸」の船体部は中西造船、クレーン部はSKKでそれぞれ建造されたようです。

船体部は中国で建造

中国にある揚州中西造船の位置図
中国の江蘇省 揚州市にある揚州中西造船
出典:Nakanishizousen

船体部の建造をおこなった株式会社中西造船(本社:大阪市)では、日本国内の技術者が設計し、船舶の主要な機器は日本製の舶用機器を使用した上で、建造を中国の揚州中西造船でおこなう独自の建造スキームを採用。これにより建造コストを削減し、日本の造船所に発注するよりも低価格で建造できるシステムを確立しているという。中国から日本までの輸送費・回航費を考慮してもそれ以上に安く建造できるんでしょうね。

品質面が気になるところですが、中西造船のサイトに掲載されている説明では、日本のエンジニアと中国の工場側の連携を密にすることで品質を確保し、難易度の高い船舶にも効率的に対応する事が出来るそうです。

郵船クルーズがドイツのマイヤー・ヴェルフト造船所で建造している「飛鳥Ⅲ」のように、中国の揚州中西造船へ日本から技術者を派遣して建造工程の確認をおこなっていたかもしれません。

クレーン部はSKKで建造

クレーン船の最重要設備であるクレーンは、株式会社SKK(本社:高知市)で建造。

「第8若栄丸」に搭載されているクレーンの型式は「SKK-9000DT-K」。SKKの製品情報によると、重量物の吊り上げ作業をメインとしてグラブ浚渫や砕岩、杭打ち作業にも対応可能な多目的クレーン。DT-Kシリーズには、最大吊り上げ能力200トン~700トンまで幅広いラインナップを取り揃えている。

DT-Kシリーズ(多目的クレーン)の特長と主なオプション

特長

  • 独立防振キャビン:運転席に伝わる機械本体の振動を最小限に抑制
  • ドラムに監視カメラ搭載:各過巻・過荷重に反応するアラーム機能なども装備
  • 開口度計でバケット開口度をリアルタイムに確認:バケット開口度を0〜100%で表示
  • ブレーキ付トルクコンバータ:独自開発の逆転ブレーキにより、軽負荷での動力による巻下げが可能。電子制御との組合せによりパワフルでスムーズな動作と、繊細な速度コントロールを実現。負荷に応じて巻上速度が自動で変化することにより、運転時のショックを和らげる

主なオプション

  • GPSグラブ施工管理システム
  • 水平掘制御装置・深度計/開口度計
  • フックポケット
  • 杭打ち機能

SKKのCM動画に映るクレーン船「第8若栄丸」

SKKが2023年8月23日にアップロードしたYouTubeのCM動画「イニシャル編」には、香川県にあるSKKの多度津工場前の岸壁に係留している「第8若栄丸」が映っています。中国で船体部の建造後に、多度津工場でクレーンを搭載したと思われる。

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折り畳み式のガントリーと上部5m取り外し式のスパッド

クレーン船「第8若栄丸」の側面図
出典:KANEKO CONSTRUCTION

船体の大きな特徴の中に、折り畳み式のガントリー上部5m取り外し式のスパッドがあります。ガントリーの最高部は甲板上から26.6m、スパッドは24.5m。船体仕様に記載されている空船時の喫水は2.5mで船体深さが5.5mなので乾舷は3.0m。したがって、空船時の水面上高さはそれぞれガントリーが29.6m、スパッドが27.5m。

ガントリーを折りたたむと高さが8.1m低くなり、水面上高さは21.5m。スパッドのほうは、5m低くなるので水面上高さは22.5m。通常の状態で水面上の高さ29.6mですが、もろもろ格納すると22.5mまで低減することが可能。7m以上も低くすることが出来るようです。

名称水面上高さ
(通常時)
水面上高さ
(低減時)
低減高さ
ガントリー29.6m
(26.6m+3.0m)
21.5m
(29.6m-8.1m)
8.1m
スパッド27.5m
(24.5m+3.0m)
22.5m
(27.5m-5.0m)
5.0m
「第8若栄丸」水面上高さの低減量

新町川橋を通過するため?

「第8若栄丸」のAIS情報と新町川橋の位置図
新町川橋
出典:Wikipedia | Sorrysorry – 投稿者自身による著作物, CC0, リンクによる

エアドラフトと呼ばれる水面上高さを抑えるガントリーとスパッドの仕様を搭載した理由については記載されていいないので推測になりますが、完成時のお披露目がおこなわれた徳島県の新町川沿いにある南末広町の岸壁へのルート上には、2020年に国内最大の起重機船「海翔」や「武蔵」によって架設した新町川橋があり、その桁下高さは28m

通常の状態で空船だと「第8若栄丸」のエアドラフトはガントリー部が29.6mなので1.6m高い状態。潮位によっては通航できる時もあるかもしれませんが、万が一のリスクが高すぎるのでそんなことはしないでしょう。ガントリーを折り畳むとエアドラフトは21.5mに抑えられるので6.5mのクリアランスが生まれる。スパッドのほうは、通航する航路が南海フェリー(満船喫水4.4m)も通るルートなので2~3m下げてエアドラフト24m以下程度にすれば取り外さなくても通過できそう。

実際のところは、何か別のプロジェクトで高さ制限があり、そのためエアドラフトを抑える仕様にしている可能性も十分あり得ます。しかし、自船の基地である徳島で高さ制限により通航できない場所があると、荒天時などの避難で使用できる岸壁が制限されるという少し困った事態も起きかねない。

ガントリーの折り畳みやスパッドの上部取り外しは、使用することが滅多にないと思いますが、施工場所の範囲が広がり、これまで通り制限なく地元の岸壁を使用できるというだけでメリットはあるのではないでしょうか。

今後の活躍に期待。

大迫力の大型起重機船「海翔」「武蔵」による新町川橋架設

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